793.女子中学校七不思議4
件のトイレにやってきた。
ちなみにここで現れるらしい赤マント、もともと史実ではトイレの怪談じゃないらしい。
しかももともとの話をさかのぼっていくとどうも赤色ですらないらしい。
なんだそれ? と思わなくもないが、実際の事件から噂が尾ひれ背びれ胸鰭と付いていき、青ゲット男という未解決事件から怪人赤マントが生まれ、赤マントの派生で赤い紙青い紙と合わさってトイレの赤マントが生まれたとかなんとか。
実際どっからどこまで本当かはもはや歴史の彼方に謀殺されたようなもんなので、放置で良いだろう。
問題点としては、赤マントが欲しいか、青マントが欲しいか、と聞いてきてどっち応えても殺しにかかってくるそうだ。
この辺りの問答はヒチマジムンとかいうのがルーツみたいなことも噂されてたけど、結局何が最初か、なんて調べようったってもう無理そうなので、うん。とりあえず敵ならぶっ倒せばいいな。
今回の怪異もやっぱり女子トイレで起こるらしい。
これに関しては赤マントが女性ばかり襲うから、という怪人側の怪談も取り入れられているのかもしれない。
「という訳で、キョウカ、頼んだ」
「私かよ!? ちょっとリーダー、ダイスケが酷いんだけど!?」
「いや、今回現れる赤マントは意志の強い女性の方が対処できると思うんだ」
それ、ヒナギさんやアミノサン、ラズナさんは意志が弱いと?
まぁキョウカさんを乗せるための方便だろうけども。
「そうかな? まぁ、タツキがそこまで言うなら」
騙されてますよ、キョウカさん。
一人女子トイレへと入っていくキョウカさん。
あ、なんか嫌な予感。
ぶおんっとトイレの入り口に謎のバリアっぽいのが出現。
キョウカさんが閉じ込められた。
「ちょ、これヤバくね!?」
「ヒロキさん!」
「え、俺!? えーっと固有結界か何かだろ、これどうすれば」
ん?
俺たちが焦っていると、一匹、ゆっくりと前に出てくるベーヒアル。
一度俺を振り向き、任せな。と力ずよく胸を叩く。
そこ、胸なのか?
ベーヒアルが結界と思しき場所に触れた次の瞬間だった。
俺たちの視界が暗転。
まさかの全員転送である。
「ここは!?」
「な、なんだここは!?」
俺たちが目を開くと、目の前にキョウカさんの首を絞めようとしていた男? マントを着た黒い影が焦った様子で周囲を見回していた。
「ぎょーぅ」
「でかしたベーヒアル! お前対結界スキル貰ってたのかよ! というかこの隙間空間そういうスキルだったのか」
一度俺が落とされた場所だ。すぐに理解できた。
他の皆が理解するより早く走り寄った俺は影の背中にヤクザキック。
「ごは!?」
まさか肉弾戦でくるとは思っていなかったのだろう。
逆くの字に折れ曲がって両手がキョウカさんから離れる。
「げほっ、げほっ、あ、あぶ、な……」
「キョウカ、無事か!」
少し遅れ、赤マントとキョウカさんの間に駆け寄るタツキ君。
武器を構えて赤マントに対峙する。
でも、こいつを倒すのは彼じゃない。
「トイレ関連は任せるぜ、ハナコさん!」
『ええ。こいつは私の獲物だからね!』
「く、あ、赤マントはいらんかね!」
問答に無言で赤い手を出現させたハナコさんが殴り飛ばす。
「げほっ!? あ、青マントは、いらんかね!」
なおも問答をしようとする赤マントを、今度は青い手を出現させて殴り飛ばす。
「ぐぶっ、き、黄色いマントは、いらん、かね」
黄色もあんの!?
『お生憎様、着るものは間に合ってるわ。ねぇ、逆に貴方、マントだけね。赤いちゃんちゃんこ、着せてあげようか?』
「あ、あか? あか……ああ、あああああああああああ!?」
あ、バグった。
自分が選択させられるという意味不明な状況に、AIが耐えられなかったのかもしれない。
赤マントはその場で痙攣をおこし、無防備になったところを鬼火の連弾を喰らって消し飛んだ。
『楽な戦いだったわ』
「最近そんなのばっかだよねハナコさん。ヤミコさん時は知らないうちに隣で大戦争始まって終結してたし」
「まともに戦ったのが赤と青の手だけなんて……まぁいいんだけど」
アカズさん、それを言っちゃあおしまいだよ。
「ところでヘンリエッタさんと稲荷さん、おとなしいけどどったの?」
「うむ。ヘンリエッタは自分が呼ばれた理由がよくわからないらしくての、自己主張せずに出番来るまで待っておるらしい。儂は、どうもさっきの霊が気になってのぅ。アレで終わりではなさそうじゃ」
ようは警戒してたから俺たちの戦いに水をさすよりもそっち優先してたってことか。
「ヘンリエッタさん、別に連れてきた意味は最近冒険に連れてってないな、と思っただけで出番はないから普通にしゃべっていいよ?」
「そんな!? いつ出番あるかってカッコイイ登場の仕方とかセリフ考えて出待ちしていましたのに!?」
骸骨風情にそんな出番はねぇよ!?




