832.ドリームランドで待ち合わせ3
「酷いじゃないかヒロキ!」
「私を売るなんて、よくもやったな!」
「何をおっしゃってるのかわかりませんが……お前ら二人地形あんだけ変えまくっといて俺を巻き込もうとか神としてどうなんだ? 猫たちの説教だけじゃ足りないか? 俺からもお説教必要か?」
「ヒェッ」
「さすがにまだ説教時間が増えるのは御免だ」
「ヒロキ、とりあえず移動しようぜ。ナスの谷はこっち側でいいらしい」
皆と情報共有できたので、皆揃ってナスの谷向けて移動することになった。
「えーっと、ナスの谷に向かうには、ングラネク山行かないといけないんだっけ?」
「南のオリアブ島にあるらしいな。となると、そこに行く船がいるんだが」
「えっと船はダイラス・リーンって港町から出るんですよね。ここからだと、ウルタール経由で南に向かうのが一番早いかな?」
「うわー、避けて通りたかったウルタール行かなきゃダメか?」
「なんだよぅヒロキ。そんなにウルタール嫌いかー?」
「【何人たりとも猫を殺してはならない】だろ。行ったら何かの拍子に猫死なせそうなんだよなぁ。イベント的に」
「あー、それはありそう」
「マイネさん連れて来てないから大丈夫じゃないですかね?」
案内人君、それはつまりマイネさんがいたら迷いなく猫を殺すということかね。
彼女に謝れ。なんかこう、謝れ。事実だとしても言っていい事と悪いことがあるんだぞ。
「あ。さっきニャルさんたちが怒られてた猫の一団だ」
「すいませーん。ちょっといいすかー」
猫さんたちの一団に一声かけて合流する。
「おや、なんですかにゃ?」
鎧武者の猫が代表して話に応じてくれた。
兜の代わりに肉球マークが入ったハチマキしてる鎧猫だ。ちゃんと鞘付きの日本刀を二つ、腰に差して二足歩行している。
「俺らナスの谷に向かおうとしてるんすけど、どうもウルタール経由した方が移動しやすそうなんで、同行させて貰ってもいいですか? いろいろドリームランドのお話聞きたいです」
「問題ないですにゃ。そちらのお二方。いくら犬猿の仲といえども地形変えるほど戦うのは感心しませんにゃ。もうやらないようににゃ」
「うぐ。善処しよう」
クトゥグアさんまだやるきだよ。
猫たちもソレは理解したようだけど、言うだけ無駄だし今はおとなしいと言うこともアリそれ以上の追及はしないことにしたらしい。
まぁ外の神ってことで高位存在だからあまりとやかくは言えないんだろうね。
「えーっとまずウルタールについて教えて貰っても?」
「ウルタールは猫の街ですにゃ。我々地球の猫がよく来てますにゃ。一部ではありますが人語を勉強した猫もいるので拙者のように会話も可能ですにゃ。普通の猫と話したいなら町中にある猫語学校に行くといいですにゃ」
猫語学校!?
猫の言葉を学ぶためだけの学校があるの!?
猫好きが聞いたら速攻でドリームランド突撃してきそうだな。
「ちなみにズーグや土星の猫、ムーン・ビーストとは敵対関係にあるですにゃ。なので彼らをテイムしている場合はウルタールに持ち込まないよう気を付けてほしいですにゃ。いたら間違いなく戦争ですにゃ」
「な、なるほど」
とりあえず今はそれっぽいのはいないけど、敵対関係者をうっかりテイムしてウルタールに入ることもある訳か。これはちょっと掲示板に晒しといた方がいい情報だろうか?
「ん? 待てよ。確かムーン・ビーストってナイアーラトテップの奉仕種族では?」
「ニャルさんわかんなーい」
あざと可愛らしくしているけれど、どう考えてもうざい。
猫たちは何とも言えない顔で彼女を見つめ、ため息一つ。
「とりあえず月の裏側で戦争はしてますがにゃ。表向きは何もせず平和に過ごすですにゃ」
戦争はしてるが見えない場所でってことか。
「まぁせっかくだし、町に着くまで暇だし、他にも質問していいかな?」
「構いませんが……せっかくですし一問一答でどうですかにゃ。こちらが答えたら今度はこちらの質問にそちらが答える、とか」
「ほほぅ。俺らに聞きたいこととな。いいだろう、その提案乗った!」
「んでは、猫の知り合いは居ますかにゃ?」
猫の知り合い?
なんでまたそんなことを?
まぁいいや。
「俺はいないかなぁ。ニャルさんが一時期猫化してたけど」
「僕も猫はないですね」
「あー、野良猫ならそこらへんで見かけるが?」
「ありゃー、猫好きはいませんでしたかにゃ」
「俺は可もなく不可もなく、近くに猫がくれば撫でるくらいかな。ノミやダニが付くのはちょっといやだけど」
「ドリームランドにはそんなのいませんにゃ。外の世界だとマダにーさんとか面倒なのがいるから猫生活も大変だけどにゃ」
あの危険生物、猫の間でも危険扱いだったのか。
マダにーさん、恐ろしい生物だぜ。




