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686.第三回イベント、二十一日目ラストバトル10

「うわわ、速い!?」


 なのの小脇に抱えられた案内人は、今まで感じたことのない加速力に驚きの声をあげる。


「ほら、皆への指示続けるの。途切れれば途切れるだけ皆が大変なの」


「そ、そうでした」


 感動体験を味わいながら感動することを封じられた案内人は少し残念がりながら、指示を再開する。

 そんな彼の周囲を無数の弾丸が通り過ぎていく。


「ちょっと重量あるから体の反応が遅いの」


 申し訳ない、と思いつつも十分すぎる回避速度に舌を巻き、案内人は次々に指示を出していく。

 崩れ始めていた味方を鼓舞し、少しずつ立て直しを図る。

 まずはトンカラトンと激闘繰り広げるマイネさんとミツヅリチーム。


 残り二体となったトンカラトンは、それ以上斬ることができていないようでトンカラトン増加は今のところ防げている。

 あとは彼らの邪魔をしかねないヌグ=ソスたちの撃破だ。

 彼らはおおよそ1000もいない。

 体力的にもプレイヤー側とさして変わりないため、倒すのは一般プレイヤーでも十分できる。


 高火力のチューブガンやチューブライフルなどに気を付けさえすれば十分勝てる数だった。

 案内人は時間を確認する。

 あと大体一時間。

 イベント終了までイイ感じに時間が残っている。


 これ以上の増援はおそらくない。

 むしろここで敵の増援があるとヒロキ撃破はほぼ不可能となるだろう。

 だから、後はもう時間との勝負。


 とはいえ現状でも十分すぎるほどに拮抗状態だ。

 なにより大変なのが防御無視の弾幕型銃撃。最後の最後でとんでもない助っ人が来たものだ。

 数が多いヌグ=ソスたちの連携攻撃でプレイヤーの死に戻り速度が上がってしまっているのだ。


 しかも一人に銃弾一つ、で終わらず貫通して背後のプレイヤーまで撃破してくる銃撃だ。

 プレイヤーも対策は講じようとするものの、彼らの攻撃パターンをまだ理解できていないがゆえに大量の死に戻りがでているのである。

 

「ヌグ=ソスつえぇ!?」


「何あの連携連射。貫通だから避けきれない!?」


「横から降ってくる雨とかどうやってよけろと!? 速度特化じゃねぇんだよ!」


「ってかあいつら範囲魔法弾いたぞ!?」


「あれ見ろ、なんか気味悪い道具がみょんみょん唸ってる!」


「ヌグ=ソスって先進技術持ってたよな。アレもその一つか?」


「くっそ、ドラ〇もんじゃねぇんだぞ。未来の道具なんて使うんじゃねぇよ!?」


 どうやらヌグ=ソスたちは結構な道具を持ってきているらしい。

 魔法を弾いたり、物理バリアを張ったりとプレイヤーを翻弄している。

 一人一人持っている道具が違うようなので、しっかりと見極めれば的確なスキルや魔法で倒せるようだが、さすがに1000体もいれば入れ代わり立ち代わりで、見つけた弱点も周囲に紛れてわからなくなるというものである。


「ミツヅリ、行けるか!?」


「タツキ君たちはもう倒した後か。くぅ。確殺さえ当たれば……」


「下手に狙わない方がいいぞミツヅリ。攻撃個所が丸わかりだし対処しやすくなる」


「そうは言うがブレイド君、確殺さえ当たれば一撃なんだぞ?」


「だから狙うな、とは言わないがフェイント織り交ぜながら戦うくらいはやってくれ」


 そうしたいところであるが、ミツヅリは思わず口をつぐむ。

 すでに何度もそういう対処を行ったのだ。

 それでも避けられ、受けられ、トンカラトンに通用しない。


 自分とそう変わらないはずのタツキチームはもう終わっている。

 倒し終わっているのだ。


「クソッ!」


 悪態付きながら槍を突き入れる。


「馬鹿野郎、下がれ!」


「っ!?」


 不意に、首根っこ掴まれ後ろへと引っ張られる。

 眼前に迫る刀。

 ああ、失敗した。そんな思いと共に顔面を切り裂かれ……ない。


 直前に割り込んできた野太い腕が刀を半ばまで受け止める。

 (V)o¥o(V)がミツヅリとトンカラトンの間に割り込んだのだ。

 驚くミツヅリを放置して、彼はトドメの一撃とばかりにトンカラトンを銃撃。

 ゼロ距離から弾丸を受けたトンカラトンは、何の反応も出来ずに光に変わる。


「おっさん!?」 


「呆けるな阿呆! 次はしっかり倒せ。今すぐだ!」


 そう告げた彼は、ミツヅリの目の前でトンカラトンへと変化する。

 ミツヅリは震えそうになる腕で槍をしっかと握り、確殺スキルを発動する。

 目の前で新たに生まれたトンカラトン向け、確実なる一撃を叩き込んだ。


「ああ、クソッ、すまない、すまないっ!」


 悪態も後悔もすでに遅い。

 自分の失態を挽回する術もなく、助けられたという事実だけを残して彼は生き残る。

 光へと変わっていくトンカラトンは、そんな彼に微笑んだ、そんな気がした。


 そして、これによりついにトンカラトンは初めの一人、バイクに乗ったままのトンカラトンのみとなったのである。

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― 新着の感想 ―
[一言] まだまだデスゲームなんかの切り札あるから時間まで粘れそう
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