806.容疑者Mの証言
「私のせいじゃないっ」
それがそいつの主張だった。
何を聞いても、何を言っても一貫して自分のせいじゃない、の一点張りだ。
あの騒ぎの後、兵士さん姿の猫たちがにゃーにゃーとやってきて、暴れるマイネさんを取り押さえていた。
ドリームランド不法入国でタイーホらしい。
なおも暴れようとした彼女に渾身の猫パンチ。
にゃっと頬を叩かれると、なぜかすごく癒された顔をして倒れ込んでしまった。
マイネさん、猫好きなのか。
んで、おとなしくなった間にグルグル巻きにされて、ようやく一息。
猫たちの中からネコ将軍と呼ばれた猫がやってきて、マイネさんに尋問を始めるが、私のせいじゃないしか言わないので尋問にならない。
埒が明かないと将軍は俺たちに向き直り、周辺の話を聞くことにしたらしい。
んで、俺はほぼ関係ないことが証明され、未知なるモノさんたちも無罪が確定した。
深き眠りの門を無理矢理突破するという前代未聞の大問題に、猫たちがにゃーにゃー叫ぶ中、クトゥグアさんの元へやって来たイーリディームさんたちだっけ? なんか凄くヤバそうな容姿の凍結生物がクトゥグアさんに挨拶を行い去っていく。
将軍がクトゥグアさんに大事にならずにすんだ、と礼を言っていたが、さてマイネさんどうなるかな?
さすがにこれは俺としてもフォローできそうにないからなぁ。
先ほど未知なるモノさんが言ってた話を聞いた将軍は、ふーむ、と腕を組んで唸る。
うん、わかるよ。僕らの知り合いだからってことで許すには度を越えてるから、いくら彼女だけ不許可にされたからこんなことをしでかしたと言ってもお咎め無しは出来ないってことだよね。
「ふーむ。こやつは魔法少女だにゃ?」
「えーっと、マンホール少女ですね」
お、リアル宇宙猫。
というか語尾にゃがつくのか。
「ん? いや、にゃがつくのではなく夢見る人たちが語尾ににゃを付けると喜ぶのでウルタールの猫は基本語尾ににゃをつけてるにゃ」
まさかのプレイヤーのせいだったのか。
「それで、この魔法少女? マンホール? うん?」
「わかりにくいのも仕方ない。彼女はステッキの代わりにマンホールを片手に戦う魔法少女っぽい何かなんだ」
「む、そうか。わからないのか。まぁそれならそれで仕方がない。ドリームランド内では勝手もわからないだろうしな。さて、彼女としてはお前たちとドリームランドを旅したい。しかし自分だけ精神的問題でダメだったから無理に突破、出くわした化け物相手に魔法使ったら大炎上した。うん。つまり、だ。彼女には常識が欠落してるんだにゃ」
常識欠落!? そうだったのかマイネさん!?
「其方への罰は、これより一週間、現実世界に戻ることなくドリームランドのカダテロンにて魔法学園に通って貰う」
「へ?」
「そこでこのドリームランドでやっていい事とやってはいけないことを習うこと。しっかりと常識を覚えて貰いたいにゃ」
やべぇ、寛大すぎる罰だ。
「返事は!」
「あ、はい。それで……」
マイネさんは猫の兵たちに護送されていった。
カダテロンとか言う場所に向かって常識を習うんだと。
一応ログアウトは出来るけど、ログアウトした場合、次の開始地点はこのドリームランド内になるようだ。
がんばれ放火犯。
「っていうか、あのネコの兵士、どっから来たんだ?」
「多分ウルタールでしょうけど、結構遠いはずだぞ。よくもまぁここまで来たなぁ」
本来なら森抜けてスカイ河ってところを下った先にあるのがウルタールのはずなんだが、ここまで出張って来たのはなんでだろうな?
ん? なんか気持ち悪い生物が全員乗った箱を持ち上げたな。
あれってなん……鑑定したらビヤーキーだって?
アレが噂の外の神々のデリバリーシステムか。
箱を用意しとけばソレに乗って大人数がビヤーキーに運んで貰える、と。
気球の乗る場所みたいな形だから多少揺れても落っこちることはないだろ。
猫たちの頭が見えるくらいだからマイネさんは落下しそうだけど。
「マイネの奴、真人間に戻れっかな?」
「そもそも戻る以前にあの人真人間だっけ?」
俺と未知なるモノさんは顔を見合わせる。
真人間は、試験失敗で強行突破しようとはしないし、森を焼き尽くしたりはしないはずだ。
うん、真人間には戻れない。そもそも真人間ではなかったから戻る場所がないのだ。
可能なら真人間に矯正する、という言葉だろうか?
できると、いいなぁ。
「ところで、何でお前は外道なのに普通に突破できてんだ?」
「ははは、何を言ってるんだい未知なるモノさん。俺ほど真人間はいないだろ? ナシュトさんもカマン=ターさんも俺の真人間さにひれ伏してこうして許可証をくれたんだからな」
「いや、真人間さでひれ伏すとか何したんだよお前」
「精神性ならダーリン不許可だけど外の神引き連れてたから許可するってさー」
あー、ティリティさんなんで言っちゃうの!?




