747.渚に関わるエトセトラ7
悪楼が飛び跳ねる。
巨体が地面を穿ち、地面を陥没させては地震を起こす。
だぬさんがたまに体制崩してスリップ状態になってるけど、地面組は俺とだぬさんだけらしい。
他のメンツは皆回避して普通に攻撃してやがる。
俺も、っと遅ればせながらレーザーを引き抜き、悪楼の背後から次々打ち抜いていく。
おー、やっぱレーザーだからかダメージの通りがいいな。一気に総ダメージ数が一位になりそうだ。
それでも悪楼の体力が膨大だ。
未だに半分切ってない。
とはいえ、俺のレーザーが意外とダメージ叩き出してるのでそう時間もかからず半分を切る。
ん? なんかヤバそうだ。
「エルエさん、浦さん連れて逃げろ!」
「了!」
了解の解すら略し始めた。
エルエさんが浦さんから竿を手放させ、空へと舞い上がる。
一瞬遅れ。悪楼の開かれた口から水の主砲が放出された。
ぶち当たった地面を吹き飛ばし、木々を弾き飛ばし、大きな穴を抉っていく。
「あっぶな。未知なるモノさんの波動砲の数倍威力あるな」
「つかお前らレベル250超えてたろ、何でこいつこんな強いんだよ!?」
「おそらくだけどこのボスはパーティーメンバーの平均値くらいの実力ボスになるんじゃないかな?」
「そりゃプレイヤーにネスレしてるな、今は非常にいらん気遣いだ」
「ちなみに、コトリさんが参戦しようとしてないおかげで今の攻撃力や体力だけど、多分参加したら増えると思う」
「コトリさん、絶対に参加しないで!」
「あら、私にお願いしたいなら旦那様にお願いしたら?」
「畜生、ヒロキ、頼む!」
「はいはい、未知なるモノさんがお願いだからってことでコトリさんは防御に徹しておいて。あとエルエさん、浦さんをコトリさんの結界に放り込んで戦闘参加お願い」
「了」
あ、もしかしてその返答気に入った?
「ヒロキ、タゲがそっち行ったぞ!」
レーザーで打ちすぎたか。悪楼の怒りが俺に向く。
飛び跳ねながら体を入れ替え俺に向く。
口を開いたらもう、何が来るかは言わなくてもわかるだろう。
「マイマスター!」
エルエさんがすぐさま俺をかっさらう。
一瞬遅れて口から放出される水の波動砲。
ぎりぎり掠りかけた!?
海を割り裂く水の一撃が飛び交うサメの群れを破壊していく。
えげつない一撃だな。
なんか水平線の向こう側まで飛んでったぞ。
「御主人、攻撃要請を」
っていうかエルエさん、さっきから俺のことの呼び方もいろいろ変更してない?
「アップデート中でございマす」
さいですか。
エルエさんに抱えられながら、俺はレーザーを連射し続ける。
それに呼応するようにエルエさんも全身の武装をフル活用で悪楼へと叩き込む。
うおぉ!? なんだこの悲鳴みたいな雄叫び!?
え、悪楼が叫んだの!? 魚って咆哮するんだ?
「HP四分の一切った! レッドゾーン突入だぜ!」
「また変わった攻撃来るかもしれんぞ、全員気を付け……うおぉあぶねぇ!?」
なんかその場でばたばたし始めたな。
だぬさんが巻き添えくらいそうになって慌てて逃げ出している。
転がるように脱走しただぬさんが距離を取り、それを見越したように悪楼がその場で回転を始め……おおお、浮いたぁ!?
回転力で浮いたぞオイ!?
「水撃、来マす!」
エルエさんが即座に逃げる。
アイネさんも危険を察知して逃げる。
そして悪楼の口から水の柱が放出され、回転しているので四方八方というか360°回転を始める。
「全方向とか無茶苦茶すぎる!? これやるなら亀じゃねぇの!?」
「ン? 好機?」
アイネさんどうし……
おお、速度上げまくって一気に悪楼の真上に移動。そこから槍を携え高速吶喊。
なるほど、確かに悪楼は横には攻撃してるけど回転の中心となる真上は無防備だな。
豪咆が轟く。
アイネさんは背びれの付け根を的確に穿ち、肉を断ち骨を掘削、地面に槍ごと突き刺さる。
おお、一気に減った。もう死亡一歩手前だ。
全員、総攻撃!
無数の連撃が穿ち、そして、ラスキルを俺のレーザーが貫いた。
……御免。幸運が仕事したっぽい。クリティカル入ったわ。
悪楼の巨体が回転力を失い落下していく。
当然、アイネさんは既に真下から脱出済みなので誰が犠牲になることもなく、大魚悪楼を撃破したのだった。
意外と強かったな。骨のある魚だったぜ。
ドロップアイテムがどれほど凄いのになるかちょっと期待だな。
それにしても、随分地形変わったなオイ。
「くはー、疲れた」
「俺、あんなバカでかい敵と戦ったのは初めてだぞ」
「さすがヒロキ効果だな。おい、皆リザルドみたか? 俺は悪神討伐者と大魚捕獲者とかいろいろ増えたぞ」
未知なるモノさんが楽し気に告げる。しかし俺たちにそれだけの元気はない。
だぬさんもフェノメノンマスクさんもその場に座ったまま動こうとすらしなかった。




