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755.中学校七不思議7

『な、何がどうなってるのぉーっ!?』


 頭を抱えてぐるぐるおめめなヤミコさんが絶叫する。

 満を持してハナコさん撃破を夢見た少女は、揃えた戦力を横から粉砕されて意味が理解できずに宇宙猫である。

 いやー、悲しい事件でしたね。


『で、どうするのヤミコ?』


『ええい、こうなったら私だけでやってやるわ! 勝負よハナコ!!』


 追い詰められた、というかいつの間にか追い込まれていたヤミコさんは破れかぶれに特攻を選んだ。


「手伝う?」


『いいえ、一人で十分よ。応援だけしておいて』


 ハナコさんが、俺に応援してくれ、だと!?

 俺の応援がハナコさんの力に!!

 全俺よ、今こそ幸運の使いどき、全力全霊で、応援だ!!


 フレー、フレー、ハ・ナ・コ!


『ちょ、ちょっとハナコ、後ろのオタ踊り始めたあいつめちゃくちゃ怖いんだけど!?』

 

『ああうん、ヒロキ、おとなしく小声で応援してて』


 おとなしく小声!?

 がふっ!?


「ハナコサンガンバレー」


 囁くような小声で、俺は誰にも聞こえない応援を始めるのだった。くすんっ。


『さて、覚悟はいいわねヤミコ! 鬼火!』


 ハナコさんが鬼火を発動する。

 同時に動いたヤミコさんは周囲に闇を放出。

 自身を包み隠すように闇の中へと消えていく。


『覚悟をするのはあんたよハナコ! 闇の触手!』


 うおお!? 闇の中からマジで手の形の触手が!?

 無数に襲い掛かってくる触手を、ハナコさんは鬼火をぶち当て倒していく。


『あははははは! どう、ハナコ! 手も足も出ないでしょ! 闇に引きずり込んで永遠に彷徨わせてやるわ!』


『ちょっとだけ、本気を出した方がいいかしら? 赤い手、青い手!』


 ハナコさんの影から飛び出す二つの手。

 闇の触手たちを掴んで捻って結び出す。


『ちょ、ちょっと!? 何それ!? 私の触手になんてことすんの!?』


 あーあ。触手たちが絡まって動けなくっちゃった。

 十数の触手が全て行動不能になると、闇から現れる触手がなくなった。

 どうやらあの結ばれた触手が彼女の操れる限界数のようだ。


 しかも絡まった状態では解除するまで新しい触手を生み出せないらしい。

 当然、そこを見逃すハナコさんではなく、青い手が闇の中に隠れたヤミコさんを掴んで引きずり出した。

 あーあー。青い手だから呪われちゃったよ。


『ぎゃぴっ』


 地面にびたんっと顔面から落とされたヤミコさん。

 なんとか青い手を振り払い、必死に距離を取る。


『ハナコのくせに、やるじゃない!』


「確かに初期レベル状態ならハナコさん勝てなかったかも」


『あくまで初期レベルなら、でしょ』


 そう、ハナコさんは今レベル250を超えている。

 さらに赤い手青い手やら他の七不思議スキルが使える状態だ。

 さらに言えば心象具現まで使えるんだぜ?


『いいわ。本気で潰してあげる。心象具現・闇の中の招き手』


『あら、まだ奥の手があったのね。全力だったと思っていたわ。じゃあこっちも、心象具現・トイレヶ丘の怪』


 周囲を覆い尽くす闇、を消し飛ばすようにトイレヶ丘が世界を埋めつくす。

 さすがハナコさん。展開力は本人のステータス依存だからレベル差で楽勝だったな。

 闇を払われたヤミコさんが唖然としていらっしゃる。


『な、馬鹿、な……』


『呆然としてていいのかしら?』


『っ!?』


 ふと気づけば、ヤミコさんの対面にいたはずのハナコさんはいなくなっていた。

 近場のトイレを通ってヤミコさんのすぐ後ろに移動していたようだ。

 耳元でささやかれたヤミコさんが目を見開き振り返る。

 しかし振り返り半ばでその顔面をハナコさんに掴まれた。


『オシオキの時間よ、ヤミコ』


 ヤミコさんの頭をひっつかみ、今必殺の生首ダンクシュート!

 まさかの便器に頭から詰め込まれたヤミコさんが犬神家。げふんげふん。

 違った。えっと便器に頭突っ込んだまま直立不動で突き刺さっている。

 なんというえげつない葬送法だろう。これはまさしく一撃必殺。トラウマモノの一撃であった。


 終始ハナコさん圧勝だったなぁ。

 確かに初期に挑めば苦戦してる以前に俺とタッグバトルしてなんとか勝てるかも、くらいの強さらしいヤミコさんだが、今のハナコさん相手にするには力不足。

 戦う前から勝敗は決していたようなものである。


「ハナコさん、便器に植えるのはさすがに可哀想かと」


『そう言われても……』


 さすがにこのまま放置、は可哀想だったので俺はヤミコさんの元へ行き、足をひっつかんで引っ張り上げる。

 うっわ、完全に水滴ぽたってる。えんがちょ。おっとこれは死語か。

 しかも白目剥いてるじゃん。こわっ。美少女顔なのに白目怖っ。


『こうはなりたくないわね』


 自分でやっといてよく言うし。

 まぁハナコさんがこんな状況になるのは想像すらできないけどね。

 というか、ヤミコさんどうしよう?

 とりあえず持ち辛かったのでお姫様抱っこ状態になってるんだけど、どっかに横たえるにも場所が便器だらけで困るな。

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― 新着の感想 ―
ヒロイン要素が分散して冷めてるように見えてヒロインのはずなのにヒロインに見えなくなってない?
コトリさん式ブートキャンプの成果 ヒロキン「あのー手加減は…」 ハナコ「したら絶対に調子に乗るからしない」
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