803.ドリームランド入場試験3
「次は実技だ。えーっと皆さんも受けるんで?」
「当然だろう?」
「何か問題でも?」
「戦力過多じゃないかなー?」
皆やる気だ。
というかもう殺る気だ。
「実技は二つ。敵との戦闘、それから時間内に目的地に辿り着く能力を見ようと思う」
言うが早いか、周辺が洞窟から電子空間へと切り替わる。
これ、固有結界みたいな奴か?
「まずは強敵撃破。一人づつ戦いを行って貰います。んで、アレが敵です」
「ギーァね?」
夢の守護者じゃん。アレ倒していいの? この空間のみの存在? しかもだいぶ弱いの?
なら、いいか。
早速俺の番が回って来たのでさっさと戦う。
動きは速いな。でも、反応できない感じではない。
近づかれる前に速射だな。
「えぇ、そんな連射ある!?」
「あー、すまない、もう一度、今度は遠距離無しで頼む」
マジかよ。まぁいいけど。
開始と同時に幻惑魔法。
本体の幻影を残して俺は回り込む。
ギーァ成体が幻影へと向かっていくのを見届け、俺は背後からヤクザキック。
驚くギーァ成体が動くより先に地面に縫い付け、接射からのゼロ距離連射。
「ち、血も涙もねぇ……」
「敵認識した相手には容赦するなって教わってるんで」
「なるほど。ちなみにその個体に何か思いがあるようだけど?」
「個体っつーか種族ですね。前に直接会ったんで。メルアド交換もしてる友人です」
そこ、友人相手でも敵なら容赦ないのか、本当に外道だ。とか言わない。
実技テストは勝てばいいんだろ? 精神性は問題ない、あれ、問題あるのか?
へへ、アニキ、さっきのは冗談っすよ。倒さなきゃいけねぇって言われたからいやいや仕方なく、辛い思いを必死に隠しながら戦ったんっす。
「今更遅いよ、うん」
「君の精神性だけならドリームランドへの許可は絶対に出せないんだけどなぁ」
おい、嘘だろ!?
「ま、今回は総合判断だからね。次の実技まで待っててくれ」
それからしばし、他のメンバーによる実技テストが開始される。
と言ってもすでにドリームランドで生活できてる化け物ぞろい、夢の守護者といっても弱体化済みの生物相手に後れを取る訳もなし。
ギーァですら楽々八つ裂きにして攻略していらっしゃった。
「うん。過剰戦力」
「はは、分かり切った結果だね」
「次はこっちのステージだ。夢の守護者たちが闊歩してるけど彼らにダメージは入らない仕様になってる。あの奥の方に見えるゴール地点まで辿り着くのが今回の試験だ」
「当然辿り着くまでの点数もあるからね。ただ辿り着けばいいってもんじゃないぞ」
それはつまり、ダメージ覚悟で直進しても点数は低いってことかな?
となると……
「では、試験開始!」
開始と共に動かず、ひとまず周囲の状況を把握。
どうやら動いている夢の守護者たちは移動範囲があるようだ。
パターン化しているようなので、彼らに発見されることなく移動できるルートがあることに気付く。
なるほど、こういうのゲームで何度かやったわ。
状況を把握しつつ、少しずつ攻略を行っていく。
意外と簡単といえば簡単で、無茶さえしなければ敵と戦うこともなく切り抜けられるようだ。
時間が押してくるので最後の方は焦りも敵に回るが、俺はそこまで時間を気にせずゴール地点まで辿り着く。
基本普通に向かえばクリアできるようになってるはずだ。
つまりは落ち着いて移動すれば時間内に十分辿り着けるのだ。
「おー、随分と落ち着いてゴールしたね。もうちょっと焦るかと思ったけど」
「スニーキングミッションは他のゲームで結構やってるからな。段ボールでの潜入ならお手の物だぜ」
「段ボール? まぁいいや。じゃあ他の人が終るまでそこで休憩しておいてくれ」
それからしばし、外の神たちがやらかすのを温かく見守っておく。
テインさんとか角から角に移動して一瞬でゴール辿り着くという卑怯臭い移動してたし、マイノグーラさんは面倒くさい、と歩いて直進。襲い掛かって来た夢の守護者たちを撃退しつつゴール。
ニャルさんは影に紛れて移動し、誰にも悟られることなく一直線にゴール。
ティリティさんはダメだって言われたのに夢の守護者たちをブラックホールに吸い込んで誰もいなくなったステージを余裕で歩く、だからそれアウトだってば。
ギーァなんて普通に歩いてたけど他の夢の守護者たちが仲間と判断したのか攻撃すら受けずにゴールしてたし。
くねくねさんなんかもう最初から全力疾走して気付かれる前にゴールまで走り切っていた。
「超人しかいねぇ……」
「やっぱ皆テスト受ける意味なくね? 冷やかしだよな」
なんか、ごめんなさい。
俺は悪くはないんだが、ナシュトとカマン=ターには誠心誠意謝った方がイイ、そんな気がしたので謝る俺だった。




