699.第三回イベント、後夜祭6
「ひでぇ、ひでぇよ、戦うの選択したのはマイネさんだろー」
「うっさい、まだ言うか!」
正座させられること一時間。
せっかくの自由時間がのきなみマイネさんの説教に当てられてしまった。
お笑いトーナメントもなんかもう決勝戦みたいなのやってるし。
畜生、もうちょっと出店回るつもりだったのに。
「あー、いたいた。ヒロキ君、そろそろ次のイベント用意を頼みた、どうした?」
「いえ、なんでもないっす、行きまっしょい」
運営の人が気を利かせて迎えに来てくれたのでなんとか解放されたが、覚えとけよマイネさん。俺の自由時間潰してくれたお礼は必ずしてやるからな。
「えーっと次はなんだっけ?」
「有志正義の味方によるヒーローショーですね」
「参加人数が多くなりすぎたから五人だけ正義の味方として出て貰うことになった奴か。実際元悪の秘密結社首領との闘いだしな。見ごたえは多分あるんじゃないかなぁ」
「ヒーロー好きなプレイヤー多いですしね」
下準備はある程度終わってるんだけど、俺は全体の動向を把握しながら適宜変更したりする役だ。要するに本番で現れたトラブル対処係という奴である。
運営側も警戒はしてるんだけどどうしても本番の失態はあり得るんだと。
その挽回を、今回のイベント成功させた俺が埋めろってことになったのだ。
ついにお笑い優勝者が決定してなんか優勝賞金みたいなの貰っていた。
そういうの出るんだ。
お笑いトーナメントが終ると、キレイなお姉さんが現れ司会進行を始める。
初めて見る人だけどあの人は? え、有志の有名人!? へー、あれか、ここで名声稼いでるのか。
グラビアアイドルらしいけど俺は知らんな。一部コアなプレイヤーがざわついてるけど、そこまで有名ではないようだ。落ち目のアイドルが必死に名声稼いで次につなげようとしてるんだろう。
上手くいけば俺みたいに稼げるかもしれんな。頑張れー。
お姉さんを戦闘員と思しきタイツ姿の誰かが確保する。
あれ、俺らが倒して集めてた服使ってるな。
助けてヒーローっとお姉さんが告げた後、なぜか皆にも一緒に言うように促し、皆揃って助けてヒーローと告げる。
そしてあらぬ方向から出現して戦闘員を蹴散らす正義の味方。
って、バイアスロンさんまじってる!?
五人パーティーの戦隊たちではなく適当にチョイスされたヒーローたちのようで、戦隊チームの一人とかも参加しているようだ。
意外とアベ〇ジャーズみたいでいいよね、いろんな戦隊が協力するの。
戦闘員が倒され、舞台からいなくなり、中ボスよろしく現れるスレイさんとエルエさん。
エルエさんスレイさんの創ったロボット怪人役なのか。
なぜか一緒にぽちもいるけど、有志か?
本当に正義の味方だし、必殺とかも使えるのでかなり見ごたえのあるヒーローショーになっていた。
ただ、必殺の余波で舞台装置壊れたりするのはどうにかしてほしい。
結果的には大盛況。
プレイヤーたちも大いに満足したようで喝采でヒーローたちを称えるのだった。
ヒーローショーが終るとビンゴ大会。
そろそろ宴もたけなわってところかね。
「んじゃま、そろそろ呼ぶか」
「ん、ヒロキ君何を呼ぶんだい?」
「ヌグ=ソスさんたちだよ。彼ら有名プレイヤーたちと話がしたいって言ってたでしょ。ただ話が話なので宴の終わり際に呼んでくれってさ」
「ああ、そういえばそうだったね」
「ビンゴゲームの終わり際に呼びますけど、問題ないです?」
「ああ。それは大丈夫だ」
川島さんの許可も取ったし、タイミング見て呼び出さないとな。
しかし、ほんとここ七日間は濃密だったな。
ビンゴ大会が始まり、皆が数字に一喜一憂するのを、俺はステージから少し離れた場所で見つめる。
光ある場所からはすこし遠ざかった暗がりにいると、すぐ隣に誰かがやって来た。
「なかなか、すごかったよイベント」
「楽しんでいただけましたかね?」
「ええ。もちろん。私もイベントはそこそこ楽しんで終わる派だったのだけど、皆との協力も悪くないわね。このイベントでいろんな人と知り合えたし。君に感謝かな。あの時譲ってもらったぽち、すごく活躍してくれたわ」
「ぽちは譲った覚えはないですよリテアパトラ七世さん。俺もエルエさん手に入れたわけだし」
「それでも、あの時悪魔を召喚して文字を読めるようにしたのは貴方だもの。私は恩恵に預かっただけ。未だにお礼できてないわ」
「おっと、お礼してくれるならデートでもどうです? なんちって」
「ふふ、いいわよ。ゲーム? それとも現実? どっちにする」
「え?」
あれ、これってまさか。
「あー、居ました! ヒロキさん、にリテアパトラさんもいるじゃん」
「イベント内では世話になったある」
俺が答えを発するより早く、俺を見つけて近づいてくる女性が三人。
りんりん、レイレイ、そして、なの。
「みつけたの、なのの初めて奪った奴、責任とれなの!」
「いやなのさん、責任取れってどうするある?」
「当然娶るの!」
「あらあら」
「ちょ、なの落ち着け、絶対後悔するから!」
「いや、りんりん、なのは落ち着いてるの、よく考えたの、こいつはヒロキンチューブで荒稼ぎしてるからガチの勝ち組だったの、つまり妻になれば金使い放題、嫌な仕事からも解放されて自由なの!」
「あら、貴女もソレ狙い?」
あれ、俺モテ期来た?
と、思ったのもつかの間、なのとリテアさんの瞳が$マークになっていた。
あ、これ尻の毛までむしり取られる奴だ……




