871.高校七不思議12
剣道場へとやってきた。
この学校には体育館の隣に剣道場が設置されていて、ここで行われるのは剣道オンリーなのだとか。
柔道ないのか? と妖怪三人娘に聞いてみたけど柔道ってなぁに、おいしいの? とか言われてしまった。
剣道場へと足を踏み入れる。
木目張りの床がぎしぎしと揺れる。
年季が入ってる感じがするな、ここなんか踏み込みのせいか二か所だけへこんでやがる。
最後の七不思議はこの剣道場に居るんだけど、えーっとなんだっけ、首切り侍?
嫌な感じの七不思議だよな。
背後に気を付けてないと首を狙って……
「っ!?」
何かの声が聞こえ、俺は慌ててしゃがむ。
皆にしゃがめっと叫んだが、躱せたか!?
ふと上を見上げれば、何かが舞っていた。
やべぇ、誰か首斬られた!?
「うおぉ!? びっくりしたぁ、こっち狙ってくるかテメェ!?」
『げふっ!?』
振り返れば、頭を失ったマイノグーラさんが背後に蹴りを入れ、首切り侍の腹に反撃を加えたところだった。
マジかよ、いきなり背後から奇襲してくるか!?
『ぬぅ。なぜ、生きている!?』
「ざぁんねん。マイノグーラさんは首失った程度じゃぁ死なねぇーんだわ」
首を生やしてマイノグーラさんがケケケと笑う。
ヤバかった。マイノグーラさんだったから良かったけど他のメンバーだったら死に戻りは確定だった。
皆もすぐさま戦闘態勢を取り、蛙娘さんと狸娘さんがめーさんの背後に隠れる。
「ちょ、ちょっと!? なんで私の後ろに隠れる訳!?」
「なんとなく!」
「一番近くに居たから!」
妖怪なのに一番弱そうだなぁこの二人。
見ろよ、シマさんもギーァも戦う気満々だぞ?
君らだけだよ震えてるの。
「ギーァ連戦なの。なのに任せるの!」
「ギーァ!」
なんかなのさんとギーァが互いに自分やりますと主張してるようだ。
なんで競ってるの?
今そういう場合じゃないだろ。
「ラズナ、キョウヤ!」
「任せろヒツギ!」
「慣れたもんよねこういうのっ」
お、おお? なのさんとギーァが牽制し合ってるうちにスコップ構えた三人が突撃。
斬撃の一撃をスコップでパリィするヒツギ。
キョウヤとラズナが脇をすり抜け両側面から足元を切り裂く。
スコップって切り裂けるんだ!?
驚く侍に駆け抜けたキョウヤとラズナが背後から切り上げる。
反応しようとした侍だが、間を置かず接近するヒツギが真正面からスコップで叩き潰す。
とっさに受けようとした侍だが、細長いだけの刀を盾にしてもスコップの面による一撃を受けきることはできなかった。
そのまま押し潰されるように額に刀がめり込む。同時に背中に✕字の傷が走った。
「っしゃ、タコ殴りだ!」
「殺人鬼ども同様埋めちまえ!」
「アハハ、楽しくなってきたァ!」
うーん、傍から見るとヤバい三人組だなぁ。
刀も折れて侍さんがなんか哀れな感じになって来た。
顔面ボッコボコだよ。
『他のプレイヤーの戦い、ヒロキより連携駆使した戦い、とか思ってたけど……外道よりよね?』
「ウチまで一緒にしないでくださる?」
タツキ君チームは違うと申すか。なんかもう外道だろスコップで寄ってたかってタコ殴りとか。
「勝ったー!」
光と化して消えていく首切り侍。
顔面腫れあがって侍感ゼロだったけど、まぁ成仏しろよ?
「やればできるな俺らでも」
「七巡り達成ー、あれ、全員残ってって旧校舎以来じゃない?」
―― ワールドイベント、高等学校七不思議がヒロキ、タツキと愉快な仲間たちチーム、ヒツギと愉快な仲間たちチーム、なのにより七巡り達成されました! ――
なんでお前らチーム名そのままなの?
少しは変えておけよ。リーダー名プラス愉快な仲間たち扱いじゃん。
「そういえば弄ってなかったな」
「こっちも変えとくか。旧校舎殺人鬼処理班とか?」
「ウチはタツキと愉快な仲間たちでよくない?」
「名前変えるの面倒なだけだろ。んー、でもいい名前思いつかんな」
「おじさんず・らぶ」
「そりゃお前だけだ」
「理想の彼女NTR隊?」
「ヒロキさぁん!?」
『せっかくだしヒロキも付ける?』
「え? 俺? じゃあ……た……いや、うーん」
里派広め隊、いや、さすがに露骨過ぎるか。
ハナコさん親衛隊だと親衛隊の奴らと被るしな、俺とハナコさんの愛の巣、とか?
「ダメよぅハナコ、ヒロちゃん絶対俺とハナコの愛の巣チームとかするし」
「ありそう。ヒロキならハナコお姉様と自分を絡めたチーム名にするわよきっと」
『それは、恥ずかしいかな?』
まぁ俺はチーム組むことはないし、基本テイムキャラと共同で戦うだけだからな。チーム名なんていらんのですよ。
さ、用事も済んだし帰ろうぜ。
ドリームランドが俺らを待ってる。
 




