726.進学小学校の七不思議2
「という訳で、音楽の教師してほしいんだけど」
『ごめんね音楽室の霊さん、気持ち良く引いてるとこ』
ピアノが勝手に動いている音楽室で、俺とハナコさんがピアノに話しかけていた。
四日連続でピアノを聞くと死ぬらしい、でもその呪いと無しで音楽の授業お願いできないか、と頼んでみたんだけど、どうやら向こうも教師だったようで問題なくオーケーが出た。
ただ、浮遊霊ではなく地縛霊の類らしく、ピアノから離れられないこと。四日連続で特訓に参加すると相手が死ぬこと、音の聞こえる範囲で四日聞くと誰かれ構わず死ぬこと、を考慮するとなると、あの訓練施設は使えないことになる。
呪いの音に関しては本人の意思で解除とかはできないらしい。
となると、専用設備にピアノ運び込むか、ここでやるしかないわけか。
まぁ、今はどこでやるか考えるのは後だ。
もう一人の音楽家を引き込めないと話にならないからな。
一応、ピアノ演奏に関してはしっかりと手伝ってくれるらしいので他のコーチメンバーを引き抜いてこないとな。
「あ、そうだヒロキ君」
「ん? どうした輝君」
ちなみに、やっぱりこの音楽室でも輝君は普通に存在していらっしゃった。
誰もいない音楽室のはずなのに輝君はいつもいるのか。君、呪いのピアノ四日以上聞いてるけど死ななくていいの?
「佐島朱莉って覚えてる?」
「同じクラスのNPCだね、どったの?」
「昨日なんだけど、彼女死んだよ」
……は?
「プレイヤーのイベントに巻き込まれて死んだんだ。一応伝えておこうと思って。あと、緑香さんと燦華さんも明日には死ぬんじゃないかな?」
「ま、待て待て、いきなりなんでだよ!? 死んだの!?」
「NPCだからねぇ、テイムもされてないからもう戻ってこないよ」
いや、重要情報。あの二人も死ぬ? さすがにそれはちょっと、せっかく助けたのに後味悪いだろ。
「詳細、知りたい? あと朱莉さんの助け方と」
クスリ、微笑む説明士輝。気のせいか、今まで普通の情報通としか思ってなかった彼の、七不思議部分を見せられた、そんな気分だ。背筋がゾクッと来やがった。
輝君の持っていた情報を教えて貰う。
迂闊だったな、そうだった。NPCは復活しない。テイムキャラなら復活はできるがただのNPCは復活しないんだ。
一度の死亡でそのAIは電子の海へと消えちまう。
だから、佐島朱莉はもう……と、思いきや。実はNPCは復活の可能性もあるらしい。
それがプレイヤーによる黄泉からの復活。
死者の国とされる黄泉でしばしの滞在を行い、そこから地獄か天国へと向かうらしい。
この世界だと賽の河原とかが黄泉の国に当たるようだ。
なるほどなぁ、ここで黄泉世界と地獄に付いての情報が手に入る訳か。
朱莉を復活させるためには黄泉のある場所、つまり黄泉比良坂を通り抜けた先に向かわねばならない。
黄泉比良坂に関してはチートな地図にすでに書き込まれてるので輝君による案内は不要。
ともかく、俺の行動としては今日進学小学校の七不思議を攻略、明日の朝緑香と燦華を救い出して、ディーネさんの音楽事業を進めながらセイレーン探しを行いつつ黄泉比良坂に向かって朱莉を救出。ついでにヘンリエッタさん連れて行けば生還イベントもできるだろ。地獄に関しては一旦場所を教えてもらうのがいいかな。
あと、黄泉世界の供物は食べない方がいいらしい。
黄泉の住人になるんだと。
となると、史実通りの道具は持っといた方がいいのか。
なんだっけ、いくつか持ってたよなイザナギさん。
あとでネットで調べておこう。
学校前で待たせていたメンバーの元へと戻り、俺たちは普通小学校から進学小学校へと向かうことにした。
その道すがら、得た情報を皆に伝えていく。
アイドルチームと交代し、今回向かうメンバーは、タツキチームとハナコさん、テケテケさん、アカズさんは必須。暇だからって理由でついてきたマイノグーラさんとギーァを加え、プレイヤー陣はモヒカンズが加わった。彼ら曰く、俺らに続いて七不思議突破を目指したいんだと。
あの後旧校舎をラズナさんたちと自力突破して全員旧校舎の七不思議突破という称号を貰ったらしい。
下っ端のやられやくなのによく全員突破できたな。
やはり最後までの攻略方法一度でも見てたら攻略は可能なのかもしれない。
あとは一度突破されたことで難易度が下がったこともあるのか、いや、おそらくレベルが上がったからこそのごり押しだな。
七不思議突破に関してはその学校の七不思議全てを撃破する必要はない。
体験して生還できればそれでクリアなのだ。
「フヘヘ……ついに来ちまったなァ、俺らがよォ」
「死んだぜェ? テメェら全員、もう終わりだァ」
「ヒャハハ、夜の進学小学校? 大したこたぁ、ねぇよ」
「ウヒヒ、お、オレ、もう我慢できねぇ、七不思議攻略、楽しみだぜェ」
うーん、どう見ても全滅フラグにしか見えないんだよなぁ。
大丈夫かこいつら?




