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841.ご近所さんにお願い5

「オワリダ」


 何度目かの地面への激突。

 ブレイドが陥没した地面とガルガンチュアクラッシャーの間に挟まれ押し潰された。

 あーあー。手加減スキル使われたから死んでは無いけど、これはもう完敗だ。


 ピクリとも動かなくなったブレイドをなんとか地面から引っ張り上げ。舞台から撤収する。


「ツギハ、オマエカ?」


「ええ、少し人形劇に付き合ってくださる?」


 宣言通り、芽里さんが一人、戦場に対峙する。

 別に相手からも全員で戦っていいっていってるし、俺としてはちゃちゃっとぶっ倒してもらっちゃえばいいんじゃね? と思うんだけど、だめらしい。

 

「ツキアウモナニモ、ニンギョウ、イナイゾ」


「安心して、私の目の前にあるでしょう。とっても強い人形が」


 戦いは、すでに始まっていた。

 突進しようとした巨女の体がその場から動かない。

 なんだ? と彼女が自分を確認してみれば、無数の細い糸が巻き付いていた。


「コレハ!?」


「さぁ、踊っていただけまして?」


 芽里さんの指先の動きに合わせ、巨女の体が動き出す。

 慌ててもがくが、もがく程に糸が筋肉に食い込んでいく。


「ヌゥ!?」


 もはや戦いになる状況ではなかった。

 芽里さんの拘束により彼女は動きの一切を封じられ、武器を使う術も失った。

 戦う前にすでに張り巡らされた糸の群れ。まさしく操り人形となった巨女に芽里さんを倒すすべなどなかったのだ。


 これが、自分と同レベル帯か、低レベルの存在であれば、強引に引きちぎることも出来ただろう。

 しかし芽里さんのレベルは軽く彼女の倍はある。

 つまり力で無理矢理引きちぎることすら不可能。

 捕まった時点ですでに詰んでいるのである。


「ヌカッタ……」


「奇襲成功、なんてね」


 普通に戦っても勝ててただろうけど。無駄に負ける可能性のある戦い仕掛ける必要はないしな。

 芽里さんも着実に外道道を歩き出してくれたようだ。やはり外道、外道道こそが楽に敵を倒せる道なのさ。俺の元まで来るがいい。なんちって。


「どう? これ以上、戦える?」


「ムリダ、ウゴケヌ」


 力を放し、剣を取り落とす。

 それが敗北の合図となった。

 糸を緩める芽里さんと深く息を吐く巨女。

 

「モッテイケ、オマエタチノモノ、ナッタ」


 ガルガンチュアクラッシャーゲットだぜ! 使い道は今んところないけども。

 それにしても芽里さん、戦いしなくてよかったの?


「ええ。彼女と私じゃバトルスタイルが違いすぎるもの。これ以外の戦闘方法だと殺し合い確定よ?」


 糸により全身を細切れにするのが先か、腕力に物を言わせた一撃で真っ二つにされるのが先か。

 双方生還させるならこの決着が一番よかったそうだ。

 確かに、相手を殺すより生かして倒す方が難しいのは難しいな。


「ところであんた、ファラオさんとこの兵士か何か?」


「ウム、モトセンシ」


 もと? 元? え、元戦士? ってことは……この人も死人じゃねぇか!?


「顔隠してるのってもしかして……」


「ミルベキデハナイ」


 おおう、美女の顔はミステリアス。そういうことにしておけということか。

 俺たちは用事が済んだ、と巨女さんに別れを告げて闘技場を後にする。

 一応帰る旨をファラオさんに告げてみると。別に帰りの挨拶などいらんと言われてしまった。


 さて、ご近所巡りは残すところあと一つ。

 もしかしたらこっちの方にあるかなぁ?

 鬼の住まう大江山。いや、大江山なのかどうかもわからんけど酒吞童子がいるなら大江山と呼んでいいんだろう。


 ピラミッドからは俺のUFOを挟んで対面に位置する山へと昇る。

 麓に関所みたいに鬼が二体、門番しているので、そこで謁見願いを伝えておけば、あとは酒吞さんが歓待してくれるはずである。

 最初の引っ越し報告は結構歓待されたからな。多分大丈夫だろ。


「お、見ろヒロキ、でっかいクワガタじゃー!」


 道中見つけた木に虫取り網をふぁさっと被せた稲荷さん。

 捕れたクワガタ君をむんずと掴んで掲げて見せる。

 おーヒラタさんだ。


 そういえば虫で思い出したけど、猿夢と竜宮城に向かった虫たちは元気だろうか?

 まぁきっと元気でやっているだろう。

 運命が交わるならベーヒアルみたいに強化されて戻って来るさ。


「お、ヒロキでねぇか!」


 鬼、というか子供サイズの角生えた女の子が二人。虎柄のビキニを身に着け、棘付きこん棒を手にして山の麓に座り込んで喋っていた。

 二人は俺たちに気付くと立ち上がって両手を挙げて歓待を表現する。


「あのイベント楽しかったゾ!」

「ぞ!」


 ちなみに彼女たちも俺とプレイヤーとの決戦イベントでファラオさんたちと逆の森を守ってて貰ったのでプレイヤーとたまに激突していたようだ。

 生粋のバトルジャンキーなので戦いに満足行くなら全部楽しいらしいので、あのイベントは鬼族から比較的好評なのである。


「今日は酒吞さんに会いに行くつもりなんだけど、大丈夫かな?」


「首領なら今日も酒飲んでるゾ」

「ぞ!」


 いつも酒盛りしてる時しか会ってない気がするな。

 多分酒飲んでるか吐いてるか寝てるかしかしてないんだろう。鬼の生活も案外暇だな。

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芽里さんが外道に染まっている!? 目隠し眼帯と首枷と手枷と足枷と腕枷と太腿枷と口枷を着けて何も見ることも聞くことも動くことも話すことも考えることも思うことも出来ないようにして愛玩動物として永遠に…
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