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701.運営は困惑している

 後夜祭は無事、終わった。

 正直言えば最後の最後でケチが付いたような気がするが、それはプレイヤー側ではなく運営側に関してだ。

 まさかエンドコンテンツが自動発動してしまうとは想定外にもほどがある。


 ヌグ=ソスたちからプレイヤー全員に援軍要請、準備期間こそあるが、エンドコンテンツは確実に発動してしまっている。

 運営としては予想外のイベント出現で反省会を開いたり打ち上げをしたりするような暇すらなくなったのである。


 本日も最低限運営ができるメンバーを残しての緊急会議が開かれていた。

 正直川島の精神は風前の灯火だ。

 ダメージが多すぎる。


「ふむ、川島君に緊急会議の理由を聞こうとしたんだが、大丈夫かね、えーっとヒロキン担当君?」


「室長は精神的にちょっと休ませた方がよさそうなんですが、現場指揮の関係でいなくなってしまうと困る人材です。社長をわざわざ呼ばせていただいたのは、我々の判断だけで行うにはあまりにも大きくなりすぎているほのぼの日常オンラインに関して許可をいただきたく思い、今回の会議に出席いただきました。さすがに室長に報告を頼むわけには、今は無理そうでしたので、直接ご判断いただいた方がいいかと思いました次第です」


「なるほど。では概要を聞かせて貰おう」


「はい。イベント担当、頼むよ」


「では、まず現状と現状に至るまでの報告から」


 イベント担当の代表から説明が開始される。

 スクリーン映像を交えたわかりやすい説明で、第三回イベントを行い七日間。クレームらしいクレームは結局四件だけにとどまり、そのクレームに関してもそこまで失態と呼べるものではなかった。

 社長は真剣に聞いているようなので、合いの手を入れるほどでもないようで、ヒロキン担当は一人息を吐く。


 正直、室長がやるべき報告なのだ。

 彼が使い物にならなくなってしまっているので仕方なく皆でフォローしている状況であるのだが、やはり社長への報告となると皆緊張して胃の当たりがきゅうぅと締まる感じがする。

 このままでは自分たちも室長と同じ状態になるのでは、という不安が鎌首をもたげるのだが、やらないわけにもいかないのが苦しいところである。


「と、なりまして、第三回イベントは大盛況で終わりました」


「ふむ。クレームも今までよりなかったらしいな。素晴らしい成果だ。他の部署にも見習わせたいものだが、そのプレイヤーの働きあってのことか」


「はい。力及ばず申し訳ございません」


「いや、運営側はよくやっていることは理解したよ。それで、緊急会議を行った理由はどこにあるのかね?」


「はい、実はこのイベント最終日にヒロキ君が召喚したヌグ=ソスが起点になっております。問題は後夜祭で発生しました」


 説明を聞いていた社長は、むすっとしたいつもの顔から徐々に驚きに変わっていく。

 そうだよな、とヒロキン担当も納得だった。

 本来エンドコンテンツとして出すはずだったイベントが人気出始めた今すぐに発動なんて頭おかしい状況だよな。


「な、なるほど、状況は理解できた。それで、君たちからの主張は?」


「三つ程、方向性を出しました。一つはヒロキ君が言ったように第四回イベントに落とし込むという方法。この場合ドールのレベル帯をどこに持っていくかで難易度が変わります。デフォルトの場合ほとんどのプレイヤーがレベル999前後だと仮定した脅威度設定を行っておりますのでこのままぶつけると確実にプレイヤー側の敗北。ほのぼの日常オンラインが閉鎖します」


「これからという時にソレは不味いな。しかし難易度設定を行う時間も少ないか。他は?」


「ドール襲来イベント自体をキャンセルしてなかったことにする。ですね。イベントとしては第四回イベントに新しく弱いドールを作ってイベント用にシナリオを作り直す方法です。エンドコンテンツ自体は封印処理しておいてドールが本当に襲来してこないようにしつつ、別シナリオで地球が滅びない程度のイベントに納める方法です」


「それが一番無難ではあるが、デメリットは?」


「最初からイベント作成を行うため時間がかかります。第四回イベントを半年後くらいに設定できれば問題なくできますが、さすがにここまでお膳立てされて一週間以上間を空ける、というのもクレーム対象かと」


「なるほど、川島君がああなる理由もよくわかるな、それで、最後は?」


「素直に謝ってプレイヤー側に補填を支払う。イベントは凍結、第四回イベントは予定していたモノをしばらくした後に投下します。当然クレームは入りますが、運営する上では一番被害が少なく済みそうです」


「なるほど、イベントを新しく作ることなくなかったことにするわけか。この場合得をするのはプレイヤーでも会社でもなく、イベント作成に携わる君たちの心の持ちようが楽になるという訳だね」


「その通りです。会社側としてはクレームが入る上に、おそらく記者会見を開く段階に突入すると思います」


「却下だな。ふむ。一番か二番。メリットが多そうなのは?」


「一番ですね。我々が行うことはドールの能力値を低くする程度、ある程度の歯ごたえを残しておけば、よほどのことがない限りクレームもありません。問題はプレイヤーが勝てなければほのぼの日常オンラインが終ります」


「嫌な賭けだな。やらなくていい賭けだが一番盛り上がるか。それで、君たちはその案を通したい、ということだね」


「可能であれば。別に二番目を選んで我々が苦労することは問題でないのです。あくまでもプレイヤーたちには楽しんでほしいという……」


「いい。理解した。許可しよう。君たちとプレイヤーたちの奮闘に期待する」


 許可が、下りてしまった。

 稼ぎとしては下策も下策だが、それでもヒロキン担当達は、このルートを選べることに喜んでいた。

 

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― 新着の感想 ―
こういうゲーム系の小説読んでると主人公のせいでサ終なりエンドコンテンツが爆速で近づいてくるのちょくちょくあるけど運営が可哀想になる笑
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