865.高校七不思議6
件の鏡の前へとやってきた。
4:44と7:16に鏡に映ると鏡の前に上履きを残して失踪する、というのがここの鏡の七不思議である。
どうよテケテケさん?
「ビンゴね。私の管轄っぽいわ。後はあぱなんとか君だけど……」
「スレ見てんだけど、なんか向かった先に鏡がないって喚いてるぞ?」
「鏡がない?」
ソレはおかしな話だな。
俺たちと同じように向かったんだよな?
「ああ、左側に向かって階段に来て、今踊り場にいるんだと」
うーん。もしかしてだけど。
「鏡の中だとしたら逆方向じゃね?」
「あ、その可能性もあるっすね。アパポテトの居る世界が鏡面世界かどうかはわからないですが」
早速スレに打ち込み教えているタツキ。
仲間思いだねぇ。
「そんじゃ、行ってくるわね」
「おぅ。俺らはここで少し待ってるぜ」
と、言った次の瞬間だった。
なぜか周囲から気配が消える。
「って、ちょっとヒロキ、なんであんたがここにいるの?」
と、声がかかり視線を向けると、鏡の近くにいるテケテケさんが驚いた顔をしていた。
うん? ん?
周囲を見回し、誰もいないことを確認。
階段、ある。踊り場、ある。鏡、ある。
ただし、先ほどまで俺が居た場所と比べると、左右が反転して見える。
……あれ? これってもしかして、もしかしなくとも俺鏡の世界に連れてこられた?
「ヒロキ、早くこっちに来て! 敵はどこにいるかわからないわ。私の傍から離れないで!」
「ああうん、わかったよテケテケさん」
そう告げて、俺は迷うことなくテケテケさんの眉間をレーザー銃で撃ち抜いた。
「……なん、で?」
驚いた顔でテケテケさんが倒れ伏す。
「いやだってさ。テケテケさんは俺のこと、ヒロキとは呼ばないんだ」
まずヒロちゃんと呼ぶし、自分のことはお姉さん。私ではないのだ。
ついでに服やら何やらの左右が逆だし。
こんなの偽物ですよと主張しているようなもんだろ。
「なぜ俺を選んだのか知らんが……人選をミスったな踊り場の鏡の怪」
「く、くくく、探偵気取りかしら。残念ながら、今ので倒せたと思っているならお門違いよ?」
正体現したか。
起き上がった額に穴あきテケテケさんが見知らぬ女学生へと変化する。
血まみれの垢抜けないおさげの女生徒だ。恨みがましい目でこちらを睨みつけてくる。
だが、分かってないのはお前だぜ?
「そちらこそ、他の奴を選んでいればまだワンチャンあったってのにな。俺を選ぶのは大失態だ。だからいうぜ? これは最終確認だ。テイム、オア、デッド?」
「これから取り殺す相手にテイムされる訳がないでしょう!」
「そうか。残念だ」
言っておくが、ここから先の投降は無しだ。
ハナコさんが待ってるんでね、速攻でカタを付ける。
「お前のミスは三つある……」
「はぁ? ミス?」
「まず最初に俺を引き込んだこと、分かりやすいテケテケさんに化けたこと。そして……最後の希望を切り捨てたこと。勝利報酬はこれまでこちらの世界に引き込んだ者全員の、先ほど俺が皆といた踊り場への帰還、並びにあんたの命、およびアパポテトの生還だ。敗北は勝利報酬と同等の財貨。対象踊り場の鏡の怪、闇のゲーム、起動!」
そう、彼女はミスをした。
俺以外の誰かなら、あるいは取り殺すことも可能だった。
俺以外の誰かなら、俺は鏡の中まで攻撃は出来ないのでこのスキルは使えやしなかった。
俺以外の誰かなら、きっとなすすべなどなかっただろう。
だからお前は、選んじゃいけないたった一つのババを引き抜いたんだ。
俺の目の前にゲーム卓が現れる。
優雅に椅子に座り、カード五枚を手に、そいつに向ける。
「闇のゲームに、ようこそ。お前が選んだ唯一無二のデッドエンドだ」
ソレは強制されるデスゲーム。
今いる味方の中で、唯一俺だけが使えてしまう、一対一の対戦スキルである。
つまり、俺だけを引き込んだ時点でこのスキルの餌食になるのが確定してるってことだ、お前がどれほど人特化型のスキルを持っていようと、攻撃スキルを持っていようと、その全てを無効化し、ゲームでの勝敗だけを強要する、このゲームの餌食が確定してんだよ!!
逃げようとする彼女だったが、すでに強制スキルが発動しているようで、逃げることも俺を攻撃することもできない。
何度もいろいろ試していたようだが、やがて観念したように卓に着く。
ルールをしっかりと説明してやる。ここはちゃんとフェアにしないとな。
ああ。ルール説明に不正はいらない。むしろそれをしたら俺の方が不正で負けちまう。
何より勝確なのだからわざわざ不正を行う意味がない。
さぁ、始めよう。
攻撃したいだろ? 俺が先手行かせて貰うぜ。
伏せカードを二枚置いてキャラ、エルエさんを設置。
伏せカード発動、乱雑な雑木林ステージ、そして、マダかーさんの狂宴。
場が雑木林ステージとなり、マダかーさんが背の高い草に交じって出現する。
ターンエンド。どうした? 君の番だぜ?




