830.ドリームランドで待ち合わせ1
ナナシさん改めナギさんを連れて帰った俺は、適当な部屋に押し込んで、自分は一人自室に向かう。
これからしばらくはここで眠ってドリームランドをしばらく堪能。それからログアウトすることにしている。
正直、ゲーム時間がまた伸びてるせいで寝る時間が削れてる気がするけど、まぁ今のところ快眠なので問題あるまい。
どうせ夜遅く寝ても遅れてしまうような仕事もしてないし。
ゲーム内で眠る。
これって眠る状態に入るんだろうか?
現実世界の俺としては今どういう状態になってるんだろうな? 寝てるのか、ゲームしてるのか、ゲームしながら寝てるのか。
ま、俺の意識は寝ないでゲーム続けてるからそういうことだと思っておこう。
まずは自己イデア。
いつものように公園に降り立つ。
ベンチにはディスマンが座り、気味の悪い生物たちが走り回っている。
「あんたまた来たのか」
「やぁ。君と話をするにはなかなか骨がいるね。何度殺されたことか」
「そりゃ大変だったな。で、あんた結局なんなんだ?」
ある場所に連絡入れて、俺はディスマンの隣に座って話しかける。
「おっと、今日は話を聞いてくれるのか、ソレは嬉しい」
「あんたがどういう立ち位置なのかがわからないと対処もできないしな。邪魔だと自己イデアから追い出したとして、後からあんたが味方だった。なんてわかると申し訳ないし、逆のパターンだってある。それを判断するためにも、あんたの目的と立ち位置が知りたいね」
「ふむ。私の言葉を信じて夢のクリスタライザーを入手して来てくれたりは、しないかい?」
「そいつを手に入れて何をしたいのかがわからないしな」
「むぅ、他のプレイヤーは結構了承してくれたんだが。彼らは話が速くて助かったんだがね。君は無理かい?」
「さぁ、どうだろうな?」
おや、背後にもう来られたようだ。
「理由は言えないのか?」
「言えない訳ではない。しかしわざわざいう必要もない。私としては夢のクリスタライザーが欲しい。君はそのお零れでクリスタライザーの力を使える。悪くない取引じゃないかな?」
「そいつにゃデメリットが抜けてるなディスマン。夢の守護者たちに敵認定されるっていう特大のデメリットだ。違うか?」
ディスマンは答えない。
俺は深くベンチに背もたれ、ディスマンの首に手を回す。
「まぁ、俺も協力しないと言ってるわけじゃぁ、ねぇんだ。理由が知りたいんだ。夢の守護者を敵に回してでもあんたが欲しがってるクリスタライザー、それを集めて何がしたいんだ?」
「……君にはまだ告げるべきではないと思っているよ。私と君の間に信頼は未だ築かれていない。違うかな?」
「そりゃそうだ。信頼はない。だからそれを作るためにもあんたは自分の目的を告げるべき、だと言ってるわけだけど……話すつもりはないらしいな」
「すまないね。それはまだ言える段階じゃないんだよ。なんとか協力してくれないかな?」
「悪いが、俺は理由も言えない奴よりは、話しやすい奴を仲間にしたいんだ。残念だよディスマン君」
―― 本当に、残念だ ――
「なっ!?」
ディスマンが声に気付いて立ち上がる。振り返ろうとした彼の首は、夢の守護者さんにより刈り取られ、宙を舞って消えていく。
―― 報告ご苦労 ――
「ああ。しかし、結局ディスマンが何のためにクリスタライザー狙ってたのかは謎のままだな」
―― 問題ない。ミームは既に手に入れた。個体名ディスマンは我々共通の敵として認識された。今までのようにはいかぬ ――
おおう、今までは姿もわからない危険人物だったけど、今回のことで指名手配できたってことか。
ディスマン側も理由とか教えてくれりゃ交渉の価値あったかもしれないのにな。
―― 今回のこと、我が神も喜んでいる。ヒロキには何かしら礼をしたいと言っていた ――
「別にそんなこと必要ないっすよ。夢の守護者さんたちにゃお世話になってますし。ギーアのことでお咎めなかっただけでも十分すぎますって」
―― そういうな。神直々の礼だ。むしろ貰っておかないと後が怖い ――
何それ、それは礼とは言わないのでは?
―― どういった礼になるかはまだ決まっていない。決まったらまた連絡しよう ――
「じゃあそれでお願いします」
お礼の押し売りされると分かってるなら大人しく受け取ってしまった方がよさそうだ。
変なの貰っても笑顔で嬉しいです、とでも言っておこう。
―― 今日はこの先どうするのだ? ――
「ああうん、皆がドリームランドの方で待ち合わせしてるから魔法の森だっけ、あそこに向かうよ」
―― そうか。ではまた。いつでも会話してくれ。どうせ徘徊中は暇なことが多いからな ――
夢の守護者さんが去っていく。
おお、なんか転移したみたいに消えてったな。
どうやら連絡入れれば俺の近くに転移したり、元の場所戻ったりすることができるようだ。
やべースキル持ってるな夢の守護者。そりゃドリームランド守ってるんだからそのくらいは使えるか。




