805.ドリームランド入場試験5
「……来ないな」
ずっと待ってるけど一向に誰も来ません。
おかしいな。ここに来るんじゃねぇの?
案内人君からの返答もないし。とりあえず他の人にも連絡してみるか。
取り合えず主要なメンツに連絡を取ってみる。
―― おおヒロキか、どうした? ――
どうした、じゃないよ未知なるモノさん。皆試験どうなったの?
俺ずっと集合イデアで待ってるけど誰も来ないんだけど?
―― 集合イデア? 何言ってんだヒロキ? 夢の扉開いたら皆森に着くだろ? ――
森? 何言ってんの? ドア開いたら集合イデアに……そういやドリームランドの出発地点は魔法の森に決まってんだよな。
あの、ティリティさん?
「あー、多分あの深き眠りの門開いたら出る場所だね」
降りるの面倒だからってドア作ってたから集合イデアに来たけど、もしかしてこれって、正規で出る場所じゃないのでは?
「こっからだとどういくの?」
「……さぁ?」
―― セレファイスに向かうならあちらだ。そこから戻った方がいいのではないか? ――
セレファイス?
「交易の中心都市だな。時間が存在しない国だ」
何それ、夢の国か? あ、ドリームランド内だから夢の国だった。
でも別の国に出てそこからってなると遠いな。
これは一度戻って扉開いていく方がよさそうだ。
夢の守護者とは一旦別れ、俺たちは入って来たドアから炎の神殿へと戻る。
戻ってくるとナシュトさんたちが何だ早かったなとか言ってきたので、門の方に移動することを告げると、なぜか呆れられた。
なっがい階段を皆で降りる。
七百段とか結構あったけれど、仲間と一緒に話しながらだったので結構時間の経過を感じる前に深き眠りの門へと辿り着けた。
門、めちゃくちゃデカいな。
十メートルくらいあるんじゃないか?
人一人の門にしてはデカすぎる。これ絶対ヤバい生物が入り込むための門だろ。
扉を両手で押す。
お、意外と軽いな。俺の力で開くようだ。
ま、そうか。許可証があるのに扉が開けないようではドリームランドいけないだろうしな。
開かれた扉の先。
外の世界が視界に飛び込んで……あれ? 門どこ行った!?
「ほぅ、正規に来たことはなかったが、ここに出るのか?」
「門、閉じたなァ。帰りどーすんだ?」
「確か夢見る人たちがイデアに戻りたいと念じれば戻れたはずだ。ヒロキどうだ?」
「ああうん。多分コンフィグ画面だな。移動バーのところに自己イデアってあるし」
すぐに移動できるようだ。つまりどこでもログアウトし放題って奴だな。
フルダイブゲームの中でフルダイブゲームをやってる気分だ。
「えーっと未知なるモノさんたちは皆合流して森の探索してるって言ってたから……」
「あっちの森、燃えてない?」
「……どこにいるかわかりやすーい、絶対マイネさんいるな」
というか、始まりの森燃やすなよ!?
「ふむ、我が炎程ではないがなかなかいい炎だ。人間もやるものだな」
クトゥグアさんが凄く嬉しそうだ。あの人もし俺がクトゥグアさんテイムしてなかったらクトゥグアさんテイムしそうだな。マンホール火計系少女と炎の化身クトゥグアさんの掛け合わせとかドリームランドが大炎上してまうわ。
「あ、マジでいた」
炎に吸い寄せられるように近づいていくと、ちょうど未知なるモノさんが呆れた顔で炎に彩られた森を見上げているところだった。
ここも森の中だから火に巻かれるんじゃないか?
「お、来たかヒロキ」
「何やらかしたんです?」
「ああうん、精神性がダメだってマイネはドリームランド来れなかったらしい。怒り狂った彼女はナシュトさんたちを脅して門の前まで来ると無理矢理開かせてこっちに来たそうだ」
無許可の重罪犯だ!?
「他のメンバーも数人来たけど何名かはダメだったらしい。案内人君も来てないから今回はダメだったのかもな」
「そっか、他のメンバーは?」
「これに巻き込まれる前にログアウト、いや戻ってったよ」
「マジすかー」
「おれもそろそろ戻ろうと思うんだ。多分明日には炎も鎮火してるだろうし」
どうだろう? 三日三晩燃え盛ってるんじゃねーかな。
くねくねさん、これ鎮火出来る?
「んー、風系のスキル使っても鎮火は無理かなぁ。炎上ならいけそうだけど」
これ以上燃料投下してどーすんだ。
「ウチの眷属に連絡したから問題はない、すぐに鎮火するだろう」
クトゥグアさんの眷属? それ大丈夫なのか?
逆に燃えない? 魔法の森全焼しない?
「お、来た来た」
ん? 何だあれ?
「眷属のイーリディームだ。冷気属性だから冷やすのにはちょうどいいだろう?」
あの、炎燃えたまま凍ってるんだけど? 何あれ? 森凍ってくよ。
一気に暑さが寒さに早変わり。周囲迄凍てつき始めた俺はこのままではヤバいことを理解した。
ストップ、クトゥグアさんストォップ!!




