735.進学小学校の七不思議11
次にやって来たのは一階の渡り廊下から向かえるプールである。
体育館とプールは隣接しているので移動するのは楽でいいな。
他の七不思議もこれぐらい隣接してくれてりゃいいのに。
「今回のプールの怪って足引っ張るだけだっけ?」
「えっと引きずり込む霊ですね。溺れてしまうので死亡することもありそうです」
「まぁどっかのマンガみたいにジョージやらボブが出てこないだけマシか」
「プールの怪談も結構学校によって種類ありますよね。引き込む霊だったり四番コース泳ぐと呪われるとか、夜中に練習すると知らない誰かがコーチしてくれるけど信頼しすぎると連れてかれるとか」
「俺、プールで泳ぐ人面魚とか聞いたことあるな」
「実際プールに鯉とか亀放し飼いしてたとこもあるらしいぞ。昔だけど」
「俺ァプールの中にある白い円形の奴、あれ拾ってると稀に人骨拾う噂とか知ってるぜェ」
それは初めて知ったわ。お前が作ったんじゃねぇの?
「実は引き込む霊は河童、何て噂もあったよね」
「キョウカ、さすがにそりゃねぇよ」
「えぇ!?」
「ネネコさんに謝っとけ」
うーん、ネネコさん連れて来てたらなんかイベントあったのかな?
他にもなんか見逃し……あああ! ミ=ゴ! 確かアイネさんイベで遭遇するのあった!
あとで校長室戻ってミ=ゴの人に聞いておこう。生きてる奴らに会うにはどうしたらいいか聞いとかないと。
死亡済みのでも出会ってしまえばいいのかもだから後日アイネさん連れてくるのもアリか。
それにしても、プールサイドまで来たけど怪しい気配はないな。
これ、水着に着替えないと発動しない感じか?
「別にそんなコトしなくてもプールサイドから足入れてみたらいいんじゃないです?」
「あ、それは大丈夫。ここに行くと分かった時点でヘファイで買い物しておいたから。なので、はい」
と、タツキ君とダイスケ君に釣り竿を渡す。
「え? なんですこれ?」
「はい、これ餌ね。プールに垂らして釣れるまで待機」
それは足の模型だった。
アラクネ装飾店のマネキンの足だけ買わせて貰ったのだ。姐さん、すごく変な顔してたけど、俺の趣味じゃないって何度言っても聞いてくれなかった。
素足を模った模型を餌に、プールで釣りを開始する。
「いやいやいや、ヒロキさんさすがにこれは食いついたりしな……なんかプールに影出来た!?」
「こっちに近づいて来るぞ! タツキ、これ普通に食いつく奴じゃないか!?」
「食いついたらそいつ諸共引き込まれないよう皆引っ張り上げるの手伝ってくれ」
俺、タツキ君、ダイスケ君の三人が糸を垂らす役。
その背後にメンバーが陣取っていつでも引っ張れるように待機して貰う。
しばし、三人が息を殺して待つ。
「ヒット! って、うわっ!?」
タツキ君の餌に食いついた。
慌てて引っ張ろうとするタツキ君だったが、想定外の強さに釣り竿ごと持っていかれた。
プール中央付近に引き込まれていく疑似餌に少し悔しそうにつぶやく。
「あーぁ……」
「また来るぞ!」
「ダイスケ君、次は君だぞ!」
「任せてくれ! 力仕事は俺の……嘘だろ!?」
一瞬の拮抗。しかしリールを巻くより早くダイスケ君が引き込まれそうになる。
慌てて他の皆が駆け寄り彼を引っ張るが、すでに体制が崩れたあと。皆まとめて落とされかねないと気付き、舌打ちと共にダイスケ君は自ら釣り竿を手放した。
「ヒロキさん悪い、タイミング逃した」
つまり、俺と霊の一騎打ちか。
こい、食らいつけ、そう、そこだ。あとは耐えて耐えて、耐えての……
「フィッシュ! フィーッシュ!!」
皆に支えられながら、俺はリールを巻き続ける。
あまりに強く引かれるときは糸を解放し、ゆっくり、確実に引っ張っていく。
しばしの格闘。そして……
「プールの怪、とったどーっ!!」
足の疑似餌に抱き着いた少年スイマーが引き上げられた。
何とも間抜けな姿ではあるが、ある意味撃破完了である。
「えーっと、初めまして?」
『はじめまして。これ、足じゃないですね?』
「そうだね」
『……』
「……」
『あの、帰っていいですか?』
「えーっと七不思議六つ目ってこれで体験したってことで良いのかな?」
『僕に聞かれても? でもいいと思いますよ』
意外と会話できるタイプだなプールの怪。
交渉の結果、テイムは出来なかったが協力はしてくれることになった。
とはいえ、テイムキャラたちがここで情報交換したりするのは、何とも嫉妬しそうになるなぁ。
やっぱり俺もほしいぞ霊界通信機。
「さて、プールの怪はこれでいいだろ。最後は体育館。皆揃って体育館に急ごう」
「別に急ぐ必要はないけど、ハナコさんの強化が待ってるからヒロキさんの食いつきが半端ない」
「ま、急かされてるしさっさと行こうぜ。プールの怪、ソイツぁお前さんにくれてやる。んじゃな」
足の疑似餌に引っ付いたままのプールの怪をその場に放置。
あ、いや、とりあえずプールにリリースだな。




