表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

762/1105

759.赤いあいつとあいつの邂逅

「うぅ。俺は、俺はもうダメっす……」


「ヒロキさん何かあったんですか?」


 夜間の七不思議攻略が終り、俺たちはタツキ君たちと別れて普通小学校へと戻っていた。

 朝の登校時間となり、やって来た猫滅殺ワンコさんが加わる。

 一応事前に呼び出した緑香と燦華の二人はちゃんと赤い持ち物を身に着けて来たようだ。

 んで、スキュラさんとシェリーさんが付いてきたわけな。


「あのー、UFO? の周辺にある泉を紹介していただいたのはいいのですがー、私の居た場所とは違ってましてぇ」


 それについては調べてる最中だからもうしばらく待っててと言ったはずなんだけどなぁ。


「ちょっと、仲間にするだけしといて放置とかどうなのよ? あの家に死に戻ってから私何したらいいかわからないんだけど?」


 ああ、それで二人とも燦華たちと一緒に来たわけか。

 俺、まっかっかさん撃破が終ったらログアウトするつもりなんだけど?


『ま、いいじゃないヒロキ。これだけ大人数なんだから一人二人増えたって』


「まぁそうですね。んじゃ二人とも、輸血パック持ってて」


「あらぁ? 私吸血鬼さんじゃないですよぅ?」


「なんで輸血パック?」 


「これから出会うまっかっかさんは赤いものを身に着けてないと即死するから。死にたくなければ持ったままで居るように」


「ああ、なるほど」


「では持ってますぅ」


 シェリーさんはテイムしてないからなぁ。下手に死なれると困るから絶対に手放さないようにして貰わないと。

 俺はハナコさんたちにも……ってハナコさんは赤い吊りスカート履いてるから渡さなくてもよかったな。

 まぁいいや。ヤミコさんも持ったし、テケテケさんも……咥えてるし。

 ケケケとか言ってるけど、テケテケさんが輸血パック咥えてる姿ってシュールだよね。


「ええと、私がここで必要になるんでしたっけ?」


「彩良さんが必要、というより、彩良さんにとって必要、かな。多分出会った段階で新しいスキル覚えると思うんだ」


「なるほど?」


 分かってないようだけど、多分それでいいと思うんだよな。

 あとは……奴が来るのを待つだけだ。


「あ、雨降って来た」


「うわー、また来るのかぁ」


 周囲に人は、いないな。

 これなら変な被害が出る前に終わらせられるだろう。

 問題としては彼女がちゃんと待機してくれてるかどうかだけど、こればっかりは彼女を信じるしかあるまい。


 ぽつり、ぽつりと降り始めた雨。

 しかし雨雲は存在していない。むしろ快晴なのに雨が降っている。

 うん、異常だわ。これは確かに怪異に寄る何かしらのスキルだな。


 雨脚は少しずつ強くなる。

 やがて、それはぴちゃん、ぴちゃん、と聞こえて来た。

 遥か先から、聞こえるはずのない長靴の足音。


「やぁ、来たよ」


 まっかっかさんが現れた。

 俺たちの前に角からやって来た彼は、にぃっと笑みを浮かべる。

 しかし、すぐに理解した。


「今日もダメかぁ。ガード硬いね」


 ため息一つ。そして踵を返そうとする。


「じゃあ、また明……」


「悪いなまっかっかさん、君は明日、俺たちとは会えない」


「は?」


 踵を返したまっかっかさん、俺の言葉で再びこちらを振り返り、そしてソレは、俺たちとまっかっかさんの間に降り立った。

 こちらからは背中しか見えないが、彼には前方が見えているだろう。

 ただ、あまりにも背が高いせいで見上げる形になっている様子だが。


 ソレ、は赤い服を着ていた。

 靴はなく素足。

 長い黒くサラサラな髪とツバ付きの赤い帽子。

 赤いワンピースから伸びた手頸にはためらい傷の痕、複数。


 一見、八尺様に見紛う姿のその女は、しかし、白い服を着ていなければ、ぽぽぽと叫んだりもしない。

 ただ、出会ったモノを執拗に追い回し、どれほど逃げても目の前に現れるその運動能力の高さから、彼女はそう……アクロバティックサラサラと呼ばれていた。


「な……え?」


「ふふ、及第点、でもいい男ね、ヒロキ、貴方の願いはまっかっかさんが貴方たちの周りに出没しないこと。それ以外は、彼がどうなろうと構わない、わよね?」


「ああ、問題ない」


「それじゃあ、行きましょうか。私たちだけの世界へ」


「え? あ、ま、待っ……」


 焦るまっかっかさんを小脇に抱え、アクロバティックサラサラが跳躍する。

 瞬く間に俺たちの視界から消え去っていき、まっかっかさんの脅威はこれを持って消え去ったのである。


「ふぅ、恐ろしい敵だったぜ」


「私はヒロちゃんの方が恐ろしい、かなぁ」


「アクロバティックサラサラ。赤い服を着てるから彼女がまっかっかさんの即死で死ぬことは絶対にない。すなわち都市伝説的に、彼女の伝承の方が優先されてしまう訳ですね」


 そういうことだぜアカズさん。


「彩良さん、一応アクロバティックサラサラと出会ったわけだけど、スキル入った?」


「へ? あ、はい。あります、よ?」


「ヒロキ、怖い。私たちも下手したらああやって別の怪異ぶつけられて潰されていたかもしれないのね」


 やだなぁスキュラさん、ちゃんとテイムされたでしょ君は。というか放置してたら水没して死亡したままだったじゃん。あのボス部屋手直しした方がいいよ、マジで。

 さー、イベント終ったし寝てこよっと。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ