677.第三回イベント、二十一日目ラストバトル1
イベント会場へとやって来たプレイヤーたちは、呆然としていた。
イベント最終日なのでありがたいことにはありがたいのだ。
彼らのスタート地点が、神殿を見上げる場所に移動しているという事実は。
スタート地点からだと数多くの分岐点を移動して辿り着かなければならず、結構歩くだけでも負担だったのだ。
その歩く部分を端折ってくれたと思えばありがたい限りである。
「ラスボス目の前じゃん」
「階段上って神殿入って扉開かないとダメだけどな。ここまでの道のりを端折ってくれたのは助かる」
「時間一杯戦えるのはいいな」
「ようやく、ようやくヒロキを殴れる。しかもイベント時間一杯使える!」
「これも案内人さんたちのおかげだ。ルルルルーアさん撃破、ありがとな案内人、だぬさん、りんりんちゃん」
「おう。っても俺は殺されただけだがな」
「ほんっとすいません」
「あはは。でも何をするか知らなかったからこそルルルルーアさんも油断したのかも」
「だよな、あれ、一瞬早く混乱解除されてたけどだぬさんが焦ってたから失敗したのか、と判断一瞬だけ鈍ってたからな」
「つまり事前に知ってたら逃げられてたかもしれないのか。やっぱ案内人さんの作戦勝ちじゃん」
「あれだね。必要な犠牲でした。って奴」
「そこで自爆です。だな」
プレイヤーたちにいじられるほどに案内人が小さくなっていく。
謝り続ける案内人に苦笑しながら、だぬたちはラストステージとなったヒロキのいる場所へと辿り着く。
「うし、扉を開けばいきなり戦闘だ。全員用意はいいな!」
「まずはどうする?」
「リテアパトラさん埴輪の防御結界張って先行お願いします!」
「ええ。任せて」
「他のメンバーは一瞬遅く扉を潜ってください。おそらく先制攻撃が来ますが、それを弾けば皆入れるはずです。扉を潜ったらすぐに動けるよう広い場所に移動してください。トンカラトンさんが襲ってくるのですぐに戦闘態勢に!」
案内人の指示を受け、プレイヤーが動き出す。
開かれた扉に一人飛び込むリテアパトラ七世。
そこに、レーザーの光が襲い掛かり、バリアに弾かれ霧散する。
「チッ、読まれた」
「全員散開! ヒロキぃ。会いに来たぜぇ!!」
「いやー、これほどのプレイヤーに求められるとはなぁ、このイベントのボスやった甲斐があるってもんだ」
相変わらず玉座に座ったままのヒロキ。
見下ろすようにしているのは前も一緒だが、今はワイングラスを中指と薬指の間に挟んで上級貴族の真似事でもしているらしい。
着ているのはガウンだろうか? 本来は猫でも太ももの上に乗せて愛でたかったのだろうし、葉巻でも咥えたかったのかもしれない。しかし持っていなかったので太ももにカブトムシを乗せて葉巻代わりにきゅうりを咥えていた。
しゃくりっときゅうりをかじり、ヒロキは立ち上がる。カブトムシは空へと飛び立った。
そんな姿をバカじゃねぇのか? と呆れた顔をしてみているトンカラトンさんたち。
そう、たちである。複数のトンカラトンがそこにいた。
「ちょ、すでにトンカラトンがあんなに!?」
「んじゃま、サイレンスフィールド」
プレイヤーが動くより早く、ヒロキが魔法を放つ。
「「「「「トンカラトンと言えェ!!」」」」」
サイレンスフィールドにより声が聞こえなくなってしまったプレイヤーたちは必死にトンカラトンと叫ぶが、彼らの声が届くことはなかった。
「ちぃっと卑怯臭ェが祭りだからな。大目にみといてやる」
「ありがとうごぜぇますアニキ」
「そら祭りだ祭りだァ、テメェら全員俺にしてやらぁ!!」
ブオン、最初のトンカラトンが乗っていたバイクを吹かす。
彼だけはバイクに乗っていた。
本来ならば他のトンカラトンにもバイクがあるはずなのだが、残念ながらこの空間ではバイクを取ってくるようなことはできなかったようだ。
プレイヤーたちも武器を構え、気合は十分。
サイレンスフィールドが解除され、プレイヤー側に声が戻る。
「魔法部隊発射! 弓隊構え! 射て!」
戦いは、案内人の言葉で始まった。
刀を手にして走り出すトンカラトンの群れ。
ヒロキはニャルラトホテプを召喚していき、それを近くのトンカラトンがトンカラトンと言え、と問いかけ、当然ニャルラトホテプたちがそれに反応することもないので切りつけられてトンカラトンが量産されていく。
「トンカラトンコンボかよ!?」
「はは、最初っから飛ばしてくれんじゃん。全員斬られんなよ!」
「こんな初っ端で死亡なんて真似できるか! 一人相手に数人で掛かるぞ、俺らの方が数は多いんだ。無難に囲って武器を封じて確実に一人ずつ仕留める!!」
ついにラストバトル、ということもあり、プレイヤーたちの士気も高い。
今までと違ってゾンビアタックを封じられ、トンカラトン化すれば敵になってしまうという制約があってなお、プレイヤーたちが怯えることなく果敢に戦いへと挑むのだった。




