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674.第三回イベント、二十日目激戦終わりて

「か、勝った……?」


 誰かが呟いた。

 誰もがその光景を見てすら、状況を把握しきれず呆然としており、いま、ようやく思考が追い付いてきたところであった。


 案内人は周囲を見回し、敵性存在がもういないことを理解してその場に倒れ込む。

 大きく息を吐き、なんとか大役をこなせたと安堵の息を何度も吐く。

 そして、掛けられてきた電話に通話で応える。


『案内人んん~』


「す、すいませんだぬさん。あの……」


『テメェ俺を人間爆弾として使いやがったなぁ』


 そう。案内人は事前の指示出しの最、だぬには突撃、りんりんには確殺一矢を放つだけ、自分がツアーコンダクターを使ってルルルルーアさんに当てます。それだけしか伝えてなかったのだ。

 

『よくやった!』


「ほんとすいませ……え?」


『お前さんが策謀するたぁな、目的の為に味方を殺すなんざこりゃもうこっちじゃ酒の肴だぜオイ。俺らは今日中にゃヒロキんとこまで辿り着けねぇが、お前らは行けるだろ。時間もねぇし、せっかくだから顔合わせくらいして来いよ』


「わ。わかりました。またイベント最終日に」


『俺ら騙したことなんざ気に病まなくていいぞ。もともと俺らの命はお前に預けてたんだ。有効活用できたならこれほど嬉しいこたぁねぇからな』


『とかいいつつ、死に戻った当初は悪態ついてましたよねー』


「ほんとすいません」


 謝って済む問題ではないけれど、ルルルルーアさん撃破には一番有効な手だったのだ。

 結果オーライと思っていただければ、いや、さすがにそれは虫が良すぎるな。

 案内人は自らの行いで胃をキリキリと痛めながら、彼らの思いを背負って生還したプレイヤーたちと共に神殿へと向かうのだった。


 皆興奮冷めやらなぬ状況で、楽しく笑いながら階段を上る。

 正直、ルルルルーアさんの能力値はあまりにも酷すぎた。

 コトリさん並みの実力に回復魔法、動きも早く拳は触れれば一撃死。

 確殺攻撃が効かなければ、おそらくほとんどのプレイヤーが匙を投げていただろう。


 確殺攻撃が通用すると分からなければ、おそらく今の半分くらいのプレイヤーはイベント攻略を諦めていたかもしれない。

 何より、コトリさん戦だけでも無謀に近く、ティリティさんがアンデッドとして参加してくれなければおそらくイベント期間内でのヒロキと出会うことは不可能だった。

 それを越えてのコトリさんのステータスを加算したルルルルーアさんとの激戦だ。

 そりゃあ匙も投げたくなるものである。


「案内人さん、ほら、早く」


 最初に登り切ったプレイヤーたちが、神殿に入らず待っていた。

 どうしたんだろう、と案内人が近寄ってみれば、あれよあれよと背中を押されて一番前へと連れ出される。


「あ、あの?」


「未知なるモノさんたちがいればそっちに譲っても良かったんだがな。ほら、せっかくの最終戦だし、一番功労者の誰かが先陣切るべきだろ。行けよ案内人」


「俺らをイベント勝利に案内してくれ」


「皆さん……」


 名も知らぬ他人だったプレイヤーたちが、案内人に譲ってくれた。すでになのが侵入済みなので一番乗りという訳ではないが、全員で踏み出す最初の一歩を譲ってくれるのだ。

 感極まって泣きそうになりながら、案内人は頷く。


「行きます!」


 プレイヤーたちを導くように、案内人が神殿へと踏み込む。

 

「ここ、は、何もない?」


「奥に扉があるな」


「あれじゃねぇか、誰かテイムキャラ生き残ってた場合ここで出てくる、みたいな」


「ああ、残ってる奴全員集合、みたいな?」


「全員倒してるから誰もいないってことか」


 プレイヤーたちは自分たちで辿り着いたこの部屋の状況に、安堵する。

 もしも妖精さんでも残っていた日には、攻略は不可能になっていたと言ってもいいだろう。

 

「うわぁ、ラスボス感漂う観音扉」


「悪趣味だわ」


「俺は好きだけどなぁ、こう、最後の戦いがこの先にある、みたいな感じで」


「わかる。高揚するよな、こういう扉見ると」


「正真正銘、ここがイベント最後のラスボスだ」


「潜れば最後、ヒロキ戦か」


「正直ヒロキがボスで俺らと激戦繰り広げられると思わないんだが」


「コトリさん戦が多分一番盛り上がる戦いじゃなかったか?」


「俺はゴブリアさんの歌が良かったな」


「開幕時のコトリさん撃破が一番熱かっただろ」


 皆、このイベント期間での一番盛り上がった時は違っていた。

 だからプレイヤーの数だけ一番良かった場所が分かれていく。

 そんな輝き自慢を聞きながら、案内人は最後の扉を開く。


 赤い絨毯がまっすぐに伸びる。

 三段の段差を経て、広い広い謁見の間の先に、玉座が一つ。

 ひじ掛けに肘をつき、頬杖ついた男が一人、開かれた扉を睥睨するように座っていた。


「やぁ、まさかここに辿り着くとは思わなかったよ。初めまして諸君、このイベントの……ラスボスだ」


 ついにプレイヤーは、ヒロキの元へと至る。

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