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812.黄泉の国より3

【ほぅ、アムリタを持っているのか】


「ええ。これで何とかなりますか?」


【エリクサーも欲しいところだな。しかし体が腐り落ちることは無くなるか】


 エリクサーか。とりあえずハナコさんに連絡してどっかで手に入らないか皆と相談しておいてもらおう。

 天狗の軟膏とかじゃダメかなぁ?

 あ、そうだ。UFOがあるんだし、確か蘇生カプセルとかあったよな。エリクサーの代わりできるんじゃね?


「んし、朱莉ちゃんの復帰が可能みたいだし、俺らはそろそろ黄泉の国から撤退するっす」


【早すぎないか? もっとゆっくりしていくがよい。ほれ、茶菓子も用意した。泊っていきゃれ】


「いやー、黄泉の食物食べたら黄泉の住人になるじゃないっすか。帰るっす」


 うん、これ多分追われるフラグだわ。


【いいや、逃がさん。せっかくの客だ。そのまま取り込んでくれようぞ】


「だから嫌だって言ってんでしょ!? ターボババァ、逃げるぞ!」


「任せんしゃい!」


 俺は朱莉を背中に背負い、ババァに負ぶさった。


「ひょほほ、行くぞい!!」


 ぬおぉ!? すっげぇGが!?

 重力がやべぇ!?

 ほぼ一瞬でトップスピード。ババァがスプリンター走りで駆け抜ける。


【ひえぇ!? なにこれぇ!?】


「朱莉ちゃんしっかり捕まってて!」


 空に向けて光魔法を打ち放つ。

 これが合図だ。

 皆もすぐさま逃走を開始してくれているだろう。


「ふっひょぉぉぉぉ!」


 ターボババァが階段を駆け下りる。

 空中神殿となっているイザナミ神殿を一気に抜け、黄泉の住人が動き出す町中をババァが走る。


【ま、てぇ!!】


【生者を逃がすな! 予母都志許売ヨモツシコメ共、奴らを捉え黄泉の住人としてしまえ!!】


 うおぉ!? 四つん這いの貞子みたいな服装の女性がブリッジしながら駆けてくる!?

 しかも何人いるの!? 怖いよアレ!? アレが黄泉醜女って奴か!


【兵士ども、捕らえよ!】


 前方を骸骨兵とゾンビ兵が塞ごうとする。

 しかしババァは華麗なドリフトで潜り抜け、よっ、はっ、と盆踊りでも踊るように翻弄していく。


【老婆、速えぇ!?】


「ぬほほほほ、愉快愉快! オレの足には追いつけんわい!」


「ちょ、追いついてる! 追いついてきてるよ黄泉醜女たち!」


「嘘じゃろぉ!? 今百二十キロ出とるんじゃぞ!? しかもブリッジしながら四足走法じゃとぉ!?」


 あいつらの方が速いんだけど!? あの姿で迫ってくるの恐怖しかねぇ!!

 ええい仕方ない。

 購買で買ったつる草を喰らえぃ!


「すっげ。一気に葡萄畑になった!?」


 普通に二束三文のつる草だったんだけどな。

 当然の如くシコメさん方はつる草から派生した葡萄に夢中。

 皆揃って葡萄畑に成り始めた葡萄を食べ始める。

 うっわ、房ごと食ってる!?


 そりゃ葡萄畑も速攻で食いつくされるわな。

 しかし、十分すぎる時間を稼げた。

 

「のほほほほ、見てみぃ坊、エルエさんじゃったか、お前さんを待っとったようじゃな」


 バーニア吹かせ、宙空に浮かんでいるエルエさん。そしてその両脇に抱えられた二匹の骨。

 ヘンリエッタさんとその弟子が何とも言えない表情……もはや骸骨なので表情すらわからんわ。


「薙ぎ払いマす」


「あんま派手にやるんじゃないぞー。洞窟壊さないように」


 レーザーがぴゅいんっと走り、傍に居た黄泉兵たちを地面ごと纏めて爆散させていく。

 あのレーザーえげつないな。俺のレーザー銃はぴちゅんするだけで爆散はないんだよなぁ。ちょっと憧れるぜ。


「後退しなガら殿を務めマす」


「適当なところで切り上げてくれよ。エルエさん捕まったら本末転倒だからな」


「了」


 俺たちの頭上を撤退しながら迫る敵に迫撃砲を撃ち始めるエルエさん。

 全弾打ち尽くすつもりだろう。

 様々な銃火器で黄泉兵たちを撃破していく。

 ただ、死者の国である黄泉の中では、たとえどれほど死のうとも、黄泉兵はすぐに復活して追撃に移ってくる。


 埒が明かないとはこのことで、これ以上はエルエさんが捕まりそう、と判断した俺は櫛を投げ捨てる。


「エルエさん完全撤退!」


「了! 疾走します!」


 俺たちを優に飛び越え、亜音速で空気の壁に当たるギリギリを爆走していくエルエさん。骨たちを爆散させないように気を使ってくれているようだ。

 そして俺たちの背後で筍の群れがぽこぽこと生まれていく。


「ババァ、俺らが最後尾だ。あと手持ちはもうない」


「ババァの足次第だねぇ。燃えて来たわい」


 さらに加速するババァ。

 ブリッジしながら迫りくるシコメたち。

 手に手に黄泉の食物を持って襲い掛かってくる黄泉兵。

 普通の死霊たちも俺たちを捕まえて黄泉食を食べさせようと群がってくるが、誰も彼もババァの速度に追いつけない。


「オレの足にゃぁ誰も追いつけさせねぇべさ!」


 なんか二百キロくらいでてないか? 風の抵抗がものすげぇんですが!? 

 もう黄泉比良坂駆け抜けて遠くに光が見えてるぞ!?

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― 新着の感想 ―
カッコいいぜ!ターボババァ!!
勇者も少し残念そうだったけど、準優勝でも欲しいアイテムが貰えるとおっちゃんに教えられて泣いて喜んでいた。 でも...てことは一位の芽里さんも一本、 『エリクサーにアムリタ。私達が貰ってるアイテムの一部…
エリクサー 267の時、コトリさんから貰ったでしょう 420の時、シルビアのお父さんに使いたいけど、止められた 816のここ、どこに使った? それとも忘れた? 遊園地デスゲームの時、ガスマスク、酸素ボ…
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