2025あけおめ新春SP
「なんだってぇーっ!?」
その日、運営からのメールを見た俺は思わず叫んでいた。
慌てて皆の集まっている居間へと駆けつけた。
「皆見てくれ! 大変だ!」
「へ、変態だ――――っ!!」
は? なん……おおお!? なんでこんな装備に!?
あ、そうか、昨日大晦日だったからハナコさん笑わす狙いでバニーガール服着てたんだった。
「俺の姿はどうでもよろし。ほれ、見ろ!」
『ええと、元旦特別イベント?』
そう、本日一日限定イベント。正確に言えば一日を三日に訳がゲーム世界では三日間だけども。
正月限定エネミーを撃破することでお正月特別交換コインが手に入るのである。
しかもプレイヤーだけじゃなくNPCたちが倒しても貰えるのだとか。
これはもう、やるっきゃねぇよな。
「とりあえず正月内装全部揃える。後欲しいのがあれば余ったコインで全部買う。そのために、皆で各地に散らばってひたすらコイン集めだ! 明日コイン交換所が開くから今日はとことん狩り尽くすぜ!!」
「お、おおぅ。いつになくやる気に満ちてんなヒロキの奴」
「分かってないなマイノグーラさん、これを見ろ! 正月専用ハナコさん人形が交換対象になってんだぞ! 手に入れるしかねぇだろ!!」
皆、即座に納得したようだ。
ハナコさん人形はすぐに手に入る程度のコインで入手できるけど、ついでだから他のも全部総ざらいするくらいの勢いでコインを手に入れたい。それを可能にするのが、ハナコさんたちテイムキャラをいろいろな場所に送り込んでひたすらに狩って来てもらう総動員戦法なのである。
「撃破対象はカガミモチン、カドマツン、クマデオウの三体だ。それぞれ出現位置は違う、そして特殊なアイテムもついでに落としてくれるんだ。ただし、めっちゃくちゃドロ率が悪い。俺はドロップ品の入手を最優先するから皆はとにかく数をこなしてコイン集めを頼みたい」
「オーケー、なんか楽しそうだからやるとしようか」
こうして、俺たちは正月特別イベントを開始するのだった。
……
…………
……………………
弱い。
正直に言おう、もっと手ごたえある敵かと思ってたら十羽一絡げの雑魚でした。
鏡餅に手足が生えた生物のカガミモチン。推定レベル4。
どう考えても瞬殺だ。
ちょっと強めの敵カドマツン。
門松に手足が生えたような生物。推定レベル10。
当然瞬殺でござった。
ならばと戦ったクマデオウ。
王とか名前あるんだから強いだろ? 推定レベル30。
俺のレベル? 250超えてんだ。つまり瞬殺でさぁ。
しかも俺の強運が普通に仕事しやがって最初の一発で全てのレアアイテム揃ったよ。
鏡餅ヘッドに門松の盾、特殊武器の熊手。
全部揃えると正月装備一式として正月のみステータス三倍強化というえげつないけど使いどころが難しい装備となるのだ。
最初に揃えたせいでもうドロ率的にドロップしないと分かっている中ひたすら倒さないといけないというのは逆に苦行なのだと俺は知った。
結果的に、全てのレアアイテムが三つづつ手に入ってイベントが終るまで、俺はひたすら戦闘を続けていた。
ふふ、やべぇ、心が死ぬ。
最後の方完全に作業になってていかに効率よく屠るかだけを考えて、すらいなかったからな。
とにかく何も考えずに敵潰してたら終わった、ような状態だった。
おそらく他のプレイヤーも同じような状態だっただろう。
最終的に近場で戦ってたプレイヤーたちは全員イベント終了の合図を聞いてはっと我に返ったように呆然と立ち尽くしていたからな。俺もだけど。
……
…………
……………………
「と、いうわけで、本日全員の集めたコインを持ち寄ってアイテムを貰おうと思う。コイン回収しまーっす」
全員が集まった居間、そこには死屍累々の仲間たち。
気のせいかテケテケさんやテインさんまで口から魂抜け出てるような顔で突っ伏している。
皆頑張ってくれたようで嬉しい。
集まったコインで正月内装を全て取る。
それから正月用のプレイヤー衣装とか、イベント用のアイテム、羽子板セットとか凧あげセットとか雑煮とか、一般的な回復アイテムとかを貰えるだけ貰っていくと……大量のコインが余った。
そりゃそうか、基本六人パーティーとかで必死に回れば全部貰えるだけのアイテム量なのだろうし、この人数で狩り尽くす勢いでやらかせばコインが大量に余るわな。と言ってもお金に換金しようにもお金はほぼMAX状態だしなぁ。コインとして保管するしかないか。多分もう使い道もないとは思うけど。
そのうちバイキン先生のところに持ってって素材として錬金術に使って貰うかな?
とはいえ、大量のコインだし、逆にいらん持って帰れとか言われるかもしれないな。
さて、迎春だし、内装をそれっぽく整えて全員分の雑煮を設置。んじゃー皆、一旦起きて。
はい、せーのっ。
「明けましておめでとうっ!」
これからもよろしくな、ハナコさん、あとついでの皆。




