771.ようこそドリームランド3
「道中イレギュラーはあったがここがドリームランドの入り口だ。一応伝えておくが、ここで死ぬとプレイヤーといえども脳死状態になる、ああもちろんゲーム内の状態だからな」
「ま。要するに、死んだ場所に再出現するから化け物に殺されたりした場合は無限キル状態になりかねないってことね。味方が何人かいれば助けてくれるだろうからそこまで心配する必要はないわよ」
「つってもアタシらでもやべーの相手だった場合は諦めろよ?」
「黄衣の王とか相手だとねー、怒らせちゃダメだよヒロキさん。あと、変質したら肉体も変質するから気を付けて。間違っても外の神のしもべとかになっちゃダメだよ?」
くねくねさん、そういうの警戒してもなる時はなるからなっちゃダメとか言われてもどうしようもないと思うぞ。
「ドリームランドの入り口って観音開きの扉なのか。他のドアと違いがあんの?」
「左右に開く扉はここじゃドリームランドだけなのさ」
「なるほど。この無地の扉だけなのか」
「他に似たような造りのがあるなら絶対に開くなよ、確実に扉系のミミックか何かだぞ」
ミミックってこんな場所にも出るのかよ。そっちの事実のがやべぇわ。
「こっから先はドリームランドだ。一瞬たりとも気を抜くなよ。ナイトゴーントに食われっぞ」
そもそもどんな場所かすら分かってないからなぁ。俺以外全員知ってんの?
「私は行ったことはないかなぁ。そもそも集合意識のイデア来たのも初めてだし。テインさんお迎えありがとうございます」
「構わん、むしろお前のイデアはわかりやすくてよかったくらいだ」
というかテインさんとかティリティさんとか普通に他人のイデア覗き放題かよ。
「吾輩たちは大体相手のイデアわかるからな。ダーリンのイデアは一瞬で分かったぞ、まさに愛の力だな!」
そうかな? ギーァも?
「ギーァ」
うん、ギーァの言葉は未だにわからん。
というか、扉潜ったけど変化的なモノは風景が宇宙っぽくなったのと、足場がなくなったことかな。
足場は見えなくなったけど地面と思しき場所に足を付けると波紋が一瞬広がるようだ。
変な場所だなここ。
「ドリームランドはいくつかの場所に分かれている。ここはその通路といったところだな」
「通路も何もどこ見ても宇宙なんですが?」
「外の神などの知り合い無しでここに迷い込めばどこに辿り着くかすらわからんぞ。はぐれるなよ?」
「ダーリン手、繋ごっ」
ティリティさんが積極的に手を握ってくる。
ちょっとドキッとするけど、役得しかないのでされるがままにしておく。
左手をティリティさんと繋ぎ、背中にはギーァを張りつかせ、肩に乗ってるニャルさん。何だこの状況?
「ケケケ、モテモテだなァオイ」
「マイノグーラもどう? ヒロキの右手、空いてるよー」
「馬鹿姉五月蠅い。アタシがそんなもんやる訳ねーだろ」
「あ、じゃあ私が握ってあげるー」
くねくねさんが空いてる右手に絡みつく。
おおぅ、胸が、胸が当たって……
「むぅ。吾輩の方が胸あるぞ!」
おおお!? こ、これが両手に華!?
「ギーァ」
っておいギーァ、首、首締まってる!
「こらギーァ、あんましヒロキの首絞めると死ぬよ。ほら緩めて緩めて」
「ギーァ……」
ギーァが気落ちしながら拘束を解く。危うく締め落とされるとこだった。
ギーァめ、まさか俺の首を取りに来るとは想定してなかったぜ。
「確かこの辺りが黄衣の王がいる場所だったな」
「あー。テイン、右に20°、隙間に30°ずれてるよ」
「ん? ああ、ここだったか」
と、宇宙しかない空間に光が生み出される。
え、そこ入るの?
ドリームランド内の移動が終り、霧の濃い場所へと辿り着く。
「本来ならば来ることのない場所だ。しかしながらイデア内からドリームランドを通れば、プレアデス星団に存在するここに辿り着ける」
「はぁ……」
やばい、全然ついていけねぇ。ぷれあですせいだん? 何それ美味しいの?
「見ろ、霧の都、黒きハリ湖。そして存在する廃墟、ハスターシティが夢の如く存在している」
すっげ、ビル群じゃん。
近代都市の成れの果てだ。
実際がどうかはわからんけど、ここは運営が造ったゲーム世界。
彼らの意向が存分に加わった古代文明都市、コルコサが、その姿を俺たちの前に曝していた。
「一応、先に話は通してあるが、廷臣共には気を付けろ?」
「廷臣?」
「踊り子どもだ。下手にそいつらと踊ると人間は腐敗し崩れ落ちるそうだ」
えげつないなぁ……ダンスレッスンとか頼めないじゃん。
いや、でも、レッスンだけならいけるか? ダメもとで頼んでみるかぁ。
もしかしたら意外と、そう、意外とコーチとしての能力は高いかもだし。
「あとハスターに謁見する価値のない相手に攻撃してくる。油断すると死ぬぞ」
ほんとえげつないな!?




