870.高校七不思議11
「首吊る女学生、行くかぁ……」
やる気をなくした俺の言葉に、皆も同意する。
やる気無くしたのは俺だけかよ。
うぅ。せっかく出会えた同志たちだったのに。
「まぁなんや、元気出せや坊」
うぅ、俺なんて人面犬に慰められるのがお似合いなんだ……って、きっしょい顔で肩に手を乗せんじゃねぇ!? てめぇどうやって……アミノサンに抱えられてんのかよ!?
砂付くだろ。脚乗せんな。ったく。
『ヒロキ、戻った?』
「ハナコさん!? お、俺は一体……」
一応記憶はあるけど今洗脳から解放された感で皆に合流しておこう。
『ヒロキ、えっとね……』
「いや、プレイヤーなんですから記憶喪失とか洗脳されてました感出されても困りますよヒロキさん」
「うるせぇアパポテトめ、インテリぶるのがいつも正解だと思うなよ!」
「うん、まぁ外道だし、知ってたの」
皆ご納得かよ。クソ。俺の好感度、なんか低くないか?
こんなに皆の為にと頑張ってる俺に酷くね?
「それよりほら、ヒロキさん、あれ、すでに揺れてますよ」
「まぁ俺らがここ来た時からすでに揺れてたからな。何時間待ってるんだろうな?」
『そう思うならさっさと来なさいよ!』
ん、なんか空耳かな? 女性の声が聞こえた気がするなぁ。
って、なんか首吊ってるのにすっげぇ勢いで睨みながら叫んでる。
『この状況だと声出しにくいのよ! あんまりしゃべらせないでくれます!』
そりゃ首締まってるんだから喋りづらいだろうよ。
「その縄取っちゃえば?」
『私のアイデンティティ否定すんな!』
自殺したというアイデンティティとかいらんだろ。
というか、苦にして自殺にしては自己主張が強くないかこの霊。
『えーっと、それじゃあなんでまた幽霊に?』
『あいつらのせいよ! 私のクラスメイト共、皆最初は和気藹々と私にだって話しかけて来たわ。皆仲良くしましょうとか言って! 蓋を開けてみれば私だけのけ者よ! すぐ切れるの怖いとか、上から目線止めた方がいいとか、言ってること意味不明とか、なんで私ばっかり言われなきゃいけないのよ!!』
あっれぇ、なんでだろ、イジメっぽいはずなのに全然イジメ感が感じられないぞ。
むしろこいつの性格と口調から最初は皆も仲良くしようと努力してたけど、すぐ切れ散らかすこいつに恐怖を覚えたり、いつも上から目線で話すせいで徐々に距離取るクラスメイトがありありと想像できる。
さらに言ってることが意味不明な時があるとなれば、そりゃもう関わると面倒な頭ヤバい奴とクラスメイトになってしまった皆さんの方が同情に値する。なんて思い至るのは俺だけだろうか?
『最終的には誰も話しかけなくなってさ! ムカつくからあいつらのせいで死にますってクビ吊ってやったのよ!』
しかもその教室で。
そりゃもうクラスメイト達の恐怖感は想像に難くないだろう。
善意で仲良くしようとしたのにヤバい奴だったせいで逆恨みされて死に様見せつけられたんだから、下手したらトラウマもんだぞソレ。
『私をのけ者にする奴らみーんな死ねばいいのよ!』
うん、これはダメな霊だ。しかも悪霊だ。
いるだけで迷惑かける霊なのでささっと潰しておこう。
俺は無言で視線だけを送る。
ブキミちゃんが親指を立てた。
どうやら任せろってことらしい。
何をするのか、と思っていると、無防備に前に出る。
『何よ?』
『この人形、首がないの。貴女の首、この人形に似合うと思わない?』
『何言ってんの!? やめ……』
ぎゃあぁ!? スプラッタァー!?
急にやらないでブキミちゃん!?
首捩じ切ったよこの娘!?
『んー。やっぱいらないや。目が可愛くない』
しかも普通にその場に捨てないで!?
「え、えげつないけど、これで解決、か?」
「ヒロキさん、さすがにやり過ぎでは?」
「いや、これは俺のせいじゃ……あ、うん、ブキミちゃんは悪くないよ。それは分かってるから」
そんなお前の首も捩じ切ろうか? みたいな目で見ないでください。
幽霊だから首切られても問題ないだろう、と思ってたんだが、すぐに光と化して消えてったな。
ブキミちゃんの能力で首斬られると霊体でも消されるのかもしれない。
「よし、とりあえず悪霊は対峙した。次、行ってみよう!」
「よ、容赦ない。仲間になって、良かった。うん良かった」
狸娘さんは別に怖がらなくてもいいんだぜ?
俺らは別に君を攻撃したりはしないからな。
「それにしても、どうせ消えるなら目玉くらい残していけばいいのに」
めーさんはもうちょっと目玉に対して遠慮を覚えて貰いたい。
というか、おやつ感覚でそんなもの舐めないで貰いたいな、ちょっと狂気が見えるぞ。
「ヒロキさん、確か次が最後ですよね」
「ああ。そうだけど、どうした?」
「いえ。今までの七不思議で人面犬がまだスキル覚えてないんですよね」
それって、最後の首斬り侍が人面犬のスキルアップに対応してるってことか。




