777.ようこそドリームランド9
―― なるほど、そのギーァと名乗る幼体は確かに我らの眷属であろう ――
マジすか!?
―― 改めて。我らは神ヒュプノスの眷属である。夢の心の守り人と呼ぶ者もいる ――
「へぇ、ってことはここ集合イデアの守護者みたいなもんか」
―― ゆえに聞こう。汝何故ここにいる? ――
あれ、これ尋問されてる?
「まぁ、隠すことでもないと思うんで。テインさん、えーっとティンダロスの王に黄衣の王なら治せるって聞きまして、順を追って話しますとですね……」
と、何やら下手な嘘は不味いと危機感知が作動するので初っ端からここに来るに至った経緯を伝えることにした。
「というわけで、用事が終ったので今から自分のイデアに帰るところです」
―― なるほど。外の神の導きであるならば我らの敵ではないな。よかろう。其方のドリームランド移動を許可する ――
あ、これって彼らに許可されなかった場合ってヤバいことになっていたのでは?
あっぶね。夢の中で暗殺者に随時狙われるとか地獄だぞ。
―― それから、ここ最近、この近辺で集合イデアに出るように誘ってくる生物が出るらしい。そいつは自己イデア内部に侵入し、君を待っていた、などともっともらしいことを言って集合イデアに誘い出し、彼らの精神を洗脳して自分の餌に、あるいは我らを敵だと指定して夢の結晶器を奪おうとしてくるのだ ――
「夢の結晶器?」
―― 夢のクリスタライザーとも呼ばれている。これは我が神ヒュプノスの力が宿っている。無断使用されると神がお怒りになるのだ ――
と、黄色いギザギザ線が入った立方体を取り出してみせるギーァモドキ。
―― これはあらゆる場所を見ることができる遠見の能力と、夢世界のモノを現実世界に持ち帰ることができる能力がある ――
なるほど、つまり彼らを襲撃する奴はその夢の中の何かを現実世界に持ち込みたい訳か。
―― このドリームランドには神の住むセレファイスや様々な都市がある。そこで手に入れたものを持ち帰りたいようなのだ。我らとしても神としても無断で力を使われ、本来持ち帰り不可能なモノを持ち帰られるのは許せることではない。見つけ次第八つ裂きにせねば! ――
うおぅ。あっぶね、それ貰えません? とか交渉するとこだった。
これは多分手に入れた瞬間ドリームランドが殺伐世界に早変わりする、便利だけど敵だらけになるトラップアイテムだ。
「一応ダメもとで聞くけど、ヒュプノス様が許可したら人間でも使えるのかな?」
―― 前例がない。神が人間に自分の力を使われることを許容できるわけがないと思う ――
なるほど。でもまぁ聞くだけ聞いてみるのはありかもしれないな。まぁ今回はおとなしく帰るけど。
「あんたはこの周辺見回ってんの?」
―― 否である。ドリームランド全体を見回る、誰がどこを見回るかは決まっていない ――
「そっか、じゃあもう会えない可能性が高いのか」
―― それも否である ――
あ、その電話持ってるんだ? えっとこの世界でも電話使えるの?
「登録完了。これで会話して待ち合わせとかができる訳か」
―― 残念ながら我が番号は現実世界には持ち帰れない。夢の中でのみ使える番号だ ――
「はー、なるほど。あ、そうだ。実はしばらく後にドール討伐戦っていうのやるんだけど、助っ人に来てくれたりとか、無理っぽい?」
―― 神が許可したなら行くのは問題ない ――
マジか。ってことはヒュプノスさんと交渉しないといけないのか。
ドリームランドでヒュプノスさん探し、しないといけないようだ。
これ、上手くいけばドール討伐に凄い戦力を投入できるかもしれないぞ。
―― いいだろう、神に連絡を入れておく ――
俺はギーァモドキさんに挨拶残し、自分のイデアへと戻る。
帰ってから施錠をしてっと、あとはこのイデア内部に変な生物が紛れ込んでないかを調べるだけ、と。
扉を潜って出てきた場所は、ティリティさんに案内された場所だった。
そこからしばし移動していくと、ディスマンと出会った噴水公園。
彼の姿は一切存在しない。
ティリティさんの一撃で死んでしまったと思われる。
とりあえず始まりの長椅子に一旦座り、虚空を見上げる。
自分のイデアだからか、凄く落ち着く。
なんだこのホーム感?
やはり自分のイデアだからか、ずっとここでぼーっとしていたい。
っと。あぶねぇ。このまま自我崩壊して本気のほのぼの生活が始まるとこだった。
さっさと状況把握終えて現実世界に戻らねば。
夢の世界居心地よすぎて逆に怖くなってきた。
さーって、変な生物いないかなぁーっと。
……
「ぎょぁ」
……
変な生物、いないかなぁ……
いなくなってくれないかなぁ……ショラッ!
レーザー銃が火を噴いた。
いないかどうか期待するのはやめよう。もういないでくださいマジで!




