833.猫の街ウルタール
ウルタールへとやってきた。
どこか古めかしい古都、といった街並みではあるが、結構な賑わいがある。
中世の街並みってこんな感じなのかね?
「ウルタールには各都市の貿易商などもやってくるですにゃ。ダイラス・リーンからの商人が多いのは近場だからですにゃ。あとは奥の方に寺院がありますにゃ。いう必要はないかと思いますが、ウルタールでは猫を殺すことを禁止させていただいてますにゃ」
地球に住む猫たちがドリームランドで活動するための拠点がここになるんだっけか。
「もし寺院に行くならフサンの謎の七書とか読むといいですにゃ」
それを読んでどうなるのかわからんが、機会があれば読ませて貰おう。
「確か、寺院の方にアタルとかいう大神官がいるんだっけ?」
「はいですにゃ。ただ、最近長く生きすぎて耄碌しちゃってますにゃ。あまり期待はしないほうがいいですにゃ」
耄碌してんのかい。
って、クトゥルフ系の話があった時点で300歳だったからここだともっと年食ってることになってんのか。面倒くさいことにならないといいけど。
「とりあえず今日のところはここで宿をとるか」
「そうですね。宿で寝ることで元の世界に戻ることもできるみたいですし、今日はここで出来ることを終わらせておいて、明日にはダイラス・リーンに向かいましょう」
一日一都市訪問か。
ダイラス・リーンで一泊する間に船の手配もしないとだし、今日はこっちで泊るっていうのも理にかなってはいるか。
せっかく来た都市だし、見て回りたいのもあるからな。
一旦宿を取って、未知なるモノさんや案内人君とは別行動をとることにした。
明日のドリームランドで落ち合ってダイラス・リーンに行くことになったようだ。
「で、テインさん、俺らはどうする? 各自で見回る? それとも一緒に行く?」
「下手に各自に分かれた場合ニャルとクトゥグアがやらかすだろう。それなら一塊になって見回った方がいい。特にこの町では猫を間違って殺したりすれば地獄を見るからな。二人の暴走を防ぐためにもヒロキに付いていくようにしよう」
「了解。とりあえず町中ぶらついてみるか」
猫の街と言うだけあっていたるところを野良っぽい猫が闊歩している。
馬車や謎の生物が引く牛車みたいなのもせわしなく行き交っており、この短い時間にも猫を轢きそうになったりで結構殺猫事案が起こりそうになっていた。
「安いよ安いよー。猫の餌安いよー」
猫の餌売ってるらしい。
でもそれ露店販売向いてないだろ。ハエ集ってるぞ。
「安いよ安いよー。ぽもの餌安いよー」
ぽもってなんだよ!?
しかも猫の餌より高級そうだぞ!?
靴磨き屋に膝枕屋。毛づくろい屋にノミ取り屋。
確かドリームランドにはノミいなかったはずなのでノミ取り屋は廃業するのでは、と思いきや、意外と盛況なようだ。
おそらく現実世界ではノミがいる猫だったためについついお願いしちゃうんだろうな。
やると落ち着くという理由もあって猫たちが金を払って受けていた。
「大盛況だねー。こんだけ大盛況だと私踊りたくなってくるよー」
くねくねさんは踊らないように。周囲の人が溶けちまう。
「このまま奥に向かうと寺院に出るが、どうする?」
「まぁせっかくだし行こうか? この辺りは古都というよりはインドの街って感じしてくるな。寺院が近いからか?」
「あっち日本庭園っぽいのあったぞダーリン」
「ギーァ」
なるほど、地球の文化ごちゃ混ぜになってるのか。
あ、確かに、この辺り中華系の街並みだし、一つ向こうの通りは中東系の街並みになってる。
いろんな街並みのいたるところに猫がいる。
結構自由にしていることからゲーム内なのに猫の動きが細部までこだわってるんだなぁ。とどうでもいいことを考えてしまう。
そんな猫に紛れておっさんが一人、一眼レフ構えて寝転んだ状態で猫を激写していたりするけど、アレは放置したほうがいいんだろうな。
「ここが寺院か」
「白い壁綺麗だね」
「それよりも私はアレが気になる。魔法の絨毯?」
施設内の中央付近に絨毯と共に胡坐をかいて座ったままのおっさんが一人、浮いていた。
ターバンを巻いたオッサンは目を閉じて瞑想中のようで、下手に声を掛けづらい。
「アタルさんとやらは奥の方なんだっけ?」
「こっちのはずだよ」
オッサンの横を通り過ぎようとした時だった。
俺が通過する直前になっておっさんが、カッと目を見開く。
「お前だ!」
「何が!?」
「わかる、分かるぞ! 私は宇宙の真理に近づいた! 貴様が特異点だ!!」
何の話だよ!?
っていうか空中滑空してきて腕掴んできたんだけど、これ振りほどいていいやつか?
「まさに特異点! 貴様、一体何をした!? こんなことがあっていいはずがない! これでは世界が滅びかねん!」
いきなり何言ってんのこいつ?
おっさん、結構腕掴んでる威力が痛いんですが!?




