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827.男子高校七不思議12

「正直に言おう、地獄である、と」


 保健室内、ようやく皆が起き上がり、俺たちは一旦ここで情報共有というか、壊れかけた精神をなんとか休めることにした。

 特にモヒカンと全裸ベッドイン決めていたダイスケの精神がかなりヤバいようで、今もまだ真っ白に燃え尽きているので彼が回復するまではどうしようもない。

 あとドアの先からオギャーオギャーっと嫌な声が聞こえているので覚悟が決まるまではドアを開けたくもない。

 残ってるのは帰るだけなんだけどな。


「はぁ、心のダメージ半端ないな……」


「一応モザイクありだったからまだマシだけど、隣の男が全裸だったという事実はなんかこうクルな、精神的負担がデカすぎる……」


「俺、運営にクレーム初めて入れたっすわ」


「クソ、ヒツギチーム連れてくりゃよかった」


「いやー、皆楽しそうで何よりだったわ。私的にはメシウマね!」


「ってかお前はベッドインしなかったのかよ、同じモヒカンだろ!?」


「中の人が女性だったから対象外だったんだろォぜ。ユウキさんは中身男で側が女だったからそっち行きみたいだったがよォ」


 モヒカン同士でマウント取り合ってるんじゃないようっとおしい。

 まぁ男性陣全員だったからまだ皆悲しみを共有出来てマシだったようだが、これで二人だけ、だった場合はかなり辛いことになってただろうな。

 あるいは……


「お、ダイスケ起きたか? ダイスケ?」


「あ、いや、な、なんでも、ねぇ……」


 モヒカンの顔が視界に入った瞬間、ダイスケは慌てたように視線を切った。

 困惑したような顔をしているのは、嫌な予感がしない。

 何しろ今彼の精神は不安定だ。

 理想の彼女が現れたと思えば男で、男だけど理想な大好きな顔で……

 その困惑中の思考の中で、モヒカンヘッドと近距離ベッドイン。

 目覚めたら隣にモヒカンヘッドのあどけない寝顔というインパクト。


 これ、一人の恋愛観を完全にゆがめてないか? 大丈夫か?

 さすがにそれは不味いだろ運営さん。

 

「さて、とりあえず保健室ダメージは考えないようにすることで一定の心の安定は測れた。あとは……あれをどうするか、だ」


「あれ、ねぇ」


「正直ボクは戦いたくもないかなぁ、油っぽそうだし」


「口回りの青髭、凄いよなあのおっさん」


「扉開いたらこっちくるかな?」


「タツキ、やるぞ、僕は今猛烈に何かをぶっ殺したい気分だ」


「奇遇だなアパポテト、全力でぶっ倒そう」


「んじゃ、皆覚悟いいな。開けるぞ」


 俺が代表してドアに近づき、引き戸をスライドさせる。

 開かれた廊下に待機していたのは、血まみれのおっさん。

 青髭の濃い小太りの中年は赤ちゃん用の前掛けと紙おむつというなかなか奇抜なファッションで四つん這いになっていた。


 しかし、ドアを開いたの保健室入ってこねぇのな。

 皆入って来たところを一斉にぶっ倒す、と構えてたのに、互いに近づくことなく一定距離を空けて見つめ合うことになってしまっている。

 どうやら保健室は彼の移動テリトリーからは外れてしまっているようだ。


「皆、ごめん」


 しかし、その均衡を不意に崩しにかかった女が一人。

 抱きしめていた人面犬をその場に置き去りにして、アミノサンが歩き出す。


「あかん! 近づいたらあかんでアミノサン!」


「おい、危ないぞ!」


「俺らの一人みたいに消されるっすよ姉御!」


 皆が止めるが、少女は気にすることなく保健室から一歩踏み出す。

 とたん、反応するオッサン霊。

 しかし、少女はそれに抵抗することなく、抱きしめる。


「大丈夫、怖かったね……私はここに、いるよ?」


 肩に噛みついたオッサン霊を優しく抱きしめ、頭を慈しむ様に撫でる。

 アミノサン、さすがにそれは、引くわ。

 お前どんだけおっさん顔好きなんだよ。

 少女に撫でられる汚じさんとか事案でしかないんだが。


「オギャー、オギャ……お、おぉ……オカア、サン?」


 って、あれ?

 なんかあのおっさん浄化されそうな顔し始めたぞ!?


「あ……テイム出来た」


「うそやん!?」


 アミノサン、おっさんばっか集めてどうするつもりだよ!? 霊体だから事案じゃねぇけどそのうちプレイヤーのヤバそうなうなおっさんテイムしたりしないだろうな?


「あああ、やってもうた。おっちゃんの優位性が! 唯一のおっさん枠やったんに」


 アミノサンに甘えだす赤ん坊姿のおっさん。キモいっす。運営、あれちょっと容姿がヤバいんで何とかなりません?

 アミノサンが凄く気にいってるからこのままいく? マジかよ。運営もアミノサンもキチガいだ。


「はぁ、もう疲れたよ……とりあえず屋上の部屋だけ確認して帰るか」


「あ、そこは確認するのか。やんヒロキったらボクの家に来たいの?」


 なんかそこも七不思議のなんかだろ。今の保健室のところで七巡り達成のアナウンスないし。


「言われてみれば、まだアナウンスないじゃん!」


「もしかして七巡りに必要な要素まだ満たしてない?」


 だから多分ナナシさんの自宅に秘密があんだろ。ったくやっぱあんたもヤバい案件じゃねぇだろうな。

 得体が知れなさすぎるぜナナシさん。輝君並みにヤバそうなんにおいがプンプンするぜ。

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