736.進学小学校の七不思議12
長かった。
なんやかんやで上に行ったり下に行ったり右に行ったり左に行ったりでたらい回しにされたせいでここに付くのが凄く長かった気がする。
それでも終わりは来るもので、ついに七不思議最後の一つ、体育館の首無し少年へと辿り着く。
体育館に行けば会えると思ったんだけど……いねぇな?
首無し少年が自分の頭をボール代わりにしてるんじゃないのか?
『いないわね?』
「すぐ出現してると思ったんだけど、何かギミックでもあるのかな?」
体育館倉庫の方か?
皆も手分けして探してもらうことにして、俺とハナコさん、アカズさんは体育館倉庫を調べる。
うーん。ここにもいないか。
もしかしたら勝手にしまって閉じ込められるかな、とアカズさんを準備してたけどその気配もなし。
『ま、せっかくだし』
と、ハナコさんがバスケットボールを一つ取り出す。
『出てくるまで遊んでいましょ』
「皆でバスケか、それもいいっすね!」
「私バスケとかしたことないんだけど?」
『教えてあげるわ。ヒロキだけ敵ね!』
「ええ、そんなぁー」
くすくす笑うハナコさんがバスケットボールをてんてんっとドリブルしながら体育館へと戻る。
すると、対面するように体育館中央にそれはいた。
『なるほど、私の強化だから1ON1をやるまで待ってたわけね』
「ありゃー、まぁバスケットゴールは家にあるし、帰ったら遊ぼうかアカズさん?」
「ええ、お手柔らかにね」
無言のまま、腰を落とし、両手を広げる首のない少年。
まるでディフェンダーのようにハナコさんに立ち塞がる。
ハナコさんも理解してようで、浮遊を止めて床に足を付き、気合一息。
『行くわ!』
一対一のバスケ対決が開始された。
ハナコさんが服に手を掛ける。
バサッと引きちぎったと思えば、いつの間にか体操服に変化していた。
霊体だから服の変更は自由とはいえ、興奮しますっ!
というか、ブルマじゃないすか! ブルマじゃないすかっ!!
ゼッケンにははなこの文字だし、分かってる! 分かってくれてるよハナコさん! というか男共ハナコさん見んな! その目全部ぶっ潰すぞゴルァ!!
ドリブルしながら走るハナコさんが尊い。
流れるように尾を引く髪が風になびき、飛び散るような気がする汗が煌めいている。
少年霊に真正面から突撃し、当たる瞬間体を反転させて自身の体でボールを隠す。
そのままくるりと体を入れ替え、少年霊の側面をドリブルしながら通過、出来ない!?
ぎりぎり手で牽制することでボールを奪われることはなかったが、まさかの反応に驚くハナコさん。
まるでハナコさんがああ動くと分かっていたような動きだった。
まさか!
即座に気付いた俺は周囲を探す。
いない、いや、そんなはずはない。奴は必ず不正してる!
待て、頭だけなら! いた!
「ハナコさん、上だ! バスケゴールの上に首がある! こっち側からハナコさんを見てる!」
『なるほど、不正よね、ソレ!』
『残念だけど不正じゃないよ、これもそっちも僕の体だ』
『あら、体であればいいのね?』
その瞬間、ハナコさんはバスケットゴール目掛けて思いきり投げる。
『なっ!?』
さすがに遠すぎる。
思った少年霊の目の前で、赤い手と青い手がボールに追いつき、そのまま掴んでゴールへとボールを叩き込む。
『は?』
『これも、私の構成物質の一部よ』
『これは、参ったな。まさかすでに別の七不思議を取り込んでいたとは』
『ふふ、ほんとは私を負かせたあと、ヒロキと戦ってギミック解かれれば私に能力付けてたんでしょ』
『まぁ、そうなんだけどね。うん、じゃあ仕方ない。このスキルが君の糧になればいいんだけど』
「戦闘継続系スキルね。体力が尽きてもしばらく動けるらしいわよヒロキ」
「え、それアカズさんが言っちゃうの!? いや、別に問題はないんだけどさ」
普通そこはハナコさんが教えてくれるもんじゃないの?
とはいえ、せっかく教えてくれたアカズさんに感謝を示さないわけにもいかない。
さすがにそれは人としてアウトだ。
アカズさんに感謝を示すと、別に気にしなくていいわよ。と少し恥ずかしそうに告げてくる。
アカズさんって結構ツンデレ気質だからなぁ。
こっちの嫌がることをしつつも寄ってきてよ、みたいなシグナル出す時あるし。
多分ずっとボッチだから距離感が分からないんだろう。
『仕方ない、今回はおとなしく負けを認めるよ。七不思議、完走おめでとう諸君』
―― ワールドイベント、進学小学校七不思議がヒロキ、タツキと愉快な仲間たちチーム、世紀末モヒカンズチームにより七巡り達成されました! ――
しかし、思うんだけど、他のチームはなんで七巡りやってないんだろ?
レベル的には十分突破できるだろうに。
 




