81.隠されし鍛冶屋
「と、とりあえず全員無事だな。稲荷さんとツチノコさんも大丈夫?」
「うむ。息災じゃ」
「シャー」
とりあえず落ち付けたし、別の場所から路地見てみるか。さすがに全ての路地が地雷じゃないだろ。
大通りの逆へと向い、こっちの通りにある路地裏を覗く。
一応テケテケさんが先頭を霊体化して斥候役してくれるので、俺とスレイさんは付いて行くだけである。
「お、裏通り発見!」
鍛冶屋街の奥にひっそりと存在する数件の鍛冶屋が出現した。
かなり怪しい造りなのが気になるな。
一応大通りの店と同じようにいろいろ店の前に書かれてる。
いくつかぼったくり店はあるけど。これはなんの絵だ? 羽?
んー。なんかもっとわかりやすいのあればいいんだけど……
おっと、誰か出て来たぞ。
『何故かしら? ヒロちゃんは女の子を寄せ付けるフラグでもあるのかしら?』
「あ、そういや職業あったな。替えとこうか、なんかプラス補正有りそうだし」
『そういや普通にあったわね。フラグ建築士』
お、何か出て来たぞ? えーっとここにこの時間に辿りつけってことか? 時間的に少女の後を追う感じになるみたいだけど。
「どうしたダーリン? そちらはまた路地裏だぞ?」
『女の子のお尻を追うんでしょ。さすがエロフラグ建築士ね』
エロは付いてないからね。
っと、時間が少ないな。ちょっと駆け足で向うべきか。
少女は何か重そうな長いモノを両手で抱きしめながら歩いてた。
その前方に、何かが現れる。
「ボーッ!」
「ひゃっ!? 何っ!?」
「ボーっ」
あ、なんか見覚えのあるタイツ共だ。
「アレはアルセーヌではないぞダーリン。別の組織だ」
名前:ライザー・スコット
種族:強化人間(洗脳) クラス:戦闘員
二つ名:秘密結社ネアンデール戦闘員
Lv:10
HP:210/210
MP:22/22
TP:82/82
GP:5/5
状態:普通
技スキル:
得意武器・棒Lv2: 棒系武具を持つことで攻撃力が上がります。
棒術Lv2: 棒系の攻撃スキルを覚えます。
スタン・ロッド: 加速する飛び込みキックを放つ。
組織忠誠: 洗脳により特定組織幹部の命令に忠実になる。
言語異常: 洗脳の関係で言語が「ボー」に統一される。
強化人間: 通常の人間の数倍の能力を手に入れます。
おお、アルセーヌ戦闘員より強い!?
そしてなぜか全ての能力が見えちゃった。
良いのかな? まぁいっか。
「テケテケさん!」
『あいよーっ』
テケテケさんが霊体状態で少女の前に躍り出て、襲いかかろうとした戦闘員を前にして実体化。
鎌で薙ぎ散らそうとしたものの、胴体で攻撃が止まる。
どうやらこいつらも結構頑丈らしい。
「な、なに!?」
「君、こっちだ。急いで!」
「へ? あ、はいっ」
女の子は俺の声に反応してこちらに駆け寄ってくる。
狭い路地なので人一人通れるかどうかって道だ。テケテケさんの鎌も扱いづらそうである。
近くに水もないし、手伝おうにも手伝えないな。
「テケテケさん、撤退。女の子連れて先に行くよ!」
「りょうかーいっ」
「稲荷さん、補助お願い」
「まかせよっ」
テケテケさんの速度を上げてもらい、俺達は撤退する。
路地裏から脱出して裏鍛冶屋通りへと戻ってくると、とりあえず一息。
この辺りなら俺も戦闘に参加できそうだ。
「あ、あの、ありがとうございます」
「気にすんな。丁度襲われてるの見掛けたから助けただけだよ」
「良く言うなこやつ……」
稲荷さんお黙り。
「あ、あの、上半身だけの女の人は!? だ、大丈夫なのですか?」
「ああ、テケテケさんなら、ほら、君の後ろに」
「へ? きゃああああああああああああああああああああああ!?」
「ケケケケケケ、良い反応」
「こらテケテケさん脅かさない」
「めーんご。でもあいつ等追って来る気配無いわね」
「恐らく侵略地域のせいだろうこちら側はアルセーヌの管轄なのだ」
あ、そんな地域別なの秘密結社さん。
つまり、この辺りにはあいつらこないのか。おびき寄せて倒そうと思ったのに、残念。
「ど、どうしよう、これ。届けなきゃいけないのに……」
女の子が困ったように告げる。
手に持っているのはどうやら鞘に入った大剣のようだ。
トゥーハンデッドソードという奴だろう。
「遠回りじゃダメなのか? そっち側の鍛冶屋街からとか」
「えっと、そっちは人間さん用ですよね? 私達の顧客は基本人外なので……」
マジか!?
「えーっと。君の鍛冶屋は人外専用なのかな?」
「え? いえ、人間さんでも打ちますよ? ただお父さんは気に入った人にしか打ってくれないので、滅多に居ませんけど」
なるほど。
「ちなみに、これで杖を作ってとか、打てるかな?」
「わっ、ユニコーンの角じゃないですか。凄い、これ生きてるユニコーンから貰った奴ですよね」
「なんかユニコーンロッドとか造れるとか?」
「杖に剣に槍に、いろんなモノに使えますよ、ウチでもそう扱わない珍しいモノですし、お父さん喜んで引き受けるかもっ」
おお、マジか、これは幸先がいいな。




