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842.ご近所さんにお願い6

 山を登っていく。

 普通の山とは違い、人の歩くような道はない。

 ただ、鬼たちが歩くので獣道ならぬ鬼道は出来ている。

 人が歩く歩行スペースが二つ、行きと帰りで左右に分かれている。


 一応警戒して周囲を捜索してみたが、マダにーさんはいないらしい。

 ここは安心して登れる山らしい。

 一匹でもいれば致命的だからな。探査スキルは常に発動しておこう。


「お。ヒロキの旦那ぁ、お久っす」


「おーす」


 上の方から降りてきた青い肌の鬼が一体。

 二メートル代の巨漢で角が日本パンチパーマの鬼は、気さくに片手をあげて挨拶してきた。

 鬼たちはあのイベント後から大体こんな感じだ。

 脳筋なのでお祭り騒ぎに誘った俺を快く受け入れてくれているらしい。


「酒吞さんは?」


「茨木たちと酒盛りでさぁ、あっしは今から門番交代。あっしの後ろから風鬼が来てまっせ」


 あの鬼っ娘たちと交代するのか、もうちょっとゆったりしてたら一緒に山登り出来てたかもしれんな。さすがにここで待つのはやめておくか。一人ならともかく芽里さんたちにスケコマシ扱いされそうだし。

 青い鬼と別れてしばらく歩いていると、今度は細マッチョの緑肌の鬼がやってくる。


「ヒロキさんじゃねぇですか。お久です」


「うっす。さっき青い鬼に会ったよ。これから交代だって?」


「定期的に誰かが門番しとかにゃぁいけやせんからね。酒だけ飲んで踊っていたいですわ」


 それじゃまた、と風鬼と別れる。

 さらにしばらく行くと、様々な体色の鬼が集まっている広場へと辿り着く。

 ここが普段酒盛りしている鬼の集会所である。


「おー、ヒロキのアニキ! 久しぶりだなぁオイ!」


「こっち来て酒飲もうぜ!」


「ねーぇ、お姉さんのお酒注いでよぉーっ」


「あはは、これから酒吞さんと酒盛りなんだ。悪いな」


「かー、首領とじゃしゃーねぇや」


「変に足止めさせて癇癪起こされちゃかなわねぇ」


「もー、後で酌してよー」


 酔っぱらい共に手を振るだけで応えつつ、酒盛り会場の通路を進んでいく。

 (V)o¥o(V)さんがちょっと酒飲みたそうにしてたけど、酒吞さんと話が終ってからにしてくれ。

 あと後日なら幾らでも酒盛りしてていいっすよ。一杯程度じゃ鬼たちのほうが逃がしてくれないけど。


「あのー。ところで私の泉はどこですか?」


「シェリーさんの泉探索はこの山でやること終わらせた後でね」


 とりあえず周辺の泉を探してみるつもりだ。

 気に入った泉があるといいけれど。


「「しゃー」」


 ん? ああ、お酒飲みたいの?

 ツチノコさんたちも酒好きだっけか。まぁ蛇だし蟒蛇って奴だな。

 

「んで、稲荷さんは何してんの?」


「うむ。この山には蛍がいてな。今捕まえたところ……何だこの虫!?」


 それは蛍じゃなくてお尻光オジだな。虫じゃなくて小型の妖精らしい。足だけ虫の羽生えたおっさんである。


「気色悪っ!?」


「お、お尻光オジじゃないか。それいらないならくれよ」


 紫肌の鬼がやってきて、おずおず差し出した稲荷さんからひったくる。

 おいおい、そのまま食べるのかよ!?


「んー。うめぇ。こりゃあ礼だ。受け取ってくれ」


 そして稲荷さんは鬼から何か貰ったようだ。


「そいつぁ如意宝珠といってな。前に竜の兄ちゃんがおいてったもんだ。俺らにゃ使い道ねぇが綺麗な石だしなんか使えるだろ。あの兄ちゃんはそれをチ「いわせねぇよ!?」ニって、ンだよヒロキ?」


 あっぶねぇ、なんか普通の言葉のはずなんだが卑猥に聞こえそうな言葉を聞きそうになったので思わず遮っちまった。


「まぁなんだ。稲荷さんもありがたく貰っておくよ」


「おぅ、んじゃ、また捕まえたら食わせてくれや、アレ美味いんだ」


 美味い、のか。

 いや、うん。鬼の好物なら仕方ない。


「儂、あんなのまた捕まえとぅないのじゃ」


「別に無理して捕まえなくてもいいだろ。それよりもう少し上るぞ」


 酒盛り会場を後にしてさらに山を登る。

 すると、岩の洞窟前で酒盛りしている六人組の鬼たちを見つけた。

 イケメン、ガチムチ、ガチムチマッチョ、超美人、美少女、美少女の六人だ。

 星熊童子、熊童子、虎熊童子、金童子、茨木童子、酒吞童子の姿ともいう。


 ちなみに、酒吞童子はゲームによってさまざまで基本は赤い大男の鬼姿だけど、場合によっては美女だったり、若い男だったりする。このゲーム内では美少女になるようだ。

 

「おー、来たかヒロキ! イベントでは皆楽しんでたぞ! 後の酒盛りに参加しないお前のことを悪く言ってたがな!」


 大きな声で叫ぶのは、金髪碧眼の超絶美少女。額から二つの角が生えてなければ普通に外国のお嬢様といった姿だが、今は胡坐をかいて樽に入った酒、いや、零れてる液体から見て赤ワインかな? をがぶ飲みしている。


「ぷはーっ、やはり酒も美味いが赤ワインがいいな! ヒロキもどうだ?」


「一応ゲーム内では小学生なんでちょっと」


 どうでもいい話だが、このゲームの酒吞さん、ある一説を取り入れてるようだ。

 その一説によれば酒吞童子の正体は漂着した外国人で、名前がシュタイン・ドッチさんとかそんな感じらしい。大江山で赤ワイン飲んでた姿が人の生き血を啜っているように見えたために討伐されたんだとか。これが事実なら可哀想過ぎるなドッチさん。まぁこの話は昭和あたりに報告された奴だから辻褄合わせかもしれないけど。

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