799.女子中学校七不思議10
マジかよ。
七不思議の二つがデマ?
いや、生徒たちが不思議だと思っているから七不思議ではあるのか。
というか、この人体模型、錬金術で作った? 教師の一人が錬金術師とかそっちの方が不思議だろ。
十分すぎるほどに七不思議だこいつら。
「てか先生さん、ただの錬金術師だってなら、あのステーキってどこで買ったの?」
「あれかい? 最近知り合ったマタギのお爺さんがたまにくれるんだよ。ええと、(V)o¥o(V)さんという方だったかな?」
普通にプレイヤーじゃねぇか! 何してんだあのマタギ!?
「今日のステーキはボアステーキだからね。普通の牛肉とは違うから味見してもこれは牛じゃない、と思ったはずだよ」
「それ、普通に人肉と間違えて恐怖する奴じゃないすか。あんた本当に七不思議の一員だよ。なんで普通の先生なのにハナコさんたちと同格なのさ!?」
「それは僕に言われてもねぇ」
そうなんだけど、なんなんだよこんなどう考えても地雷先生なのに、錬金術師とか有能そうなんだけど。しかも真相からしてただの優しい先生っぽい? し。
「あれ? でもヒロキさん、僕らまだ七巡り達成してないですよね?」
「そういやそうだな。なんでだ? あ、そっか、最初の七不思議に閉じ込められたままだ。地下の放送室行こうぜ!」
「そうでした! 突然放送される放送室。チャイムを聞くと還れなくなる、でしたっけ」
「でも死んじまったキョウヤは戻ってるんだよな?」
「……あー、ヒツギ、なんかキョウヤとの連絡付かないんだけど?」
「は?」
「ちょっと待ち、アカズさんも死んでおったよな。ヒロキ、これは結構不味い状況ではないか?」
「え? まさか還ってこれないって復帰不可状態ってこと? さすがにそりゃねぇだろ?」
いやいや、ソレはさすがに不味いだろ。アカズさんが復帰できないとかハナコさんにとっての妹分が消失? ハナコさんが嘆き悲しんでしまう! そんなこと、絶対にさせられねぇ!!
『確かに、アカズが戻ってこれないのはちょっと嫌ね。なんとか戻ってきてほしいところだけど……』
俺の幸運力よ、全力を尽くしてアカズさんを戻してくれ!
「ぎょーぅ」
え、そんなことより放送室行こうって? いや、そんなことにできるほど大したことない話じゃないだろ? え、まずは解除してみてから考えよう? まあ確かに言われてみれば。
「そうだな。まずは放送室行ってみようか」
ベーヒアルに促され、俺たちは放送室を目指す。
敵らしい敵は存在していないので浮遊霊殴り飛ばすくらいですぐに辿り着いた。
「ありゃ、開かんな」
「ドアが開かないならこじ開ければいいじゃないってな」
と、ラズナがスコップをドアの隙間に差し込み思いきり持ち手を蹴りつける。
ばきゃっと音がしてドアが弾け飛んだ。
「意外となんとかなったな」
「だろ?」
放送室内には誰もいない。
ただ、チャイムがオンの状態になっているくらいだろうか?
「ふむ。放送室の怪か。上手く解除できればいいのだけどね」
うお!? バイキン先生付いてきてたのか!?
「もしかして放送設備の使い方わかります?」
「すまないね、僕は専門外だよ」
しまったな、こういう時にレムさんがいればよかったんだけど。
「誰か使用可能な奴いるか?」
「んー、ダメっぽい。皆使い方がわからないって」
「おいちゃんもさすがにこういうんは苦手やな」
『レムさんかスレイさん辺りがいればよかったわね』
「とりあえずチャイムが鳴った後だから、終わりのチャイムを鳴らせばいいのか?」
「わかるのヒロキ?」
「ふ、俺は俺の幸運を信じる! これだ!」
……
…………
……………………
「何も、起らねぇんだが?」
「いや、どうやら校外放送してるみたいだ。ここでの会話が漏れ聞こえているみたいだよ」
そうなのか。というかバイキン先生耳もいいのか。
ともかく校外にチャイムを鳴らせばクリアじゃないか?
えーっとどれだ?
瞳を閉じて、感覚に全てをゆだねる。
どこだ? どこを押せばいい?
やがて、暗闇の向こうに、一つの光が見えた、気がした。
「これだ!」
ボタンを押した。
歌が流れた。
うん、これ、遠き山に日が落ちて、だね。下校音楽だ。
「これは驚いた。正解じゃないかな?」
「マジで?」
「あ、連絡付いた。大丈夫だったのキョウヤ、え、だいぶ前から何度も掛けてた? 電話繋がらなかったのこっちのせい?」
なるほど、女子中学校側が隔離空間になってたせいで復帰したキョウヤと連絡取れなかったのか。
よかった、これならアカズさんは復活してくれてるはずだ。
「ハナコさん、多分アカズさん戻ってるはずだよ」
『ええ、そう、みたい。今連絡付いたわ』
おおう、すでに連絡済みか。
さすがハナコさん。連絡が速い。さすハナ。




