767.情報過多
「詳しくわかった訳じゃないけれど。これ、情報が密集しすぎてるんじゃない?」
なんて言ったのは散紅さん。
頭はいいので何かしら思いついたのかもしれない。
「情報が密集しすぎ?」
「そう、くねくねしてるんじゃなくて、見た相手がくねくねしているように見えてしまうくらいくねくねさんを取り巻く周囲の情報が多いのよ。それで脳が情報を受け取り過ぎてパンク、色彩が変わったり変な笑いが止まらなくなるバグが発生してるんじゃないかしら? 私たちは普通にAIだから情報過多な情報はシャットアウトすればいいんだけれど」
「よくわかんねーけど、くねくねさんは直接見たらプレイヤー側がヤバいってことだな」
なるほど、ユウキさんの理解が一番俺にはわかりやすいや。
「えぇ、これどうするんの? このアバター一生このままとか?」
「運営に質問してみれば? 答え返ってこないかもだけど、ある程度のプレイヤー不安は取り除いてくれるはずだぞ」
「運営に聞いてみたある。体の捻りも異様な視界も一度死んだら治るって、よかったあるー」
つまり死ななきゃずっとその状態なのか。
ログアウトした後もこれとか、辛すぎるな。
デスペナもあるからしばらく不遇になるし。
「とりあえず強そうな敵と戦ってゲームオーバーしてくるのがよさそうね。ああもう動きにくい」
どうやらマイネさんは半身だけ自分の意図した動きと逆方向に動くようになったようだ。
普通に反転するより動きにくそうだな。
「どこで死ぬのがいいかしら?」
「スプリガンに殴られればいいんじゃね?」
「それだ!」
くねくねさんについてはコーチとしてテイムさせて貰ったけど、ダンス得意じゃないかもという説が浮上したので一旦ウチの解析部隊にお願いして研究して貰ってから改めてお願いすることにした。
ウチならくねくねさんでも普通に過ごせるみたいだし。
一応家にいるメンバーに確認しておいたけど頭パーンするメンバーは多分いないとのこと。
皆レベル上がっていろいろ耐性できてるんだなぁ。
「っていうかヒロキさん、間近で見てるはずだけどおかしくなってないあるか?」
「そういえば俺の変化は……なんかあるんか?」
なんもないなぁ。全身見て見たけど変化はないし。
周囲にも異変は……異変は……
黄昏色の空の下。眼下に広がる田園地帯。
田んぼの一角でドレッドヘアのおっさんが泥人形相手に格闘しているが、それ以外には……空をエイっぽいのが飛んでたり、あぜ道に目玉の蚊柱みたいなの集まってたり、黒い影の人が闊歩してたり……まぁ、いつもどおりか。
「変化は、ねぇかなぁ」
「それは変だねぇ」
「あははははははは」
りんりんさんが涙目でなんか訴えてるけど楽しそうにしか見えない。
むしろ涙目で笑われるとか爆笑されてるようなものである。
なんか、イラっと来るな。
「とりあえず、帰るか。一旦UFOにくねくねさんを送り届けて、音楽の出来具合を見に行くかね」
「スプリガン帰るよー」
「承知!」
まだ倒してないとか言うかと思ったけど普通に戦闘止めて戻って来たな。
やはり妖精さんファーストな精神らしい。
「あ、スプリガンさん。悪いんだけど私たち三人ささっとぶっ殺してくれる? 痛み感じる前に一瞬で」
「は?」
「三人死に戻ることで元に戻るんだって、遠慮なくやっちゃって」
妖精さんが告げた瞬間だった。
ノーモーションの手刀がレイレイさんの首を落とす。
ちょんぱっ!?
「ちょ、速……」
さらに回し蹴りによりりんりんさんの首が折れ曲がる。
容赦ねぇ!?
最後にマイネさんの背後に回し、首を思いきりごきりと捻り殺す。
えげつねぇ!?
「処理完了」
「おお、ぅ……」
下手に妖精さんがプレイヤー殺っちゃって、とか言った瞬間スプリガンは容赦なく殺すということが確定しました。
妖精さん、マジ言動気を付けて!
「よ、よかったわ。くねくねさん見なくて」
リテアさんだけ無事だったな。
俺は……さすがに今死に戻るのはいろいろ問題あるから二日後でいいかな。
しかし、やべぇな、視界バグ……
実際、俺もどうやらくねくねさんの影響を受けちまっているらしい。
この視界に見えてるのはなんだろな?
ただの幻覚にしては妙にリアルだ。でも化け物っぽいのに触れてるユウキさんとかは素通りしても何の変化もないようだし。
つまり、目に見えてるこの意味不明な化け物たちも俺たちに危害を加えてはこな……んー。サユキさんの頭に噛みついてる目玉だらけの化け物、これ本当に危害加えてこないんだよな?
「な、なんやヒロキさん、う、ウチのことじーっと見つめて」
「おい、止めろ、姉貴にエロい目向けンじゃねぇ!」
いやそうじゃないんだが……まぁいっか。
これ、もしかして別のステージとして作ってる位相世界とかじゃねーかな。テインさんとか位相移動してるからちょっと聞いてみるか。




