712.廃図書館2
最初の部屋を浄化しきった。
敵がいなくなったのでひとまず皆分かれていろいろと調べていく。
「どうだ? 何か見つかった?」
「いえ、さすがに最初の部屋だからか何もないですね」
「んー、なんとも変な感じねぇ」
妖精さんがふよふよと飛行して俺の頭の上に止まる。
人の頭の上、妖精って好んで止まるよね。なんか理由でもあんの?
「おい、姉貴、さすがに歩けよ!?」
「もう限界っす。ここから一歩も動けませーん」
ユウキさんとサユキさんが寸劇し始めた。
他の場所を見回ってる面々も戻ってくる。それなりに広い部屋だけど、全員で探すと手狭だからなぁ。
探索もすぐに終わるというものである。
「よし、それじゃ次の部屋行こうか」
「待てヒロキ、一人、足りんぞ?」
テインさんが一番最初に気付いた。
そんな馬鹿な、と周囲を見ると、メリッサさんの姿がない。
「あら? メリッサならさっきまで私の前を探索してたわよ?」
「となると、もう戻って来ててもおかしくない、な」
「ここのトラップ、発動してますね。ヒロキさん、メリッサさんの生存は?」
「それは……あー、テイムキャラ死亡になってる。メリッサさん死に戻ったみたいだ」
何もなかったはずだが、どうやらメリッサさんがトラップに掛かったようだ。
「アカズさん、一応スキル使ってみて。何かないかな?」
「個室スキルね。ええと……とりあえず霊的なモノではないわね。この室内には何もないわ」
「さすが150レベルが適正なだけはあるか」
そういう問題かな?
まぁいいや、とりあえず次の部屋に行こう。
皆、互いに警戒しつつ次の部屋へ。
最初の部屋とそこまで変わらない部屋の中に、悪霊たちが大量に潜んでいた。
当然聖属性魔法で根こそぎ一網打尽に……なんか、本が空飛んでる。
ばっさばっさと羽みたいに紙広げて飛んでいる。
「魔導書かな?」
「とりあえず燃やしていいかな?」
「待ったティリティさん。貴重な本かもしれん。とりあえず捕獲する」
本の隙を突いて地面に叩きつける。
ダメージを受けた様子の本を取り上げると、ページを開く、開……べりゅぃっ
「ぎゃあぁすぷらったぁ!?」
ページを無理矢理開こうとしたらなんか肉感のある中身がべりゅぃって。
本の魔物とでも言うべき存在が光となって消えていく。
え、怖、普通に怖。
「ひ、ヒロキ、何今の?」
「と、とりあえず本の魔物は倒してしまってよさそうだ。おそらく本が魔法で動いてるとかじゃなくこういう生命体なんだろう。スケさんカクさん遠慮なくやっておしまいなさい」
「誰がスケさんだっ」
ほんと誰だろうね。
そうこうしているうちに遠慮の必要がなくなった我らがテイムキャラたちにより、エネミーたちが駆逐されていく。
「っし、んじゃ探すか」
「トラップ、ほんと気を付けてくれよ」
「気を付けててもヤバいトラップの可能性もあるだろ?」
「そんなのどんなトラップだよ」
『ふむ。確かに気になるところね』
ハナコさんがむぅっと唸る。
トラップの種類から何か分かればいいんだが。
デストラップ系はだぬさんが専売特許なんだけどなぁ。
残念ながら彼はいないのでこのメンツで何とかするしかない。
しかし、アカズさんの個室スキルに反応ない敵かトラップってなんだ?
そんなヤバいのなんてあり得るのか?
それは、ある種の偶然であり、幸運だった。
探索用マップを開いてこの室内のどこかに異変がないかなって見ていた時だ。
急に一部マップが増え、そして消える。
同時に味方だった光点が一つ消え去った。
なんだ、今の?
いや、待てよ。
今までの状況を考える。
アカズさんの個室に反応せず、マップが増え、人と共に増えたマップが消える。
知ってる。この現象、俺は知ってるはずだ。というか味方にいるだろう。アカズさんがそのタイプじゃないか。
ああ、そうか……トラップが見当たらないんじゃない。
この廃図書館自体が、トラップだ。
そう、ここは旧校舎と同じ建物自体が敵のステージだ。
となれば、俺たちは今体内に入ったままの状態と言っていいだろう。
入って来た扉に視線を向ける。
閉じてる。
いつの間にそうなった?
いや、これは、かなり不味い状態か。
ここで下手に騒げば、おそらく廃図書館は俺たち全員を一気に殺しにかかってくるだろう。
この体内にいる状態では袋のネズミ、俺たちが生還できる可能性は限りなく低い。
いかに廃図書館に気付いたことを気付かれることなく、クリア条件を満たせるか、これがこの廃図書館のギミックだろう。
さて、どうすっかな。
俺一人で考えていい案が出るとは思えない。
一番いいのは案内人君を巻き込むのが一番だが、廃図書館に気付かれずに引き込めるだろうか?
「どうしたんですヒロキさん?」
不意に、件の案内人君がこちらに声をかけて来た。
これはこれで、好機か?




