752.中学校七不思議4
結論から言えば、人面犬は無傷だった。
アレだよ、幻影俺たちに使って自分の頭にスコップ刺さったように見せてただけだったようだ。
残念ながら人面犬の生き死にとか興味なかった俺たちにとってはどうでもいい話だったので放置させていただいた。
とはいえ、窓に映る学生はおそらく窓を異界化かなにかしてるんだろう。そのせいでガラスではなく何か別の四次元素材みたいになった窓はスコップを破壊するほどの強度を見せつけて来たのであろう。
どのみち、近づかなければどうということはないようだ。
「んじゃま。窓に映る学生は無視して十三番目の教室を探そうぜ。えーっと一番目から順にみてくんだよな?」
「こっちの端が二年十二組だから向こうの端から見ていかないとですよ」
うっわ面倒臭い。
三階より先にこっちやってしまえばよかったな。
仕方ないので皆して移動。ほらキョウヤ君窓に映る学生とメンチの切り合いしないの。
「ここだな二年一組」
「隣の組に学生の幽霊いるけど?」
「放置で」
下手に話しかけて呪い受けたらどうすんだ。放置に決まってんだろ。
何かイベントがあるわけでもなし。
「二年三組ー」
一つ、二つと教室のプレートを数えていく。
普通なら十二まで数えてしまえば終るのだけど……
十程迄数えてみるが、変化はない。
あと二つで数え終わる。
「二年十一組」
『それで、これが二年十二組、ね』
「……ホントにでたよ、二年十三組。さっきはなかったよな?」
「これ、入ってみた方がいい?」
「ちょっと怖いからやめておいた方がいいんじゃないか?」
さすがにここに入って出て来なくなったら怖いよな。
アカズさんの個室空間で撃破出来るかどうかも保証されてないから、今回は見つけただけでいいだろ。
「とりあえず他の七不思議回ってみて、反映されてないならもう一回くればいいさ」
「それは確かに」
窓に映る学生が口パクで入らないの? とか入れよぉ。とか告げてくるが、声に出てないので俺らは理解できないよ。ってことで無視させて貰う。
「んじゃま、一階に降りて次行こうぜ」
「そうだな。それじゃ……なんぞアレ?」
あれ? タツキ君、何見つけ……うわぁ、ヤなもん出た。
それは対面の階段側から現れた。
ちょうど二年一組横にある階段だ。
俺たちからは逆方向だが、しっかりと視認できた。
黒色のスーツを着たのっぺりとした生物だ。
枝のような四肢に背中から生えた無数の触手。
顔はなく卵みたいなのっぺらぼう。
「スレンダーマン!? 何で学校にでてくんの!?」
「ちょ、向こう反応した! 歩き出したぞオイ!?」
すぐに逃げ出すタツキチーム。
仕方ない、メリーさんは俺の肩に、彩良さんたち一階に降りるぞ。急いで!
ヒツギにキョウヤ、さすがに戦おうとせずここは……ああもう。好きにしてくれ。ラズナさん、逃げるよ。
戦うぞ、とスコップ装備で立ち向かう阿呆二人を放置して、俺はラズナさんの手を引いて逃げる。
あー、ダメだ。戦いになってねぇ。悲鳴が轟きやがった。
一階に降りるとすぐさま渡り廊下に向かうが、向こうは障害物を排除し終えたようで、ものすごい速度で階段を落下してきたらしい。
これ以上は逃げ切るのは無理だな。
渡り廊下中ほどで追いつかれたので、戦闘態勢に入る。
精神異常耐性持ってないとSAN値が削られるな。
ラズナさん、無理そうなら見ないように。
「全員戦闘態勢! やるしかなさそうだ」
「彩良。触手は私たちで何とかしましょ」
「了解。テケテケ、右は任せるわ」
鎌を扱う二人が率先して触手の迎撃に向かう。
無数の触手が自在に撓り、二人に襲い掛かる。
うっわ、鎌で斬られてるのに切り裂かれてねぇ。無茶苦茶硬いなあの体。
俺も援護すべくレーザー銃を使うが、どうにも効きが悪い。
仕方ないのでヌグ=ソスたちから貰った銃を使ってみると、おお、大ダメージ。さすが近未来武器は効き目が違うな。
『赤い手青い手で触手を掴んだわ。これで二本動かせないわよ』
「私は今回邪魔にならないよう応援してますね。ハナコお姉様頑張って」
「ええい、すいません遅れました!」
タツキ君たちも異変を察知したのか引き返してきて援護に入る。
触手攻撃を三人がかりで押さえてくれているからか、徐々にだけどダメージを加えられ始める。
まもなくレッドゾーン、といったところで攻撃パターンが変化する
触手を振り回し拘束を脱出。
触手を足にして蜘蛛みたいな状態になると、俺たち向けてガショガショと地面に穴開けながら迫りくる。
いちいち移動方法が恐怖だなこいつ。
タツキ君たちは精神耐性ないだろうからかなりSAN値が削られてるっぽい、大丈夫だろうか?
ここで涎垂らしながら奇声あげないでほしいんだけど。




