731.進学小学校の七不思議7
どうやら校長先生たちは額縁から出てくることはないらしい。
その場でくっちゃべってるだけのようだ。
よくよく喋りなさる。
初代校長は白黒写真らしい。
二代目、三代目も白黒で、四代目からカラーになる。
そして五代目まではなんか偉そうなお爺さんとか、眉毛に目が隠れたお爺さんとかなのに、六代目になると五十代くらいの少し若いおっさんになる。そして七代目、アロハシャツに白髪のファンキーそうなお爺さん。その2010眼鏡はどこに売ってたんです? 八代目はどう考えても殿様ファッションだ。おしろい塗りたくっておバカそうな顔をしている。そして九代目、どう見ても黒人さんだ。坊主頭に白い歯を煌めかせている黒人校長はHAHAHAと笑いながら英語で会話している。
他の皆さん多分わかってないぞ。
初代なんてぎ、ギブミーチョコレート。とかよくわからないこと言い始めてるし。
あ、黒人校長諦めて片言の日本語使いだした。
十代目校長は、なんだこれ? どう考えても人じゃないぞ。
マイノグーラさん、これ知ってる種族?
「あぁん? あー、ミ=ゴだな。ここの校長やってたのか?」
「うむ、人間を知るために教師として潜入したのだがな、なぜか前の校長に気に入られて校長にさせられた。おかげでこのような変な状況になっている」
「HAHAHA君ニハ光ルモノヲ感ジータヨ」
黒人校長、多分珍しさとかノリで次期校長選んだな。
「あれ? でも霊になってるってことは既に死んでる?」
「その通りだ。任期満了時に次期校長を指名しようとしたのだがね、まさか直前に身バレするとは思わず、しかも奴めに殺されるなど、忌々しい。ああ、現校長は普通の人間だから安心したまえ。教頭がそのまま繰り上がったんだ。彼には苦労ばかり掛けてしまったよ」
い、意外とまともな性格っぽい。
「信用はせん方がいいぞ若いの、その生物はもともと人間を観察し吸収同化しようとしている危険生物だからな」
「そうそう。全く何十年と校長を務めさせて我が歴史ある進学小学校をミ=ゴの苗床に変えようなどと、嘆かわしい」
訂正、マジヤバい系の生物だった。殺されててくれてよかった。
「しかし、彼は凄かったな。まさに英雄の所業だよ。ミ=ゴ君を殺す術を持っていたんだから」
「まったくだ。人間には殺されないだろうと油断していたとはいえ、まさかあれほど鮮やかに真っ二つにされるとはね。ヴァンヘルシングとかいう彼は強いよ。しかも……」
「しかも、ミ=ゴ君を吸血鬼と間違えて正体暴いた末の瞬殺だったからねぇ」
間違いで殺されたんかい!?
しかもヴァンヘルシング? 確かモンスターハンターだよな?
「ヴァンヘルシングかぁ。確か大学教授でしたよね」
「は? モンスターハンターだろ、いろんな武器使うめっちゃ強い人」
「いやいや、ドラキュラの小説で出てきた大学教授の人でしょ」
いろんな作品で使われてるからどれが最初なのやら。
「いやいや、初出は小説だって。ダイスケの言ってるのは映画の奴だろ。あー、でも運営がどっちの役割で設定したかは、多分お前の方っぽいなミ=ゴを瞬殺してるし」
「映画見てキャラクターをゲームに取り込んだタイプか。ってかそういうのだと都市伝説系はジェイソンとかフレディとかも出てきそうじゃね?」
さすがに猟奇系は遠慮したいなぁ。
デスゲーム委員会も早急に潰すつもりだし、そういうのはいらない方向で。
え、未知なるモノさんとか普通に猟奇系? あれは外の神系だからセーフ。
「ってかよぉヒロキ、ここって他になんか起こンのか? 次行こうぜ次」
モヒカン君が皆の総意を伝えてくる。
皆そろそろ出ようかって思い始めてたみたいだけど誰も出ていく気配はないし、会話も終わらないってことで待っていたようだ。
ちょっと悪いことしたな。
七不思議って基本目撃するだけで良いみたいだし。
ハナコさんとかは戦いがあるし、テケテケさんとかは逃げ延びたりのイベントもあるけど、不思議体験さえしてしまえば七不思議に遭遇した、というフラグになるのだ。
つまり、校長のフラグは回収したのでもうお暇しても問題ナッシング。
次、行きますか。
「おや、もうお帰りかい?」
「せめてバカ殿スタイルに付いて一言言ってやってくれんかな?」
「出オチ乙」
「辛辣!?」
校長たちがわちゃわちゃしてたけど、無視してドアを閉める。
皆出る、ってなったら足早に出ていくんだもんな。結局俺がドア閉めることになっちまった。
「次、どこだっけ?」
「お待ちかねの保健室や。ワイのパワーアップが待ってんねん、早う行こうや」
「人面犬のパワーアップねぇ。保健室の子供? 小型犬にでもなるのか?」
「聞かれてもわからんがな」
まぁ行ってみるのが一番か。
しかし、なんでまた一階まで降りないといけないのか。ここの七不思議巡り面倒くさいなほんとに。




