724.泥船乗ってアイドルデビュー7
役所に向かって事務所の名前とオシムさんの芸名を変更する。
落日オシム改め、昇龍オガム……なんでそうなった?
あれ? なんでそうなった?
おかしい、俺もおっさんも日昇ノゾムとか若芽メブクとか考えてたはずだ。
なんでオシムさんがオガムさんになってるの?
あれ、おかしいな。ま、まぁ一応登ってくぞって気迫は伝わるからこの芸名でいっか。
と、いうことで、役所で手続き終えた俺たちは新たな社名となったアルケスへと戻って来たのである。
しかし、どんな契約もこのゲーム内だと役所を通さないといけないっていうのは面倒なのか、楽でいいのか。
まさか役所で奴隷契約まで出来るとは思わなかった。いや、やらんけど。
というかなんで俺が奴隷二人も所持していることが把握されてんだ?
受付の人、俺のこと汚物見るような顔で見て来たし。
サユキさんとユウキさんの奴隷化は俺のせいじゃないんだって、アレ全部ユウキさんの自滅だからな。
「さて、それじゃまずはこの練習施設を変えようか」
シミュレーションゲームって奴だ。アイドルレッスンするにも設備が伴ってなければアイドルとしてのステータスは低いまま、ならば全てを最高級品に変える必要がある。
事前に必要なモノは案内人君とピックアップ済み。
今日は各所に連絡を入れて即日購入交換を行うのだ。
まずは壁面に全身投影型の鏡面を設置。
さらに照明設備の充実。
床面の変更、カメラ設備の購入。
音響設備購入、アイドル衣装もすでに購入した。
イベントなどがない日などはここで自主練ができるのである。
あと必要なのはなんだ?
コーチか。確か歌い方次第で喉潰したりするらしいからな。しっかりとしたコーチは必須だ。
音楽に秀でたコーチ、誰かいないだろうか?
ボイストレーニング施設おっけー、ダンストレーニング設備おっけー。
体力づくり用のマットと器具は購入したけど、もう少し広い場所ならもっと設備揃えられるんだけどなぁ。
事務所、ぶっちゃけ俺の家に移した方がいいのでは? いや、さすがにそれは事務所乗っ取っただけになっちまうな。
とりあえずその辺りは一旦保留だ。ここにある施設だけでも十分できるだろ。
あとはコーチ探してくるだけでよさそうだな。
アイドル育成のコーチ、ちょっと探してみるか。
「あー、それなんだけどね新人マネージャー君」
と、コーチを探すために音楽事務所の社長に尋ねてみると、言いにくそうに彼は告げる。
「すまん、今までの行いのせいでウチに来てくれるコーチはいないんだ!」
「すいません、僕が何人か連れてはきたんですけど、オシム、今はオガムさんの歌があまりにひどく、しかも直す気がないようなので」
「違いますぅ、直す気はあるけど治らないの! こんな歌声なんだから仕方ないじゃない。この歌い方を活かした歌にすればいいのよ!」
うん、つまりコーチは期待できないと。
んー、じゃあ、仕方ないレッスン場所を変更しよう。ここはもうそこまで使うことはないだろうし、オガムさんも俺らのレベリングに付いてきてもらうしかないな。
「え、訓練場所変えるの!?」
「その方がいいみたいだからね。社長とマネージャーさんは日程調整お願いします。これ、参加予定のオーディション番組」
「お、オイオイ。これはまた……なかなかキツくないか?」
「ふ、ハナコさんだぞ。落ちる訳ねぇだろ」
『私以外は?』
「それは、がんばれ!」
「ダメだこの人」
「でもヒロキさん。コーチ無しで大丈夫なんですか?」
「あー、いや、コーチはいないが訓練に関してはいくつか俺心当たりがあるんだ」
「そうなんですか?」
「ああ、そのために、オガムさん、悪いけど今日の夜、集合してくれない?」
「え? 夜ですか? まぁいいですけど、ゲーム時間あります?」
そういやこいつソシャゲマニアだったな。
というか連れていく必要はないか。
んじゃいいや。今の無しで。
「さて、そうなると、タツキ君たち誘った方があと腐れはないか。一応皆に連絡入れとこう」
「あの、ヒロキさん。さすがに私たち夜は参加できないんだけど?」
「なの」
りんりんさんたちは参加できないか。
まぁいいか、出来るかどうかまだわからないし。
「私も無理だ。この後予定がある。どこに行くつもりなんだ?」
「ああ、進学小学校の七不思議攻略しようと思って」
「なんでそうなる!?」
「あー、もしかしてヒロキさんの心当たりって……」
「ああ、音楽のプロっていったら、ベートーヴェンだろ」
進学小学校の七不思議に、そいつはいるのだ。
『あら、だったらウチの学校にもピアノの霊が居るわよ』
それもそうだ。せっかくだしそっちも交渉していこう。
あと普通小学校行くなら輝君にご指導願うとするか。いいコーチ紹介して貰おう。
歌に対するコーチなら、別に人間じゃなくてもいいからな。




