744.渚に関わるエトセトラ4
今いるところは岩場だらけだけど、かなり高い崖の上である。
ポだかニョだかいう生物でもいないかと周りを見回すものの、ウミネコだろう鳥が遠くを飛んでるくらいしか生物が見当たらない。
「とりあえず戻ろうぜ」
「西側だっけか」
「さすがにそこの崖から海に飛び込む気にはならんだろ」
浮遊霊さんがおいでおいでしてるから自殺の名所か何かだろう。
皆、ついていくなよ? これフリじゃないからな。
まぁこっちにはコトリさんがいるから相手の呪いは完全シャットアウトだろうけど。
逆に呪っちゃうまであるし。
ここはおそらくだけどさらに東側に見える灯台に向かう道の途中なんだろう。
だからイベントらしいイベントは存在しておらず、このような地縛霊くらいしかいないのだと思う。
皆で坂道を下って西にある海岸へと向かう。
岩場が多くなってきて徐々に満潮の海と岩場のステージへと変わっていく。
お、なんか魚人いる。マーマンだな。
気のせいかな、シルキーさんをナンパしてない?
「アレ、ぶっ倒すか」
「なんか見た目的にアウトだろ」
ナンパマーマンたちに絡みに行くだぬさんとフェノメノンマスク。
未知なるモノさんはいかなくていいの?
「面倒臭ぇ。というかこういう時こそイレギュラーが、ほら来た」
海から飛び上がって来たサメが一匹。
即座に反応した未知なるモノさんの腕がブワっと四つに分かれ、ギザ歯だらけの腕に捕食されるサメ。
食らい付きに来たら食らわれたとか、サメとしての矜持が許さない、とばかりに必死にもがくが、未知なるモノさんの腕に磨り潰されるように消滅した。
俺のことえげつないとか言ってるけど未知なるモノさんも大概だよな?
「ギーァ!」
「チッ、まだ来るぞ」
ギーァの声に反応したテインさん。
戦闘態勢を取ると海からサメが飛んできた。
まさにミサイルの如く一直線に襲い掛かってくるサメを迎撃する。
一匹二匹……おい、なんか多くね!?
サメが次々海から飛びかかってくる。
未知なるモノさんがこれだよこれ! と自分の体験談を語りだす。
どうやら海に来たのは満潮時だったようで、未知なるモノさんはサメミサイル連射装置と戯れていたそうだ。
って、今のサメ三つ首だったぞ!?
エルエさんの一斉射を直撃されて瞬殺されてたけど、迫力がヤバかった。
「ひえぇ。私ただの怪異なのに、なんでサメ退治してるのよぉ!?」
とか言いつつ大鎌フリフリしながらサメを討伐し続ける彩良さん。
口裂け女だけど意外とオールマイティーに動けるよな。足速いし。
「サメ、空飛んでる!?」
制空権を持っていたアイネさんはまさか自分のテリトリーに魚介類が脅かしに来るとは想定していなかったご様子。
空を泳ぐサメと槍を片手に激闘を繰り広げていた。
意外と強いな、サメ。
「ちょ、なんかデカいの飛んできた!?」
「あれ、メガロドンじゃない!?」
「呪連砲」
さすがに不味いと思ったようで。メガロドンはコトリさんが出張って撃破する。
海辺、満潮時は近づくべきじゃないな。
皆もそう思ったようで少しずつ撤退して距離を取る。
ああほら、海側に居たらあの触手絡まされて海に誘い込まれてたし。
出てきたぞダイオウイカ。
十メートル大の巨大イカだがボスではないらしい。
「おら、おとといきな!」
「嬢ちゃん、大丈夫か?」
だぬさんたちもマーマン撃破出来たらしい。
というかフェノメノンマスクはシルキーさん気に入ったの?
それアザラシの妖精だよ?
ああ、マーマンからプレイヤーに変わっただけでシルキーさんは結局ナンパされるご様子だ。
助けてくれたはずなのに、とちょっと後悔したような顔してるぞ。
「ああもう、やっぱキツい」
未知なるモノさんが音を上げる。
どうやら選手交代らしい。
未知なるモノさんの居た前線に俺が向かう。
二丁拳銃で一気に行こう。曲射直射も交えて殲滅だ。
「今更だけど、良いなぁその二丁拳銃。リロード時間少なくてよ」
「アイテムボックスから的確に新しいの取り出して撃ってるだけですけどね」
「その技量があるのは羨ましいよ。俺にゃそんな方法出来ねぇからな」
未知なるモノさんの相手を捕食するだけで能力コピれるのも羨ましいけどな。
あ、五頭サメ。
「アレは貰うわ」
未知なるモノさん、いうが早いかささっと捕食。
これ、未知なるモノさんの頭が五つに分かれたりするんだろうか?
ちょっと見て見たい気はするけど、見たら後悔する奴なんだろうなぁ。
「あああ、シルキーさん待ってぇ!」
あーあ。フェノメノンマスクの奴強引に攻めすぎたのかシルキーさんはアザラシの皮を被ってさっさと海に潜っていった。
お可哀想に。




