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772.ようこそドリームランド4

「ドリームランドにはいくつもの外の神が独自の空間を作っている。現実世界の方でも自分の住む星に造っているのだが、そちらに行くには何光年も先の飛行が出来なければ話にならん。お前が来れるのはやはりこのドリームランドから向かう夢の中の国々までだ」


 今でようやくアインシュタイゼン博士が宇宙進出を目標に宇宙船開発し始めたばかりだしなぁ。

 いや、自分の家を宇宙に飛ばせば多分辿り着けるんだろうけど、わざわざ未開の惑星に向かうSF系ゲームに突入する気はさらさらないので、こっちだけで十分だ。


 しかも、ドリームランド内も移動短縮は可能なようで、ドリームランド入り口とコルコサ入り口が選択可能になっている。

 

「ニャルさんやテインさんの領土もこっちにあったりすんの?」


「ニャルラトホテプの星はあるぞ。私もティンダロスの王として国は持っているしな」


 廃墟を歩きながら、崩壊しかけた宮殿と思しき場所へと辿り着く。

 ここが黄衣の王が住まう場所らしい。

 お、なんか踊ってる女性が何人かいるな。


 ああいうのばっかりいるの?

 黄色い、というかオレンジがかった襤褸らんるを纏った踊り子さんが数人。

 顔を蒼白の肉質ある仮面で覆い、宮殿内にコダマする何とも言えない音楽に合わせて踊っている。

 なんだこの音楽?


「ほら、周囲を見ずに前を向け。二心有りと判断されれば一斉に襲い掛かって来るぞ」


 何それ怖い。


「そう怖がる必要はない。すでに連絡済みだと言っただろう。ティンダロスの王である私の訪問を受けるのだ、王同士対等な関係、それで襲い掛かるとなれば黄衣の王といえども名声を落とすのは自明の理だ」


 それはいいけど、王様が名声落としたところで何か問題あんの?

 あ、いや、ほら廷臣さん、王様ってば最高権力者じゃん。名声落ちたところで威厳が落ちる訳じゃないから気にする必要あるのかなって。


「あるさ。王は外面を気にするものさ。つまり、ハスターとはいえ、私たち他の星の王族たちの反応を気にしてるのだよ」


 ああ、他の異星人からの名声を気にしてんのか。

 別にいいと思うけどなぁ。

 テインさんに襲い掛かってもティンダロスの王たちにとって敵対するだけだろうし、え? もしかしてそこから繋がりのある異星人全てが敵に回るのか? ああ、そういう風に思えば確かに名声大事だな。

 下手な敵は作らないに限るし。


 ―― ふふ、安心したまえプレイヤー君。今回の訪問は正式な訪問だ。こちらとしてもよほどの粗相がない限り無礼討ちにするつもりはない ――


 ぬおぉ!?

 なんかイケボなお兄さんの声が!? しかも耳元で囁くタイプの重低音ボイス!?


「ああ、そういえば言ってなかったな。この宮殿内はハスターの把握範囲内だ。この宮殿に入った瞬間からハスターの射程範囲内に入っていると思っていいい。殺すつもりならすでに殺されている、という奴だな」


 マジかよ!? 把握範囲広すぎじゃね?


「っと、ここだ」


 テインさんが立ち止まったのは、かろうじて扉の役割を保っている観音開きの大型扉。

 テインさんの実力なら普通に開くくらいはできるんだろうけど。

 俺たちが何かするより早く、さび付いた扉が勝手に開かれていく。


「やぁ初めまして、でいいのかな? 日本語というのはなかなかどうして、話し方に工夫が必要だね」


 崩壊した謁見の間。玉座に座る男が一人。

 オレンジの包帯、あるいは襤褸を纏ったその男は、巨大な椅子に座ったまま、こちらを睥睨して来ていた。

 でっか!? え、何メートルあるんだこの人。巨人族の生まれかな? ってくらい巨大だぞ!?

 顔は、多分見たら俺でも正気度消失する。だからだろう、襤褸で隠してくれているようだ。


「ティンダロスの王、そちらの用件を聞こうか?」


「ふん、相変わらず威厳のない姿だなハスター。もう少し威厳を出したらどうだ?」


「君たちは威厳というが、どのあたりをどう変えればいいのかな? 姿を巨大にしても威厳は出ないようだし」


 困ったものだ、とジェスチャーで示す黄衣の王。

 俺からすれば威厳しかないのだが、彼らからすれば威厳も何もないのだそうだ。

 こうして相対しているだけで正気度を削られていく気がするというのに、ほんとうちのテイムキャラたち化け物級ばっかりだな。


「で? 何しに来たんだティンダロスの王? ニャルラトホテプやマイノグーラ、ショゴスロードまで引き連れて……どこかに戦争でも仕掛けに行くのか?」


「まさか? 皆こいつにテイムされた存在なだけだ」


 と、なぜか皆の視線が俺に集まる。

 うぐ、今までの日じゃないくらい正気度の消費が激しくなっている。

 

「ヒロキ、早速だが用件を伝えてくれ」


 あ、そこは俺が言うべきなのか。


「では黄衣の王に二点、お願いしたきことがございます」


「ほぅ、我を前に発言するか、正気度の貯蔵は十分か? 発狂しても我は責任取らんぞ?」


 マジかよ。俺の正気度、マジ大丈夫だよな? もう50%切ってんだけど?

 これで消失したら俺アバター消滅したりしないよな?

 あ、一回死んだら戻るの? なら問題ないか。

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