775.ようこそドリームランド7
セラエノ図書館でヤバい本を読み終えた俺たちは、コルコサを後にした。
やることは終わったし謁見も済んだのでスキルももらえたようだ。
いやー、正直もっと大変かと思ったけど平和裏に済んでよかったよかったよ。
「いや、ほんと敵らしい敵が出て来なくてよかったねー」
「くねくねさんが見るからにハスターの眷属になってしまった以外は変化なかったしな」
「行きはそのくらいで十分だ。で、ヒロキ、帰りはどうする? ボタン一つですぐ戻れるが、トラブルを求めるならここから歩きでもいいぞ」
止めろよ縁起でもない。テインさんの言う通りになるわけないじゃん。俺だって歩けば必ず棒に当たる犬じゃないんだ……し……
「見つけた……」
ソレはドリームランドの通路、宇宙空間が広がる世界での出来事だった。
目の前に現れたのは炎。
女性を模った青い炎がいくつかの火の玉を引き連れ現れた。
「うげぇ!?」
ニャルさんが露骨に嫌な声をあげる。
うん、火の眷属でニャルさんが嫌がる。
もうわかるね。こいつは奴だ!
「なんだクトゥグアか。今はハスターに会った後の帰り道だ。言わずともわかるな?」
「帰り際の客人襲撃、黄衣の王と敵対関係になる、か? 安心せよティンダロスの者よ。我らが用があるのはそこのニャルラトホテプのみ、おとなしく差し出せば危害は加えない」
「えーっと、ニャルさん差し出したあとどーなんの?」
「殺す」
「うをい!? もうちょいオブラートに包もうか」
「ふん、貴様等ニャルラトホテプなど皆焼け死ねばいい」
バッチバチですね。
でもニャルさん差し出す訳にはいかんのよなぁ。まぁここで死んでも自宅で復帰するだろうけど。
とはいえ、戦って勝てるかっていうと、どうだろうか? クトゥグアの炎、皆はともかく俺は死ぬよね、耐え切れずに。だから……
「ニャルさん渡すのは難しいね。ただ、俺たちも戦いたい訳じゃねぇ。だからよ、賭けねぇか?」
「賭け?」
「これから卓上ゲームを出す。そこで俺と戦って勝てばニャルさんを渡す。負けたらあんたがソレに相応するモノを俺に差し出してもらう」
「ほぅ、この私に人が挑むか。外なる神であるこの私にっ! いいだろう、完膚なきまでに燃やし尽くしてやる」
「オーケー、では、敗北時はあんたもドール討伐に協力して貰う、ニャルさんと力を合わせてな! 俺にテイムされろってことだ。どうする、勝負を受けるか?」
「くっ、くくく、はははははは! 吹いたな小僧! このクトゥグアを敵にして大した啖呵だ。乗ってやろう。貴様の戦場で戦ってやる」
「なら、闇のゲーム、起動!」
それはカードゲームの卓上だった。
出るかどうか不安だったけど、まさかドリームランドでも発動するほどの強制力があるとはな。
「む、それは……」
「席に付きなお嬢さん。お高く留まったその性格、俺がきっちり調教してやんぜ」
「ニャルラトホテプ同様貴様も消し炭にしてやるッ」
そして哀れな贄は卓に付く。
テインさんたちが呆れた顔をしていたけど、いいじゃん、戦力多い方が。クトゥグアだし戦力的には十分だろ。ドール討伐絶対役立つって。え、違う? また女手籠めにする気だこいつ? いや、違うって、俺そんなつもりじゃないって。
そして対戦が始まった。
クトゥグア先行、凄く楽しそうにカードを扱う女性型炎。カード普通に持ってるけど燃えないんだろうか? 燃えてないから燃えないんだろうなぁ。
でも、分かってないな。君はもう、策士の策に溺れているんだぜ?
見な、フィールド変化大草原、からのマダにーさんコンボ! これでお前の敗北確定だ!
「うっわ、えげつない、でも……伏せカードクトゥグアの怒り」
へ?
クトゥグアの怒り発動。
フィールド全てが灰燼に帰す。当然マダにーさんたちも全部消失。
「あは、ごめんねぇ、コンボ壊しちゃって?」
あ、これ、ヤバくね?
……
…………
………………
クトゥグアのデッキヤバい。
何あのアフーム=ザーとかいうの、めっちゃ出て来たし攻撃力高いし。
フサッグァ出てきた時には死ぬかと思ったわっ。
「あー、負けたか。ニャルラトホテプ殺せると思ったのに」
コトリさんのコトリバコによる女性型弱体スキルが無かったら、あるいはリンフォン発動が無かったら。敗北してたのは俺の方だった。
マジやべぇ。闇のゲームで過信してたら敗北しかけたし。
仕掛ける相手間違えると本気でヤバいなこのゲーム。どうしても実力で勝てない相手のみ、最終手段にするしかないぞ。
クトゥグアさんをテイムすることはできたものの、俺の鼻っ柱が圧し折れる結果になった。策士は、策に溺れたんだ。ありがとうコトリさん、夫の失態を妻がフォローしてくれたよ。後で褒めておこう。
まさかマダにーさんコンボが即殺されるとは思わんかった。
最強だと思ったのに、他のカードでも潰される可能性考えとかないと、今回は運に救われたようなもんだし、残りHP1って。なにこれ、ガッツがなければ即死だった、と本気で言えるカードゲームだったぞ。




