795.女子中学校七不思議6
「終わった」
扉が開き、アカズさんが現れる。
若干疲れが見えているのは激闘があったせいかもしれない。
「お疲れーアカズちゃん」
「テケテケ、何あれ、個室空間じゃなかったら私の方が負けてたわ。レベル差200くらいあったのに、向こうものともしてこないし」
それもそれですげぇな。
とりあえず、まともに相手したらヤバい相手だってのは理解した。
やっぱりここにもスレンダーマン並みの奴がいたってことか。
「とりあえず、倒した以上はもう出てこないだろ。紫鏡を見に行こうぜ」
「ええ。そうしましょう。ただ、私はしばらく戦闘参加しないからね」
すっげぇ疲れる。
アカズさんにベーヒアルが寄り添っているのがなんとも。
というかもうもたれかかったアカズさんを自身に乗せて運び出したぞあいつ。
一応、まさかコンコンコン・クィシンに入れ替わりスキルとかないよな、とアカズさんを鑑定してみれば……
「アカズさん、なんか呪いついてるんだけど」
「はぁ? 私呪物なんですけど!?」
「いやでも、衰弱の呪い、結構強いぞこれ」
『ヒロキ、これ衰弱の呪いじゃなくて衰弱死の呪いよ』
それどう違……いや、衰弱するだけじゃなく死ぬ可能性が高い呪いか。
しかも呪物であるアカズさんに呪い付与できるとか今のところコトリさんくらいなもんだろ。
あの幽霊、実はめちゃくちゃ高位ボスだったのか?
「あの、よろしければ解呪しましょうか?」
見かねたヒナギさんが立候補。
頼む、と頷きそうになって気付く。
解呪したら、アカズさん解脱しない?
「と、とりあえず軽くやってみて」
「あ、はい。オンアビラウンケンソワカ……」
巫女さんだと思ったけど実は拝み屋さんだったのかヒナギさん。
俺も拝み屋系スキルは持ってるからアカズさんに効果あるようだったら手伝ってもいいな。
「ひぎぃっ、成仏しそう!?」
「うーん、呪いが解呪されるより先にアカズさん自身が解呪されてない?」
「ダメですね。アカズさんという呪詛に紛れて呪いだけを解呪は出来そうにないです」
「アカズさん、そんな後生大事に隠さなくても」
「隠してないわよ!?」
そんなことをいいながら、俺たちは予定していた紫鏡へと辿り着く。
ようやくたどり着いたか。
ってか、ほんとに気持ち悪いくらいに紫色だな。
「んー、これね」
「テケテケさん?」
「私用の七不思議でしょこれ。見た瞬間分かったわ」
「テケテケさんと紫鏡ってほとんど関わりない気がするけど?」
「あら、そうでもないわよ。紫鏡の少女は、交通事故で亡くなったんでしょ? 私もね、交通事故で下半身を失ってしまったの。んじゃ、行ってくるわ」
え?
俺たちが止めるより早く、テケテケさんは一人率先して紫鏡へと突撃する。
すると、とぷんっと波打つようにテケテケさんが紫の中へと飲み込まれて行き、消え去った。
これ、いいのか?
放置していいのか?
俺は思わずハナコさんに助けを求める。
さすがにハナコさんも想定外らしく、首を横に振るだけだ。
次にタツキ君たち、アカズさん、はダウンしてるのでベーヒアル。
稲荷さんでもわからないんじゃどうしようもないか。
ヘンリエッタさん? 聞く価値なんてあるのかな?
「とりあえず、紫鏡に関してはテケテケさんに任せるしかないでしょ」
「あたしらは次行こうぜ次」
まぁ問題はなさそうだけど。
待ってるだけよりはマシか。
えーっと次は、天井と廊下が裏返る? だっけ。
天井と廊下が逆になる、じゃなく裏返る?
アカズさんの体力的にも時間はない。とりあえず裏返りを体験してアカズさんに覚えて貰おう。
そうすればアカズさんが衰弱死しても問題がなくなくなるはずである。
『浮遊霊たちに聞いてみたけど、裏返りは二階に降りないとダメみたい』
「テケテケさんは出てきた時用に、ここに紙残しとこう。二階に降ります。っと」
メッセージも残せたので、俺たちは二階へと向かうことにした。
二階にも出てこないだろうか、と不安になりながら探索。
所定の位置へと皆がやってくると、その変化は唐突に起こった。
ぎゅわんっと視界に映る世界が一変した。
何が起こったのか一瞬脳が理解を拒み、目の前の光景を受け入れようとしなかった。
しかし、変化のなくなった視界情報を一切受け入れないわけにはいかず、徐々にその光景を認識し始める。
文字通り、裏返っていた。
天井と廊下が逆さになるのは普通になった。
ただ、足元の天井は裏返り、天井裏を走っていたボイラー設備が顔を出している。
廊下の方も裏返り、普段見ることのない廊下の裏……これもまた階下のボイラー設備が顔を出している。
「えぇ、ナニコレ?」
「裏返ったねぇ。見事に」
裏返るってこういうことなの?




