860.高校七不思議1
第一の七不思議があると言われている教室へと俺たちは向かっていた。
あ、ここの教室誰も座らない机と椅子があるとこだ。
今は放置で次行こう。
「わざわざ順番通りにいかなくてもいいような?」
「これから始めたらすぐ隣が首を吊る女学生らしいから二ついっぺんに終わらせられるのにね」
『おねえちゃん。あいつ首吊ってる』
『ブキミ、あれはまだ放置だって』
『えー、面倒』
そう言いながらマイノグーラさんの首引っこ抜かないの。
まぁマイノグーラさんが気にしてないならいいけどさ。
「お、なんか授業してる声聞こえる」
「いいか、そっとだぞ。音立てるなよ」
「タツキ、それフラグになるからやめろよ言うの」
「もう何やってもフラグじゃん、僕どうしたらいいんだよ」
「特攻すればいいの。お仲間が待ってるの」
「それあいつらの仲間入り確定じゃん!?」
『はいはい、そこまで。ここからはサイレントでお願いします』
ハナコさんに窘められて俺たちは押し黙る。
ここから先は抜き足差し足忍び足だ。
ゆっくりゆったり移動して教室のすぐ近くまでやってくる。
授業を受けているのは人外さんだな。
お、美少女発見。あの娘可愛いな。何娘だ?
蛙っ娘も発見。ほほぅ。妖怪だけじゃなく宇宙人っぽいのも授業受けてるな。
あと、真ん中で授業受けてるのってプレイヤーじゃね?
た、狸娘だとぉ!? ほぼ狸のお嬢さんもふもふがすぎる! 稲荷さんが狐だし彼女をテイムできればまさに狐とタヌキが揃うんじゃないか?
っし、とりあえずこれで七不思議体験にはなっただろ。
とりあえず戻ろうぜ。
俺たちはアイコンタクトで踵を返す。
うまい具合に撤退できた、はずだった。
ブゥッ
人面犬がおならした。
さすがに音がデカすぎてサイレントどうこう言われてもフォロー出来ない一撃だった。
授業を受けていた人外が一斉にこちらを振り向く。
「な、なんでもないのでお構いなくー、私はただのネズミです。チュー」
『なんだ、ネズミかぁー……ってなるかァ! 皆捕まえろ!!』
ぎゃあぁ見つかったぁ!? 逃げろー!!
教室内に居た生物たちが一斉に走り出す。
俺たちを捕まえようと駆けだす彼らに対し、俺たちは階段上下を二手に分かれることで逃走。
こうなったら仕方ない。皆捕まるんじゃねーぞ!
アカズさんこっち!
階段に向かおうとしていたアカズさんの手を捕まえ無理矢理方向転換。
近くの教室に連れ込む。
「な、何よ急に!? こ、こんな時に二人きりになるって、あ、あんたまさか!?」
「はいはい、そういう乙女的なトキメキは時と場合を考えようぜ。頼んだ」
「はぁ。ノリツッコミ位しなさいよ。はい、この教室は支配できたわよ」
頼んだ。だけで俺の意図を理解してくれたアカズさん。
「ぐはは、ここに逃げ込むのを見たぁぞぉぉぉ!」
「あはは、逃げなきゃいけないのにすぐそこの教室に飛び込むなんてダメな人間さんですねぇ」
お、ゴシックロリータファッションでツインテールの可愛い子、こっち来た!
片方の目を眼帯っていうのか、ガーゼパットで隠している。
なぜか教室にロリロリしたピンクの傘を持参で来ている彼女は、飴玉かな? 口の中でころころ転がしながら入ってきて、教室内に隠れもせずに待っていた俺とアカズさんに気付き目を見開く。
「あら、驚いた。彼ら抗うつもりよ?」
一つ目のお坊さん姿のおっさんが彼女と共にやって来た二メートル大の妖怪だ。
一つ目坊主か何かだろう。
「すぐに捕まえてこの前の小僧みたいに加えてやるわい!」
「うふふ。さぁ、さっさと……ん?」
ぐにんっと足場が変化したことに気付いたらしい。
ゴスロリ少女は足元が赤く血のようなものに変わっているのに焦り慌ててドアへと走る。
しかしドアは独りでにガンッと勢いよく締まり、個室が完成する。
「ふふふ。追い詰めたのはどっちかなぁ? 私の世界へようこそ、愚かな妖怪さん」
「な、なんじゃぁ!?」
「こ、これは……閉じ込められた!?」
「ひぃっ!? な、なんだこれは!? ば、馬鹿な、この儂が身動き取れなく……」
「ちょ、ちょっと!? どこ行ったの? 待って待って、私一人にしないでよ!?」
とりあえずおっさんは邪魔だったのでアカズさんに分離していただきました。
さぁて、交渉開始しましょうか。
散紅さんに似てはいるんだけど、彼女は何者だろうか?
「さて、交渉しようかお嬢さん」
「な。こ、この状況で交渉ですって!?」
「ああ。こっちはあのおっさんの命と君の命を預かっている。俺にテイムされないかい? テイム、オア、デッド。さぁ。好きな方を選びたまえ」
絶望的な赤い部屋の中、少女はなすすべなくその場にぺたんと尻から座り込む。
「テイム、されますぅ」
「あ、ヒロキ泣かしたー」
棒読みでディスらないでくれますアカズさん。




