778.ようこそドリームランド10
自分のイデア内なのに見たこともない異形の生物が闊歩してやがる。
何だこいつら?
マジで何だこいつら?
倒しても倒しても気付いたら別の場所に発生してやがる。
不安になったので夢の守護者さんに電話して聞いてみたところ、彼らはイレギュラーではなく俺のイデアの清掃係ではないか、とのことである。
悪夢とか夢のゴミなどを掃除してくれるのだとか。
じゃあ殺す必要はないのか? ちょっと気味悪い出目金に足生えたような生物だけど、とりあえず放置でいいんだな?
自分のイデア内をくまなく捜索してみる。
どうやら公園を中心に、北側に俺の現在住んでいるUFOがあるようだ。
残念ながら入り口が閉じられているので中に入ることはできない。
理由を知りたいところだけど、おそらく内部が造られていないとかの運営サイド理由だろう。
公園から東側に向かうと、商店街。
ただし、人気はなく、気味の悪い異形だけが闊歩している。
清掃係らしいけど、こんな生物俺は知らない。
一度公園に戻って西側へ。こっちは……森?
生物的なモノは何一ついない、清掃係はいるけどな。
ここまで人がいないとなんというか、怖いな。
俺の夢なんだよな? ここまで物悲しい世界だっけ?
もう少しなんかこう、無いのかね?
公園に戻った後は南へと向かう。
こっちは……おい、止めろ。
駅は止めてくれ。
なんで俺の夢に天敵たる駅があるんだよ。
しかも八番出口じゃん。絶対ヤバい奴じゃん。
一応、確認だけしに向かう。
うん、普通の無人駅だ。
改札も普通、ホームも普通。
というか、ここって猿夢に出てきたホームでね?
あの猿人の夢に勝手に入って来てたのか?
そもそもこの線路どこ続いてんの? もしかして線路辿ったら他人の夢に辿り着いたりしないよな?
夢の守り人さんに尋ねてみれば、ここはどこにも繋がってないそうだ。途中で止まるか環状線になっているかはその人のイデアがどれだけ広いかによるそうだ。
この先歩いて確かめるのは面倒だから、どっかで電車か何か手に入れて使うのが一番だろうな。
ドリームランドの街で買い物して自分のイデアを装飾していくのがいいかもしれん。
『そうそう、おそらくだがその駅のどこかに地下への階段があるはずだ』
夢の守り人さんが電話を切る前にそんなことを言っていた。
なんでも、ドアから集合イデアに行くのは違法的な方法なのだとか。
人間は普段そんな方法で外に出ることはないんだと。
全ての人のイデア内に階段が存在し、これを70段、降りることで炎の神殿へと辿り着けるらしい。
そこで神官により集合イデアに向かっていいかどうかの審判があるらしい。
合格すれば通行証が貰えるので、夢の守り人さんに襲われることなくドリームランドを闊歩できるそうだ。
せっかくここまで来たんだし、とりあえず探してみるか。
えーっとこっちは来た道だから、こっち側かな?
角曲がる時向こうから清掃人が来るから出会いがしらはマジ怖い。
思わずレーザー銃抜いちゃうし。
向こうも想定していなかったのかレーザー抜かれた瞬間両手を挙げてホールドアップ。
しばしの硬直から、何だお前かよ、っと俺がレーザー銃下げるまで、が何度となくあった。
いや、ほんと慣れない間は清掃人見たら撃ち殺しかねんわ。
それにしても駅の地下は入り組んでるな。
俺のイデアなのに何でこんなに変な場所が……っと、階段発見。
ここを降りればいいのか?
70段だっけ?
普通の階段だけど駅の階段だからか何か出てきそうで怖いな。
というか普通に踊り場もあるのか。
踊り場まで10段なので70段までかなり長い。
最後の踊り場を曲がって下をみれば、炎の神殿……神殿? 炎に包まれた洞窟にしか見えないんだけど。
ほんとにあったな。
ここ降りればいいのか。
炎の洞窟に侵入する。
熱い、訳ではないらしい。
周りの炎のおかげで内部も見やすいようで、炎に照らされた洞窟内には、二人の男があくびを噛み殺しながらテーブルを囲って座っていた。
「おー、ようやく誰か来ましたよーっと」
「なんだよ、全然訪れる奴いないからオワコンかと思ってたぜ、よっす」
「よっす」
気さくなあんちゃんだったのでこちらもよっすで返答する。
とりあえず座んな。と促されたので、彼らのすぐ隣の椅子に座る。
「えっと初めまして?」
「おぅ。俺ぁカマン=ターだ、こっちの客が来てんのに眠り始めたのがナシュト。自分の夢の中なのに他人が居るのびっくりしただろ?」
「そうでもないっすよ。一応ここのこと教わってから来ましたんで」
「お? そうなの? ってぇこたぁ、この先が何かも知ってんのか?」
「ドリームランド。いや、集合イデアの方がいいかな。ここで説明受けた後はドリームランドを自由に闊歩できるようになるって聞いたけど」
「なるほど、ただの迷い人じゃなく、明確にドリームランドに行きたいと」
「ほう。つまり、試練を受けたいというのだね」
おお、さっきまで船漕いでたナシュトさんが覚醒した!?
 




