760.巻き込まれた都市伝説2
「おはよーぅ」
まっかっかさん案件が一段落したので俺は一度ログアウトしてお休みさせていただいた。
というか、ユウたちが来るとか言ってたけど未だに現実世界にやってくる様子ないな。
まぁいいか。とりあえず次の目的は、前回行けなかったアイドル霊のいるダンススタジオに向かおうと思う。
あと時間があるならそろそろ奴らに終わりを届けるのもやぶさかじゃない。
……っていうか、誰もいねぇ?
変だな。普通誰かがいる音とか聞こえるはずなんだけど?
というか、UFOの自室で目覚めるはずなんだけど、ここ、どこだ?
何もない白い部屋? 通路は四方にあるけど、どこだよここ?
んー。ステータスに異常はなし。
電話は? 使えない?
でもネット回線は生きてるからゲームは起動してる、と。
ってことは、アレか。
猿夢みたいな突発系都市伝説だな。
えーっと俺が見た都市伝説の中で可能性が高いとすれば……バックルームか。
バックルームという都市伝説はいつどこでも起こり得る現象だ。
多くの人が行きかう場所を歩いていると不意に、閑散とする時間帯がある。
自分以外誰もいなくなる現象。それこそがバックルームという都市伝説だ。
ここから脱出する方法はあったかな?
とりあえず普通の都市伝説かいろいろ追加された方か。多分追加された方だろうな。
何かしら生物と思しき足音が近づいてきてる。
しばらくののち、ソレはぬたりと現れた。
ヘドロのようにどろどろの肉体を持つ二メートルを超す大柄な人型生物。
真っ白でのっぺりとしたソレは、俺を見つけるなり走りよって……レーザーに打ち抜かれて息絶えた。
「ふむ。バイオなハザードをVR体験してるようなもんかな。とりあえずマッピングは出来てるみたいだから移動してみよう」
数匹の生物を狩っていくつもの部屋を探索する。
うん、ほっとんど代わり映えがねぇな。
しかもどこまで行っても部屋部屋部屋。変化らしい変化がねぇ。
なんだよここ?
んー、ループしてるわけでもねぇのか?
いや、やっぱループしてんだろ。
じゃああれだ。部屋の一つに目印付けよう。レーザーで穴開けてっと。
まずは左右。
……
…………
………………
お、みっけ。
部屋自体は同じ造りだけど、ループしてるのはわかった。
次は上下だ。
……こっちも、か。
部屋を次々移動していけば、巨人とも遭遇するものの、こいつらは動きも遅いし一撃でヘッドショットできるので脅威と判断するほどでもない。
完全にループしてるな。
上下も左右もループしてる、と。
ならあとは中心を特定するか、別のフラグを立てるか、まずは部屋数の確認だな。
1、2、3……12、13、14で元に戻る、と。
じゃあ上下は? 1、2、3……14?
中央は7、7の場所か? それとも8、8? あえてそのさらに中心という可能性もあるか。
んー、後の法則は……ん? 14で元に戻る?
14の前は、13。その数字、直前で体験したばっかだなぁ。
一応、最初に試すか。
最初の部屋から十三番目の部屋、さらに上に十三番目のへ……ビンゴか!?
部屋に入ると同時に、今までと違った部屋へと入り込んだ。
学校の教室だ。
しかも部屋の中に何かいる。
というか……ベーヒアル?
俺の姿を見ると、ベーヒアルは左右に揺れ始め、すぐ傍に用意していた何かを持ち上げる。
あれは。木製のプレートか? 何々、どっきり、大成功……ぶっ殺すぞクソ虫!
「お前のせいかよ!」
「お前のせい、じゃないですヒロキ、あんたのせいよ!」
と、まさかの第三者乱入。
掃除用ロッカーからばんっと扉を開いて出てきたのはアカズさんだった。
「ど、どういうこと?」
「ベーヒアルよ、あんた幻の四階に置き去りにしたでしょ!」
お、おお、そういえば、お前なんでここにいるんだ? 無限ループ四階に送り込んだはずでは……戻って、来れたのか?
「そうか、やっぱりお前ならやってくれると信じてたよベーヒアル!」
俺はベーヒアルに近づき優しく抱きしめる。
「調子いいわね……ベーヒアル、絆されちゃダメよ、こいつ絶対またやるから!」
―― べーひある? がテイムを希望しています、どうしますか? はい / いいえ ――
なん、だと?
そりゃもうテイムするっしょ。
―― ベーヒアル変異体をテイムしました! ――
―― 主よ、我が体験したことを追体験させてみた、どうだったこの無限回廊 ――
無限回廊、というか無限部屋だな。というかこいつ、意志持ってたのか!? ただの虫だと思ってた!
「全く、甘いわねベーヒアル」
アカズさんはなんでここにいんの?
ああ、個室空間作る必要があるから手伝ってた、と。
つまり二人で俺を嵌めて楽しんでたわけだな。よくわかったアカズさん。ベーヒアルは幻の四階に送り込んだこととチャラでいいが、お前は別だーっ! 意外と一人きりで無限の部屋とか怖かったんだからなーっ! 怒りのおしりぺんぺんをくらえーっ!! きょえぇ――――っ!!




