797.女子中学校七不思議8
えぇと、この辺りだよな?
一階に降りた俺たちは、理科準備室へと向かっていた。
ここにバイキン先生なる者がいるらしい。
一応七不思議のスレでは、右手に茶色い手袋をしているトカゲみたいな先生らしい。
病的なやせ型で白衣を着た先生で、いつも夜中まで学校に居残っているんだとか。
自分にとって気に入らない生徒や、イジメを行う生徒を見つけると、連れ去ってしまうのだとか。
そして次の七不思議にも繋がるんだけど、理科室に置かれている人骨は本物で、バイキン先生に消された生徒の骨格標本なのだとか。
だから呪われていて、夜中一人でこれの前に来ると、入れ替わろうとしてくるそうだ。
入れ替わってしまうと自分の体から骨を抜かれ、骨格標本にされてしまうらしい。
代わりに骨格標本が体に入り、人格まで変わってしまうのだとか。
「おそらく戦闘になるな。アカズさんがいれば閉じ込めて瞬殺だったんだろうけど、皆、今回は死なないように立ち回ろう。命を大事に、だ」
「ヒロキさんにしては珍しい」
「それだけアカズさんの敗北が衝撃だったってことだろ。っし、スコップの準備は万全だ!」
「バイキン先生埋めるの? 手伝うよヒツギ!」
埋めるなよ。
「用意はいいな? 開くぞ」
理科準備室の扉をダイスケが思いきり開く。
うわ、マジでいるし。
薄暗い光だけが照らす室内で、何かを食べているバイキン先生。
って、こんなところでステーキだと!?
「おや? こんな夜更けにお客さんかな? 君たちは不審者かい? この学校は女子中学校だよ? 男性はまず入って来てはいけないんだけどね」
気付いたバイキン先生は食べるのを止めてこちらを向いて立ち上がる。
結構背が高いな。190くらいあるんじゃないか?
「う、確かに容姿だけでヤバさが伝わるな」
「何の情報もなく見ちゃうと悲鳴あげちゃうかも……」
ヒナギさんひでぇ。人を容姿で判断するのは悪いと思います。断固抗議だ。おっさんだって生きてんだぞー。
「そうやそうや!」
「人面犬、どうしたの?」
俺の心の声に同調したかのように同意した人面犬、突然そうやそうやと叫び出したのでアミノサンに怪訝な顔を向けられる。
「あれ? ヒロキはん今おっさんだって生きてんだ、みたいなこと言わんかった?」
「何言ってんだ? 頭大丈夫かおっさん」
「ワイの間違いやろうけども、酷ない!?」
今のは俺の考えに感応したのか?
このゲーム、絶対脳波から考えてること読み取られてるだろ。
なんか嫌だな、でもゲームは楽しいんだよなぁ。
「なぁおっさん、そのステーキって何の肉?」
「うん? これかい? 今日新鮮な肉が手に入ってね、いやぁ、最近肉の入りが多くて処理が大変なんだ。よかったら君たちも食べるかい? 肉はかなり余ってるんだ。ブロックであげるよ?」
普通に大ぐらいなだけで牛肉だといいなぁ。
鑑定は、さすがにしたくないな。アレが別の肉だった場合反応に困る。
「それで、君たちは何をしにこの学校に?」
「ああ。すみませんね。俺たち七不思議巡りしてまして、いろんな学校の七不思議を体験している最中なんです」
「ほぅ?」
「ここには夜中一人で居ると入れ替わろうとしてくる骸骨という不思議を求めてやってきました。ちょうど隣から音が聞こえたのでなんだろう、とこちらを開いたんです」
しれっと伝えると、バイキン先生はなるほど、と納得した顔をする。
「ではその不思議を体験したら帰るのかな?」
「多分七巡り達成するんで、帰れたら帰りますよ」
「そうか。なら後で放送室に寄るといいだろう。放送室は地下にあるんだ」
地下!?
何で放送室がそんな不便な場所に!?
「そうなんすか、情報ありがとうございます」
「うむ。礼儀正しい者には礼儀を持って、だな。うむ、皆が君のようならいいのだがね」
少し寂しそうに告げると、再びこちらに背を向けてステーキを食べ始める。
うん、放置しよう。下手に刺激しない方がよさそうだ。
俺たちは頷き合って理科準備室を後にする。
「さて、バイキン先生はこれでいいと思うんで、最後の不思議を体験しようか」
「つってもヒロキさんよ、下手に体験しちまうと入れ替わられる可能性もあるんじゃねぇの?」
「それに関しては最強の特攻キャラがいるからな。ヘンリエッタさん、君に決めた!」
「わたくしですの!?」
「ヘンリエッタさんなら奪うべき肉体ないからさ鎧でガチガチに固めておけば相手勘違いしそうだし」
「どうなっても知りませんわよ」
「最悪必ず助けるから」
あれ? 俺がちゃんと約束してるのに凄く疑惑の視線が向けられてくるんだけど、何だよ皆。俺裏切るとかするわけないじゃん。ほら、誓うぞ。裏切りません裏切るまでは。
え、だめ? 一切信用できない!? なんでだよ!?




