８２６．男子高校七不思議１１
絶望はあまりにも身近にあった。
俺は自分を取り巻く状況を察して顔を青くする。
すぐ隣にいる誰かを確認することすらも恐怖で出来なかった。
なので逆方向を見る。
隣のベッドには誰かがいるようだ。
すやすやと何も知らずに全裸で寝ているのは……キマリス、だと！？
しかもそのお隣に居るの……ユウキさん！？
待て。
待ってくれ。
安牌と妥協枠が両方、使用済み！？
というかお前ら俺の隣に来るはずなのに二人で全裸待機とか何考えてんだよ！
ヤバい。
それはつまり、今俺の隣に寝てるのは……別の、男！？
ハナコさんや他の女性陣ならまだ喜べるのに、なぜ、男？
全裸の男二人でベッドインとか誰得なんだよ！
―― 私得ですが、何か？ ――
天の声ぇぇぇ！？
こいつか、こいつの成果。畜生。覚えてろ。お前確実に脳天打ち抜いてやるからな！
……覚悟、決めるか。
怖くはあるが、見るしかねぇ。
どうせ布団剥いで服を着ないといけないんだし、っていうかこのゲームで全裸になるのって実は初めてでは？ 十八禁ゲームじゃないのに大丈夫か？
覚悟を決めて、俺は隣に視線を向ける。
……
…………
………………
……美女がいた。
金色の長い髪と整った寝顔。
華奢な撫で肩。
この先はヤバいだろ。っていうかよかった。悪いけどまだよかった！
幸運スキルは一応仕事はしてくれたらしい。
これで相手がモヒカンやダイスケだったら俺はゲームを投げ捨て現実世界で逃避行していたかもしれん。
「ん、ぅ？」
そしてタイミング良く起き上がるナナシさん。
「あれ？ ヒロキ君、なんで全裸？」
目をこすりながら上半身を起こし、ぶふぉ！？ 女性じゃないけどでるとこでてます！？
これは、眼福？ いや、相手は男、男だからアウト！？
「やんっ、ひ、ヒロキ君のえっち。ボク、初めてだったのに……」
何が！？ 落ち着け。落ち着けっ、とにかくこのままは不味い、服、そう服だ！ 服を着ないと！
周囲を見回すが服は無いらしい。
仕方なくアイテムボックスから病院服でも、と思ってアイテムボックスを開けば、装備品全てアイテムボックスの中にしまわれていた。
即行装備し直しナナシさんにも服を着るように促す。
しかし、股間部分、モザイク入ってたな。さすがにそこは再現できなかったか。これが倫理の壁という奴だな。
ちなみに女性の場合は胸にもモザイク入るらしい。
ナナシさんは男性というくくりなのでモザイクは入らないらしい。そこは男女平等を歌うなら入れとけよって思うけど、何で男だと問題ないんだろうね？
「いやー、ヒロキ君と一夜を共にしちゃったよー」
「何もしてないだろ」
「えー、なんかお尻に違和感があるような？」
冗談でもやめてください。マジでそっち系はノータッチなので。
「ふふ、実はボクのが攻めだったりぃ」
「恐ろしい事言わないでくださる！？」
ほんと、酷い七不思議だ。
区切られたカーテンを引いてみる。
保健室の床に寝転がっている女性陣がいた。
どうやら服を脱がされることはなかったようだが、眠らされてはいるらしい。
ん？ モヒカンの一人も雑魚寝に交じってんな。ああ、女性がＴＳ状態でプレイしている奴か。となると、残っているのは……タツキ君とダイスケ、アパポテト、モヒカン二人、そして……人面犬。
あのおっさん顔を隣で見ることがなかったことは幸運だな。
『あ、ヒロキはナナシとか』
「ハナコさん、俺はまだ清い体ですか？」
『いきなりどうした？ まぁこの怪異は全裸にしてベッドに放り込むだけみたいだから襲ったり襲われたりはしてないみたいよ』
霊体だからか睡眠すら弾いたハナコさん、どうやらここの怪異の一部始終を見ていたようだ。
「よかった。マジ良かった……」
「ぎゃー！？ なんで全裸ぁー！？」
「うわー、こうなんのか」
キマリスさんが起きたらしく五月蠅くなった。
彼女の言葉で他の皆も気付いたらしい。
頭を振りながら起き上がる女性陣。
そして悲鳴が連鎖する。
あ、キマリスさんユウキさん、そこに服置かれてるみたいだからさっさと着替えて合流で。
「た、タツキ！？」
「ひぃ！？ あ、アパポテトか。うぅ。聞いてはいたけどこれは酷いな」
「なぜお前と一緒にベッドインしないといけないんだ。クソ、最悪だ！」
やっぱり男性陣には大不評らしい。
「ぎゃあああああああああああ！？」
ダイスケの野太い悲鳴が轟いた。
あー、そりゃそうだな。あと残ってるのは厳ついのばっかだしな。
おそらくモヒカンヘッドと隣り合ってたんだろう。
成仏しろよダイスケ。
あと俺に嫉妬はしてくれるなよ？ 別にお前の彼女寝取ったわけじゃないんだからな。
というか……ナナシさん背中から引っ付いてこないで、ケツに股間が当たっております。
