840.ご近所さんにお願い4
ピラミッドの地下にある闘技場へとやってきた。
すでに話は通っているようで、闘技場内部には誰かが一人いらっしゃった。
対面の通路から闘技場へとやってくると、紙袋を被った筋骨隆々の女性がビキニアーマーを着て待っていた。
肌は浅黒く、筋肉で引き締まった胸に張り避けそうなビキニアーマー。下半身のアーマーも筋肉に埋もれている状態だ。
そんな彼女が手にしているのが巨大なシミターに似た武器。峯の方にとげとげしい装飾が付いたゴテゴテしたそいつを肩に下げ、俺たちの到着を待っていた。
「ハナシ、キイタ。ワレ、コノブキ、タクス、ヨイ。シカシ、ワレヨリツヨキモノ、ワタス」
なんで片言!?
目と口部分だけ空洞の紙袋がブキミなんですが!?
「マケン、ガルガンチュアクラッシャー。ホシケレバ、カテ!」
「っと、ちょっと待った!」
なんか放って置いたら突進してきそうなので、一旦手のひらを前に出して押し留める。
「ナンダ?」
「とりあえず誰が戦う? さすがにこのメンバー全員で勝ってもくれるかわからんし」
「そういえばそうだな。思わず戦闘態勢になったけどよく考えたら一対一で戦うべきか」
「ワレ、カマワン」
「よし、剣士の戦いだ、勇者として対戦しよう」
勇者ブレイドが前に出る。
一対一での戦闘開始。
俺たちは邪魔にならないように控室側の通路に退避しておく。
「行くぞ!」
「ソノイキヤヨシ!」
互いに走り出す。
あの巨漢から繰り出される一撃、めっちゃ速いんですが!?
とっさのサイドステップで避けるブレイドだが、振り回された一撃が髪の一部を薙ぎ散らす。
「禿げるのか!?」
「禿げてたまるか!?」
「フン」
思わず叫び返すブレイドに返す一撃。
剣で受け止めようとするが、膂力が足りずに弾き飛ばされた。
「がはっ!?」
側面の壁に激突し、思わず呻く。
地面に落下したブレイドは、しかし転がりながら立ち上がって態勢を整える。
「受けるのは無理か」
「ヨケルノモムリ」
ブレイドが立ち上がったタイミングで飛び上がっていた巨女が真上から急襲する。
「無理じゃないっ」
地面を割り砕く一撃を、ギリギリで飛び退る。
「っぶ、ない。これは一対一で勝てる奴いるのか?」
NPCなら何名かいそうだな。ネネコさんあたりならいい勝負するかも。
「奥の手を切る!」
このままだとすぐに負けると理解したらしく、ブレイドは早々に奥の手を切った。
「リロードブレイブ、我が力の全てを糧に!」
「ム? アッサイセンゲン、ワレニキョタイヲクダクチカラヲ」
あれ? 巨女さんの動き、アレ必殺技とか出ちゃう感じ?
「くらえ!! ブレイブ・ブラスターッ!!」
「レイキセヨ、ガルガンチュアクラッシャーッ!!」
おおお、必殺同士の激突だとぅ!?
放出技のブレイブ・ブラスターに魔剣ガルガンチュアクラッシャーが茶色系のオーラを纏ってぶつかった。
必殺同士のぶつかりでまさかの威力相殺。
ブレイブ・ブラスターが近接秘技のガルガンチュアクラッシャーによりかき消された。
「嘘だろ!?」
「オボエタカ? コレ、ガルガンチュアクラッシャーノレイキスキルダ」
励起スキル? ってことはあの剣持ってたら使えるスキルって奴か。
ブレイドみたいに剣技じゃなくて、剣自体にスキルが付いてるらしい。
だから魔剣なのかな?
「ちなみに魔剣っていうくらいだしデメリットあるんです?」
「ケッコウオモイ」
十分すぎるデメリットだ。
あの巨女をして重いのなら扱える人がいるのかどうか怪しいな。
剣だしヘンリエッタさんかなとか思ったけど、重すぎるのなら骨折れちゃうな。
あれ?
今気づいたんだけど、うちのメンバー、ヘンリエッタさん以外剣を武器にするメンバー、いなくね?
こんだけ人数居るのに、いなくね?
ぎりぎりルースさんが使うかな、くらいか? でも基本槍使ってたよな。
やっぱり剣、使わないな。
つまり、この魔剣、手に入れる必要性が、ねぇ!
よし、ブレイド君に丸投げしよう。
彼くらいしか剣使ってないし。
俺は(V)o¥o(V)さんとミツヅリにその旨を告げる。
言われて俺のテイムキャラたちを思い浮かべる二人は、確かに、と納得していた。
まぁ無理矢理もたせりゃ使うだろうけどさ。
「でもヒロキ、巨体特攻の剣はドール討伐に必要じゃない? ユウキさん辺りに持たせてみたら?」
「そういやユウキさん一般人枠だから突出した攻撃スキルないな。まぁブレイドがダメそうならこっちで回収してみるか」
「それなら、ブレイドさんがダメだったら私がやってみていいかしら?」
「芽里さんが?」
「たまには運動しないとね」
「怪我、しないようにね」
芽里さんがやりたいっていうならお願いしようかな。レベル的には圧勝するはずだし、そこまで苦戦はしないでしょ。




