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824.男子高校七不思議9

 男子高校七不思議、六つ目の不思議は教室の一つにいるロッカー住まいの男子生徒だ。

 

「一応聞くけど、ナナシさんじゃないよね?」


「ボク屋上暮らしって言ったよねヒロキ君。別の人だよ」


 そういえばそんなこと言ってたな、と皆が納得する。

 屋上、ちょっとどんな暮らししてるか後で見に行くのも面白そうだ。

 それにしてもロッカーに引き込まれてロッカー暮らしさせられるそうだけど、何だロッカー暮らしって。


「多分ロッカーから出られなくなるんだと思いますよ。さすがにあそこで暮らすのは狭すぎると思います」


「行くか、アパポテト?」


「絶対嫌だ! すでに僕は日本兵にアタック掛けたから、行くならダイスケだろ」


「それもそうね」


「なんで俺が行く前提なんだよ、そこのモヒカンでもいいだろ」


「あー、それは大丈夫だ。お前らにそんなヤバいことさせねぇよ」


「え、ヒロキさん、まさか!?」


 ん、俺が行くと思った?

 タツキ君たち何を考えてるか知らないけど、わざわざ危険に飛び込むほど馬鹿じゃないからな。

 んじゃ、テケテケさん、おなしゃーす。


「あいあーい」


 片手を軸にして、上半身しかないテケテケさんが掃除用ロッカーを開く。

 ぎぃーっと開くそこには……誰もいない。


「ここじゃないのか。次の教室行こう」


「テケテケさんに開かせるのかよ!?」


「自分がやるんだって思ってちょっとカッコイイと思ったのに……」


 ダイスケとタツキ君がものすごくブーイング飛ばしてくる。

 いや、だって万一捕まったらロッカー暮らしとか悪夢だろ。

 そりゃ挽回可能な奴か何かしら回避能力に秀でた相手がいるなら任せるべきだって。


 何個かの教室を回る。

 この辺りのはずらしいんだけどなかなか当たりを引かないようだ。

 でもそろそろ出てくるはずだけど……


「はい、開い……」


 ぎぃっと開かれたロッカー。そこには掃除道具ではなく男子生徒が詰まっていた。

 開かれた瞬間、開いた相手へと掴みかかる男子生徒。

 頭に血が流れている彼はドアの前にいるだろう人物の体を掴もうとするが、残念、体半分上過ぎたな。


 空を掴む男子生徒と、それを見上げるテケテケさん。

 本来なら上半身がある場所を掴もうとした男子生徒だが、テケテケさんには下半身分の背丈がなかったために空ぶった。

 テケテケさんはそのまま男子生徒を見上げ続ける。


 渾身の捕獲を失敗した男子生徒はしばし硬直し、何事もなかったようにロッカーに戻る。

 扉を閉めようとしたが、これはテケテケさんに阻止される。

 男子生徒が焦った顔をするが、テケテケさんはどや顔だ。

 結果、すごく恥ずかしそうにロッカーに戻って微動だにしなくなる男子生徒。

 あれ? なんか凄く可哀想になって来た?


「とりあえずアカズさん。スキルは?」


「ええ。手に入ったみたい。もうスルーしても問題は無いわよ」


「そっか。んじゃ、スルーで」


 用事は済んだし七巡りもあと一人になったので俺たちはロッカーを開いたままにして教室を後にする。

 しばし様子をうかがっていると、そーっとロッカーから出てきた男子生徒はキョロキョロと辺りを伺い、俺たちがいなくなったのを確認すると、ロッカーの扉をそっと閉めた。


「やほーい」


 そして再び開かれるロッカーの扉。

 男子生徒が勢いよく飛び出すが、そこにはやっぱりテケテケさん。

 何とも言えない男子生徒と、どや顔のテケテケさん。

 凄く、悔しそうに戻っていった。


「いやー、面白かった」


 今度はロッカーを閉めて戻ってくるテケテケさん。

 教室前で息を潜めて待っていた俺たちに満足げな顔でテケテケさんがハイタッチ。

 思わずハイタッチしたけどさ。さすがにイジメはダメだと思うんだ。


「もっかい行ってこようか」


「止めときなよテケテケさん。多分真下にタックル仕掛けてくるよ。というか……そうだ!」


 俺は思いついてしまった。

 思いついたらやるしかなかった。

 ゆえに、三度開かれるロッカー。


 ロッカーに潜んでいた男子生徒は今度こそっと鬼気迫る顔でローアングルタックル、からの掴み上げ。そして空を切る。

 ロッカーの前には誰もおらず、なんで? と彼は困惑。

 遠巻きに見ていた俺たちを見て、誰がロッカー開けたの? と聞きたそうな顔をして来た。


「戻ってきなー」


「ったく、なんでおっちゃんにやらすんや!」


 ロッカーの戸口に掴まってドアごと移動していた人面犬が俺たちの元へと戻ってくる。

 ふ、ロッカーの前に居れば捕まるそうだが、ドアに掴まったままだと捕まらないみたいだな。

 四つん這いになる男子生徒を見て、俺とテケテケさんは何とも言えない愉悦に浸るのだった。


「可哀想だろお前ら……」


「そうは言うけどアカズさん、ロッカー住まいさせようとしてくるんだから少しくらいこっちからやったってもいいんじゃね?」


「でもヒロキのアニキ、あいつの裏設定読んでたら可哀想に思いません? 俺ァさすがに追い打ち仕掛けるのはどうかと思うんすけど?」


 裏設定? そんなのあんの?

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― 新着の感想 ―
多分次はロッカー開けて男子生徒を引き摺り出すんだね ケテケテ→テケテケ→おじ犬→掴まる前に素早く引き摺り出す ファイナルアンサー
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