848.ヒロキ帰りてその後に
SIDE:???
ヒロキというプレイヤーが仲間と共に去っていく。
あのシマエナガ、飼う気なのか。普通の生物と違ってレベル130の危険生物なのだが。
まぁいい。ドール討伐とやらの成功を祈られたから我が神通力の出来る範囲で強化はしてやった。
奴の強化は運関連くらいしか強化できるものはなかったが、これで神聖武具などを手に入れやすくなるだろう。後は知らん。
「いよっと。何々つくっち、自分のちっこい神社前で何黄昏てんの?」
隣に嫌な気配が生まれ、奴が来る。思わず舌打ちした。
「ヌエよ、わざわざこのような場所に何しに来た? 貴様には仕事があるだろう」
「それはこっちのセリフさぁ。つくっち関連イベントあんまり発動してないじゃない」
「それはプレイヤー共がイベントを発動させてないだけだ。私のせいではない」
「その発動条件が難解なんじゃない?」
「何を言う他の奴らよりよほどわかりやすいだろう。これで見つけられんのなら後は知らん。それより貴様はどうなんだ?」
「垢バンしすぎて人間の運営達にしばらく垢バン禁止って言われた。やることないから適当な知り合いの元に来てはちょっかい掛けてる」
思わず舌打ちが出る。
相変わらず面倒くさい奴だ。
「しかし、運営といえば私の社が発見されるのはもっと後になるはずではなかったのか? 確か二年後くらいに企画予定の月読を探せ、とかいうイベントで初出と聞いていたが?」
「さっき会ったヒロキって奴いるじゃない。アイツがフラグクラッシュするせいでいろいろイベントが潰れたり早まったりしてるそうよ。今回のドール討伐も本来はエンドコンテンツだったのを第四回イベントに変えたらしいし」
「早まり過ぎだろう。サ終まで早めるつもりか?」
「さすがにそれはないと思うけれどねぇ。今がちょうど大人気沸騰中といったところなのだから」
本来、ここの社が見つかるのはイベント内でのことになるはずだった。
今発見されても大したことはない。
せいぜい変若水が汲めるくらいか?
ここには御朱印もないからな。
「結構大盤振る舞いしてたよなぁつくっち」
「運をあげてやったくらいだ、他の奴らも少し既存のステータスをプラスしたまで」
「いや、運とラッキースケベ上げるだけでも十分すぎる凶器だからね」
そうか? いや、そうか。運の強さはそのままアイテムドロップ率や会心率、レアもの発見率など本人に得のある物事が向こうからやってきやすくなるスキルだ。
当然、高い程えげつないレアドロップを引き当てやすくなったりする。
「ラッキースケベ?」
「あれ? 気付いてなかった? ヒロキのスキルにある幸運系特殊スキル」
「運系統スキルの強化をおこなっただけだから、細かくは見ていなかった」
「本来ほとんど上がることのない運系スキルなんだけどねぇ。これは拙いわ」
ドール討伐にはそれくらいの運上昇がないと難しそうだからな。
むしろああいう奴には率先してドール討伐を行っていただきたい。
それができるだけの下地は与えたつもりだからな。
「しかし、やはり暇だな。もう少し出番はないものか」
「地味な仕事ばかり引き受けるからでしょう。とはいえ、私の仕事はあげないよ、つくっち絶対やらかすし。私より容赦なくプレイヤー切り捨てそうだもの」
「何を根拠に、私はルールに乗っ取り適切に判断するのみだ」
「だからそこの采配がゼロかイチしかないのがね。もうちょっと中間とかを探ってくれれば共同でって考えたりもしたけどよー」
「空いてる仕事もないのなら少し遠出してみるか。先ほど稲荷の分体が居たからな。本体の居る山にでも遊びに行くとしよう」
「遊び!? つくっちが!? 真面目人間というか神様なつくっちが? 適正に仕事してるか監視しに行くんじゃなくて?」
「私とて遊びくらいは経験がある。堅物堅物と皆は言うが柔軟さもしっかりとあるのだぞ」
「ははは、今宵の月読様はご冗談が美味ぅございますー」
ふん。なんとでも言うがいい。
確か稲荷は虫相撲なるものにハマっていたはずだな。そこいらにいる虫を適当に捕獲して持っていくか。
多少の暇潰しにはなろう。
今から向かえばおそらくあのヒロキたちとも鉢合わせできるだろう、今回は姿を見せなかったが、もう一度会うことがあるならば顔見せくらいはしてやるかな。
「って、何してんの?」
「稲荷のところに行こうと思ってな。対戦用の虫をいくつか捕まえておこうかと」
「その眩しい虫?」
「酸フラッシュカミキリだ。隣居るのは瞬殺夜光虫だな」
「殺意高いな虫の癖に」
「それから、いたな、このゲーミングカラークワガタの三匹でもいれば十分か」
「何その色、気色悪っ!?」
この近辺には普通に生息している虫なのだが?
 




