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798.女子中学校七不思議9

 ソレは昏い部屋の中に居た。

 シンとした静寂の中、ガラリと扉が開かれる。

 誰かが入って来た。ソレは静かにほくそ笑む。


 ああ、はやく入れ替わりたい。

 自分の体をもう一度手に入れたい。

 自由に外を歩き回りたい。

 だから……


 お前が代わりに、骨格標本になるんだよっ!!

 ソレは凶悪な笑みを浮かべて、一人きりやって来た哀れな贄へと襲い掛かる。

 抱き着いて背中に腕を突き入れ首根っこから骸骨を取り出……取り出……


「いやーん」

 

 鎧から引っ張り出された骨。

 すると鎧が内部を失い崩れ去る。

 あの、体……は?


「ごきげんよう骨格標本さん。わたくし、もとから骨ですのよ。おーっほっほっほっほ」


 ソレは絶句する。

 あまりにも想定外の事態にただただ茫然と見つめる。

 目の前のヘンリエッタさんは骨なのに高笑いだ。

 最近思うんだけど、あの骨からどうやって声出してんだろうね?


 正体がバレたと焦る骨格標本、そんな彼女に飛びつき寝技で決めに入るヘンリエッタさん。

 骨の癖に関節技得意なんだよなぁあの人。

 なんで骸骨に腕挫十字固やってんだ?


「ほーら締めますわよー」

 

 タップしてるぞ。器用な骨だな。

 骨対骨の戦いは、ヘンリエッタさんに軍配が上がったようだ。

 というか、両方骸骨だからどっちがどっちかわからなくなるな。

 帰る時入れ替わってないか確認しとかないと。

 ヘンリエッタさんは喋る骸骨。喋る骸骨だ。


 しばしの関節技で完全敗北した骨格標本さんが自分の居場所へと戻っていく。


「まぁそうですの。それは大変でしたわね。でも人のモノを奪うのはどうかと思いますわ。わたくしをみてくださいまし、骨でも生活はできますし、こうして仲間もできました。会話も出来るようになりましたし、骸骨生でも悪くはありませんわよ」


 いや、骸骨の時点で生も何もないんだけどな。

 ヘンリエッタさん生き返す方法がまだ見当たらないので蘇生してないだけで。ああでも、魂は手に入ってるからいくつか与えれば受肉した状態で復活はワンチャンあり得るのか?

 一応彼女の生還も考えておいた方がいいよなぁ。やっぱり骸骨人生を一生送り続けるのは可愛そうな気がするし。


「ええ。貴女だってできるわ。骸骨を極めたその先に向かいましょう!」


 なんかヘンリエッタさんが変な宗教始めたみたいになってる。

 骨格標本さんが片膝ついて祈り始めたぞ。

 なんだこの骸骨共。


「ヒロキ、こちらの方、お連れしてもよろしくて?」


「え、ああ、うん。どうぞ?」


 正直テイムする必要はないだろうけど、なんかヘンリエッタさんの舎弟が出来た感じだろうか?

 いや、娘だから舎妹? そんな漢字はないか。


「テイムは必要ないのか?」


「不要らしいですわ」


 さいですか。

 骸骨同士楽しそうで何よりです。

 骨格標本さんも他の誰かを犠牲にする気はもうない様子、二人で楽しそうに会話? 会話を始めている。

 カタカタ顎鳴らしてるだけに聞こえるけどね。


『こう?』


「そうですわ! 霊的存在の会話方法をマスターしましたわね」


 え、なんか凄い勢いで骸骨師弟の修行が完成し始めてる!?

 ってことはそのうちただの骨格標本が言葉喋るようになるのか。

 え、それはそれで怖くない?


「連れていく気かい?」


 不意に、理科室から出た俺たちの前に、白衣の男が立ち塞がる。

 両手を白衣のポケットに突っ込んだそいつは、まるで柳の下の幽霊みたいに、こちらを恨めしそうに睨みつけていた。


「僕の最高傑作を、連れていく気かい? この理科室に骨格標本がなくなることがどういうことか、理解できてるのかい?」


 バイキン先生……

 マジか、あんたが立ち塞がるのかよ。

 俺は周囲を確認する。

 ヘンリエッタさんが骨格標本さんの前に出て守るように手を広げていた。


 戦闘、不可避か。

 俺の覚悟に気付いたのか、他のメンバーもまた武器を構える。


「連れていくよ。悪いかな?」


「それは……」


 それは?


「悪くはないね。達者でね」


『はい、先生っ』


 あれ? なんか親し気?


「あのー、骨格標本さん、付かぬことをお聞きしますが、こちらの先生とのご関係は?」


『私を作った先生よ。錬金術師なの。私は骨型のホムンクルス』


 な、なんだってぇぇぇ!?

 え、女学生を夜な夜な攫って殺しまくってる鬼畜先生では!?


「いや、随分と酷い評価だね。残念だけどご期待には応えられないね。なにしろ僕は今まで一度たりとも殺しはしたことないのでね」


 じゃあ七不思議の噂は!?


「ん? 僕が七不思議? バイキン先生? まいったね。そんな噂があるのかい。この手袋は錬金術の失敗でね。対価に使ってしまったので骨しかないんだ。それに夜中まで残っているからそんな噂が出来てしまったみたいだね」


「じゃ、じゃあ骨格標本が夜中一人きりでいる誰かと入れ替わろうとしてくるっていう七不思議は?」


『なんですかそれぇ? 私はただ珍しい人が近くに来たからいたずらしてただけです』


 まさかの七不思議が二つもデマだった!?

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噂通りならヒロキが女子校にいる時点で襲いかかってきそう
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