720.泥船乗ってアイドルデビュー4
「悪りぃ、遅れた」
俺は一人、泥船のアイドル事務所へとやってきた。
すでにメンバーは揃っているようで、遅いですよ、とりんりんに怒られる。
昨日とメンバー変わらんな。
他のメンバーは今回このメンツに任せて独自の行動を開始しているそうだ。
マイネさん辺りは合流して着そうだったんだけどなぁ。
まぁいいか。
プレイヤーメンバーも入れ替わり参加ってことならそのつもりで行動すればいいだけだし。
「それで、ヒロキさん、何してきたんですか?」
「ん? ああ、だぬさんとちょっと悪巧み」
「あー、デスゲーム関連なの」
「ちょっとした悪巧みだって。大したことはしてないぞ。それより案内人君、アイドルの育成方法について調べたか?」
「はい、ある程度勉強してきました。他の皆さんも先ほどどんなことを調べたか報告してたところです」
「なのさんたちも調べてくれたのか」
「なの! ちゃんとあいまーっしゅやってきたの!」
「それソシャゲ!?」
「わ、ワタシたちはちゃんと調べたあるよ!?」
うん、まぁ調べてはくれていたらしい。
勇者ブレイドはオタ踊りとか覚えたそうだ。
いや、そこじゃないんだよ覚えるべきは。
オタ踊りはファンが付いたアイドルの辺りだろ。
そこに至る前のアイドルになるための方法とか、仕事の取り方とか、レッスンの仕方とかをだね。
あ、でもなのさんのゲーム知識意外と役立つ。
どんな訓練があるかとか選択肢で出てきてるからそれを現実に落とし込んで、やる内容はこっちで調べればいいわけだ。
一応プロも目の前にいるのでレッスン自体は問題ない。
レッスン場所も三階に用意されてるらしいし。
そう、ここの三階がレッスンルームだったのだ。
昨日ログアウト前に見せて貰ったけど正直酷い。
とりあえず動ければいい、というだけの部屋であってレッスン場所としては底辺だ。
そもそも自分の動きを見るための姿見すらないってどうなんだ?
ま、金はある。必要な機材は俺が揃えれば事足りる。
ただ、ディーネさんだけにかまけているとドール攻略が進まなくなる。
時間もないし手早く済ませられるように端折れる場所は端折っていこう。
「とりあえず僕からの報告ですけど、仕事を取るためにはやっぱりプロデューサーとかテレビ局のお偉いさんに顔つなぎしとかないとダメですね。マネージャーとアイドルで挨拶に向かって今度こいつをアイドルにしたいんです、みたいな挨拶とお土産ですね、昔はお金とかだったみたいですけど、今は有名どころのお菓子でいいみたいです」
夢も希望もねぇなぁ。コネがモノを言う世界かよ。
もう少し夢のある職種だろ普通。多分だけど製作者の悪意がここら辺のシステム改悪してやがんな。
ま、やりようはある。
要するにコネ使わない方法といえば、オーディションで歌って合格すればいい。実力でのし上がる奴だな。新人オーディションとかに応募していっときゃ名声上がんだろってところだ。
「マネージャーさん、ディーネ、必ずゴブリアの隣に行くから!」
「いいやダメだ。ゴブリアの隣じゃねぇ。どうせ行くならゴブリアの前だ」
「い、いけるかなぁ……」
弱気だなぁオイ。だがまぁ問題ない。
「んじゃま、まずはオシムさんの服装変更だ。皆早速移動しようぜ」
俺に促され、皆が移動を開始する。
プロなのにオシムさんたちの方が慌てていたくらいだ。
もう少し落ち着いてくれません?
「で、では私たちは所属タレントの書類を作成しておくよ」
「記載漏れとか止めてくださいよ? しっかりとお願いします」
「当たり前だ。前にそれで一人潰してしまったからな。もう二度と行いはしない」
やったんか!?
絶対フラグじゃねぇか。名前売れ始めたら絶対に恨みぶつけてくるイベントのフラグじゃねぇか。
ま、まぁいい、それはそれ、あとで案内人君と相談して対処法考えよう。
「マネージャー君も来るか?」
「あ、僕は社長の補佐してますんで」
断るのかよ!?
ほんとこのマネージャー味方で大丈夫か? 情報大手に売ったりしてないか?
ふむ。なんか嫌な感じだな。
散紅さん、悪いけど残って貰ってもいい?
「あら、私は高いわよ? まぁ行く場所に私の買う物はないのでしょ。ならいいわ。服装に関しては任せるから監視してあげる」
散紅さん、メスガキ気質だけど、そのデメリットを消し去ってくれるくらいには頭がいいんだ。
だからマネージャーの監視には多分打ってつけのはずだ。
散紅さんに残って貰い、俺たちは外出することにした。
一応もしもの場合は闇のゲームやっちゃってくれとは伝えておいたので身の安全は確保されてるはず。というかすでにレベル250超えだしな。そんじょそこらのオタクに負けるような体のつくりはしてないはずだ。




