84.御炬峠の怪
鍛冶屋でロッドとマイクを頼んだ俺達は、出来るまで2日程かかると言われたので、そのまま鍛冶屋を出て峠に向うことにした。
幽霊が出るらしい峠の名前は御炬峠。そのまま御炬第一トンネルという既に道としての機能を終えた廃トンネルに繋がっている。
ここに、凶悪な悪霊が居るらしい。
正直ハナコさんがいても勝てるかどうかって怪しいんだけど、大丈夫だろうか?
鍛冶屋フィールドから出て峠フィールドへと向う。ここがまた西の山でも東の山でも無いのがなんとも言えないんだけど、どうやら田舎町との境にある峠らしい。
電車を使えばすぐに行けるんだけど、お金を掛けたくない場合はこの峠をクリアできれば徒歩で向えるようになり、向こうの街に辿りつければ自動移動の選択肢に田舎町が出てくるようになるそうだ。
そこまで行けば田舎の学校にも普通に向えるようになるんだって。
電車移動の場合は毎回田舎にお金払って向ってからじゃないと自動移動の選択肢には出てこない。
同じ要領で他の学校に向いたい時はエリア移動を行う必要があり、各所に存在するボスやギミックをクリアしてからじゃないと他の学校などに通うことは出来ないそうだ。
そういえば、未知なるモノさん普通にこの近辺歩いてたけど、彼って中学生だよね? 中学校フィールドからこっちに来れてるってことか。どうやって道を切り開いたのか後で聞いてみよう。
ともかく、今はこの峠だな。
道自体は車道なのでかなり広い。
ちゃんと白線も引かれているので歩行者も歩ける場所なんだけど、今は道自体が使われてないらしいので車は通ってない。
噂では車でこの近辺を走ると急カーブ辺りで事故って崖から飛び出していくらしい。
その時に道に佇む女性を見たとか。首無しのバイクが迫ってきたとかババァが後ろから走ってきたとかジャンプステップホッピングしたババァに追いこされたら呪われたとかの噂があるそうだ。
ともかく曰く付きの峠なので、一般人はまず立ち寄ることは無いらしい。
「幽霊さん、多いな……」
その場でぼぉっと立ってる幽霊が多い。昼間なのにすっげぇ数がいる。
さすがに稲荷さんの神社程じゃないけどこれは酷い。
とりあえず、称号をお化けなんて怖くないとジャイアントテイムにしておく。
攻撃スキルも霊体特化系に変えとこう。
といっても戦闘時にテイムを霊打に変えるくらいなんだけど。
というか、もはや能力六つだけだとどうしても俺のスキル群だと余り過ぎなんだよな。
もうちょっと活用出来ないものか。
「稲荷さん。スキル枠って増えたりしないのかな?」
「うん? 急にどうした?」
「いや、贅沢かも知れないんだけど、六つだと使えるスキルが同じのになっちゃうというか、これ以上のスキルが使いたくても埋まってて使えないというか……」
「ふむ、それは……」
「なんだ? 改造の話か?」
スレイさんは呼んでないよッ!? 改造要らない。要らないからね。
「じゃが、何かしらの方法でスキル枠は増えそうじゃがのぅ、残念ながら知らんのぅ」
輝君聞いたら教えてくれたりしないかなぁ?
『こっちへ……』
お、なんか手招きしている女性霊がいる。
「絶対行くなよ、あれが恐らくカーブに巣食う悪霊じゃ」
「っと、スレイちゃん、行かないの」
「っ!? す、すまん、なんか足が勝手に向いそうになっとった」
ふらふらと近づきそうになったスレイさんの腕を掴むテケテケさん。危ないなぁもう。
スレイさん誘われちゃってるじゃん。
「ああやって生者を誘って殺すのね。能力的にはおねーさんより低そうだけど、結構な数殺してるわね、アレ」
「アレをテイムは出来そうにないし、このままトンネルまで行こうか」
「そういえばライトとかはある?」
「懐中電灯買っといたよ。一応マッチもね。あと戦闘用にヘッドライト」
「ならいいけど」
しかし、いろんな幽霊が居るなぁ。
首無しライダーは居ないか、やっぱり車かバイクに乗らないと出てこないのかな?
ちょっと期待してただけにざんね……なんかバイク来た!?
え、待って。何アレ!? なんか包帯ぐるぐる巻きの人が乗ってる!?
あれは首無しライダーじゃねぇ!?
驚く俺達の元にやってきたそいつは、日本刀を肩に背負ってバイクを止めた。
そして、恐ろしい声で告げる。
「トンカラトンと言えェッ!!」
「トンカラトン……?」
「チッ」
え、それだけ!?
包帯男は舌打ちだけ残してバイクのエンジンを吹かすと、再び坂道を下って去っていった。
「なんだったんだ?」
「アレも峠に出てくる幽霊か何かかしら?」
「まぁ、問題ないなら放置でいいや。さっさとトンネルに行こうか」
「それもそうねぇ」
「いや、お前ら、アレ知らんのか……」
「あ、スレイさん知ってるのあいつ?」
「トンカラトンだぞ、全国各地に出没する、知らんのか!?」
「いやー、幽霊はハナコさんくらいしか……」
なんかやべー存在だったらしい。後で調べてみるかぁ。




